巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

「樹を診る女のつぶやき」by 岡山瑞穂

2011-10-26 06:45:29 | 巨樹・巨木
 熊日出版、2011年発行。

 女性らしい視点で書かれた樹木医のエッセイ集です。
 男である私の視点と異なることを列挙すると・・・

・花に重点を置く
・樹木を擬人化する
・詩的な表現にこだわる

 などなど「飾り」が多いのが特徴です。

 というわけで、わかりやすいけどシンプルイズベストが好みの私にはちょっと、という内容でした。
 吹き出しコメントの文字が小さすぎて老眼が入ってきた私の目にはきついこともあります(苦笑)。

<メモ>
 私自身の備忘録。

□ カイガラムシ対策(うちのケヤキにも寄生してます)
 成虫になると駆除が大変。薬剤は、冬場に石灰硫黄合剤やマシン油の散布がよい。

□ キノコ=木の子ども=腐朽菌

・・・続きは後ほど・・・

 

「樹木ハカセになろう」by 石井誠治

2011-10-23 18:31:06 | 巨樹・巨木
 石井誠治著、岩波書店(2011年発行)

 巨樹の圧倒的な存在感や生命力に魅了されてきた私。
 しかし、樹木の知識が限りなく乏しいことに最近気がつきました。
 ここはひとつ、基本的なことから学ばねば・・・と購入したのがこの本。
 実は子ども向けの「岩波ジュニア新書」シリーズなのです(苦笑)。
 でも内容・記述の手加減はなく、その難易度はフツーの新書とあまり変わらないレベルだと思います。

 著者は生物としての樹木を語っており、目からウロコがぽろぽろ落ちました。
 枝を折られたり、切られたりしたときの自衛能力・再生能力のすごさ。
 樹木に関して、何となく引っかかっていた小さな疑問が次々に氷解していくようでした。

 例えば昔話によく出てくる「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に・・・」というフレーズ。
 山に芝生が生えているわけないよなあ、ゴルフ場はまだ無い時代だし・・・と以前から疑問に思っていました。
 実は「芝」ではなく「柴」なのでした。
 「柴」は薪になる木を意味します。
 つまり、おじいさんは山へ薪を取りに出かけたのですね、納得。

 人間って、樹木を利用するばかりで、木の気持ちを全然考えていないことがわかり反省しきり。
 街路樹は枝が伸びると切られてしまいます。枝が電線に引っかかりそうになったり、落ち葉の掃除が大変だったり。
 でも、木の立場からすると、半分以上葉っぱがなくなると光合成が不十分で生き続けるのが困難になります。
 手足をもがれた街路樹の悲鳴が聞こえてきそう。
 しかし、何億年も生き延びてきた樹木はストレスを切り抜ける能力を身につけてきました。
 維持できないことがわかると、木は自分の内部を腐らせて身軽になる方法を選択します。内部が空洞になっているのは、枯れたのではなく自衛術だったのです。
 
 樹木の写真の中に、私が訪れたことのある巨樹が何本かあって親近感がわきました。
 善福寺の逆さイチョウ、本郷町の大クス等々。

 あと目にとまった箇所は、スギについての記述。
 昔は「お山のスギの子」の歌のように成長・発展の象徴だった時代もあるようですが、近年は花粉症の原因として悪者にされがちです。
 でも、なぜスギを植林したかという理由を植物学者の視点から説いているのが新鮮でした。

 あまり系統立てた説明ではないかもしれませんが、一読すると樹木を見る目が変わるほどの内容はすばらしく、樹木観察入門としては良書だと思いました。

<メモ>
 私自身の備忘録です。

葉っぱの事情いろいろ
 冬に葉を落とす落葉樹は、葉を触ってみると常緑樹より薄く感じます。長くついている葉はしっかり作られているのです。葉がついている期間はクスノキで約1年、ツバキやサザンカでは4年ついているものもあります。ツバキの葉は厚いだけでなく、表面がつややかで照りがあります。これは潮風対策としてのコーティングです。毛が生えていたり、凹凸があると塩が葉の表面に残り、葉から水分を奪ってしまいます。
 ホオノキやトチノキは大きな葉をつけます。光合成が盛んで幹が太くなりやすい一方で、大きな葉からは水分の蒸散が多く水分条件のよいところでしか生育できません。

スベスベしたサルスベリ
 サルスベリやプラタナスの幹はスベスベしていて樹皮がはがれた模様が見えることもあります。薄皮の下の葉緑素で、幹でも光合成をしているのです。このため薄い樹皮は光を通す必要があります。だから樹皮が厚くなると捨てるため、はがれ落ちると考えられています。

巨樹の定義
 「地上から130cmの位置で幹周が300cm以上の樹木を対象とする」・・・環境庁の定義。
 1988年の調査では約56000本、2000年の調査では68000本が登録されました。

巨樹ベストテン
 巨樹として登録された数の順位;
1.スギ
2.ケヤキ
3.イチョウ
4.クスノキ
5.スダジイ
6.タブノキ
7.ムクノキ
8.モミ
9.エノキ
10.クロマツ
 ちなみに大きさNo.1は鹿児島県の蒲生八幡神社にある「蒲生の大クス」で、幹周24.2m(!)。単純計算で、直径約8mということになります。もう、樹木の範囲を超越していますね。

御神木に向いているクスノキ
 漢字が「楠」と「樟」の2通りあります。
 「楠」は南の方からきた木という意味。
 「樟」は樟脳成分を含むから。
 剤は腐食しにくく加工しやすいので、飛鳥時代の木造彫刻に利用され、船剤、などにも使われました。
 九州・四国から太平洋側の神社に樟の巨樹が多いのは、鎮守の森に植えられたからでしょう。成長がよく、材が腐りにくいので、巨樹として御神木になりやすい木です。神社の境内で大きくなったクスノキは手厚く保護され、周辺の林に植えられた樟は木材として使われてしまいました。
 クスノキは沖縄から台湾、中国、ベトナムにかけて自生しており、本来は亜熱帯の木です。
 クスノキの材や枝葉を蒸留すると樟脳がとれます。有用材なので自生樹はすぐに枯渇し植林されるようになりました。鹿児島より東側のクスノキは植林がほとんどと思われます。

縄文杉の不思議な運命
 屋久島の有名な縄文杉は1966年に発見されました。当時は他の木々に囲まれて近くまで行かなければわからない状態でした。その後、手前の木々を切り払い、全景が拝めるようになりました。しかし同時に縄文杉は傷み始めました。風当たりが強くなり周囲の木々が保持していた土壌が失われ、人が周りを歩き回るために根が踏みつけられました。
 そして、縄文杉を守るために立ち入り禁止とし、お立ち台が作られるに至ったのです。
 縄文杉は本来の尾根道から少し外れた、風当たりの弱い斜面に生えています。本来女寿は尾根筋や頂上付近にはありません。風当たりが弱く、水分条件がよく、肥沃な深い土壌があることが条件です。
 縄文杉はなぜ伐採されずに残ったのでしょうか。それは幹の中が腐朽して空洞があったため、木材として使えないと考えられて切り残されたと推測されています。皮肉な経緯です。

木の幹に聴診器を当てると聞こえる音とは?
 「幹の中を流れる水の音がする」と誤解されがちです。
 よく考えると、ヒトの体に聴診器を当てても血液の流れる音は聞こえません。心臓の弁が閉まる音が「ドックン」と聞こえるのみです。
 そして、木の中の水の移動は管を流れるのではなく細胞間の伝達ですのでとてもゆっくりであり、音のしようがないのです。
 ということで、ザーザー聞こえるのは、テレビが受信していないときに聞こえる雑音のような音。幹には根や風に揺れる枝葉からの雑音が伝わっているのです。

根の張る面積
 ふつう、幹の回りに枝を張り出した部分を地面に投影したくらいの面積。
 枝を伸ばす空間を奪われがちな都会では、地下に根を伸ばす空間も奪われる危険がはらんでいます。都会の巨樹達はのびのびを寿命を全うするのが難しい環境に晒されています。

樹木とキノコの微妙な関係
【害】幹に生えるキノコは「腐朽菌」と呼ばれ、樹木を腐朽させます。ほとんどが根の傷から侵入・感染します。一番危険なキノコはナラタケ、次にナラタケモドキ、ベッコウタケです。
【共生】樹木の根と共生するキノコの仲間を「菌根」と呼び、マツタケ、ホンシメジが代表です。菌根は生きている根から糖をもらい、樹木の根が集めにくい肥料分や微量要素、水分を根に供給し、持ちつ持たれつの関係をつくっています。

葉の状態は木の健康のバロメーター
 新葉が古い葉より小さければ、根に障害があります。水分を十分にすえていないことが考えられるからです。
 葉の先端が枯れている、これも根の障害です。水分ストレスがあると、根から遠い部分から捨てられます。
 樹体も枝の先端部から枯れていきます。根の先端と枝の先端はリンクしています。
 葉の緑色が薄い、葉が黄色みを帯びている、これは窒素肥料や微量要素不足が起きていると考えられます。
 下枝が突然枯れるのは、枯れた枝との関連が強い根になにか障害があるか、カミキリムシなどの木部障害で水が枝に行かなくなったためでしょう。
 最近は除草剤による薬害で枝葉が枯れたりすることもありますのでご注意を。

水辺のヤナギ
 シダレヤナギは水に浸けておくとすぐに根を出します。ヤナギの仲間は川沿いの湿地に生きる種類が多く、水の中で生きていくことのできる数少ない木です。
 ふつうの木は長い間水の中に細根を伸ばしていると、根が酸素不足で枯れてしまいます。ヤナギは幹から根の空間に空気を送り込む組織が発達しているので、水の中に根を伸ばしても何とか生きていくことができるのです。

スギはホントに悪者?
 太平洋戦争が終わった後、空襲で焼けた都市部の再建に大量の木材が必要でした。戦時下には伐採が進んだため近郊の山には需要を満たす木材がなく価格が高騰。戦地から引き揚げてくる人たちの雇用対策としても、山に木を植える事業は促進されました。
 そのおかげで都市近郊の山に緑が戻りましたが、植林の機運は止まず、薪炭林や自然林を開墾して進んでいきます。
 1950年代後半は拡大造林の時代。スギの植林からヒノキの植林へシフトする時期でもあります。木材需要が国内産のスギやヒノキでは間に合わなくなり、外国から木材を買い付ける時代に移行します。それに伴いスギ材の価格が下がり、スギの植林から価格の高いヒノキに移行したわけです。
 1960年代になるとエネルギー需要も薪や炭から石油に急速に変わっていきました。植林熱も冷め、森への関心が薄れ、管理が手薄になった植林地が残りました。
 植えてから50年も経過すれば、木材として出荷できるのですが、輸入木材の価格が安いために国産の木は採算割れで切り出せません。裏山の木を使うよりカナダの木を船で運んできた方が安い、という状況になりました。
 山の木が切られなくなって山が荒れた、とよく指摘されます。ところが、現在の日本の山は有史以来最も木が生えているのです。皮肉なことですが、戦後の拡大造林のおかげて、治山治水の成果が山に出ているのです。
 
木材としてのスギの優秀性
 木材として考えれば、針葉樹の材積分は広葉樹の6倍にもなります。
 針葉樹は「樹脂」に富んでいます。松ヤニのようにスギもヒノキもヤニが出ます。
 このヤニは、人のリンパ液のように傷口からの細菌感染を防ぐ役割をします。古い形質を残している針葉樹の法が病害虫に強く育てやすいのです。
 取れる材も、広葉樹は板や梁には向きますが、柱には向きません。針葉樹のヒノキは材質がよいのですが、成長がスギより遅く、木材生産の効率では劣ります。

巨樹の成長の限界
 樹木が大きくなると雷・風・水など色々なストレスに晒されるので成長には自ずと限界があります。
 樹高の限界で上への成長が止まると、横への肥大成長が促進されてきます。幹は頂点の枝枯れや上部の枝からの腐朽などで内部が腐り、空洞化してしまいます。
 幹の強度が落ちてしまうので、ひこばえ(地際から伸びる枝)や低いところから出た枝が代わりに次代を担う幹となり、樹木は生き続けます。


東京都港区の巨樹巡り

2011-10-03 03:11:32 | 巨樹・巨木
 出張のついでにプチ巨樹巡りをしてきました。カメラはXZ-1です(D5100はかさばるので出張のお伴にはしづらい・・・)。

1.芝東照宮のイチョウ
 芝公園内の神社境内にあります。徳川家光公が植えたと伝えられるイチョウの巨樹です。気根はまだ目立たず、樹勢が美しい。樹齢370年、幹周6.5m、高さ21.5m。
    

2.赤坂氷川神社のイチョウ
 街中にひっそりと広がる鎮守の森。イチョウの巨樹は写真のモノを含めて3本あり、他にも立派な樹木が佇む都会らしからぬ雰囲気を醸し出していました。幹の南側は空洞になっていますが、樹勢は盛んです。樹齢400年、幹周7.5m。
      

3.善福寺のイチョウ
 お墓の隅にありますが、都内最大と言われる如くとにかく巨大な幹で「樹木」というより別の構造物のような印象を受けます。東京大空襲の際の被害で根回りは崩壊しつつあり、一方で新たな幹が伸びており、遠目で見ると樹勢はまだまだ盛んで・・・形容しがたい。これでもか、というほど気根も発達しています。樹齢750年、幹周10.4m。