CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

ツール・ド・フランス2024を振り返る(7)

2024-11-09 09:23:06 | ツール・ド・フランス
 ツール・ド・フランス2024の2週目は、ツールらしい平坦コースで、予想通りのスプリント勝負になりました。勝ったのは1週目が振るわなかったやスペル・フィリップセンでした。昨年のマイヨヴェールは1週目に進路妨害で降着処分を受けるなど苦しみます。6月に2028年までの契約を延長して臨んでいただけに、予想外の結果でした。今年のさいたまクリテリウムにも参戦していましたが、流石に真直ぐ走っていました。
 休養日明けで逃げも生まれず、淡々としたレースでしたが、これが私が且つて観ていたツールのレース模様なのです。途中何度も寝落ちし、結局、ゴール前だけ観てTVを消すというのが、ツールの平坦ステージの決まり事だったのです。

 この日はファンデルプールの牽引から解き放たれたフィリップセンが圧勝しましたが、降着の影響が大きく、本人もマイヨヴェールではなくステージ優勝に切り替えているようでした。
 第11ステージはヴィンゲゴーの復活に湧きました。ポガチャルがアタックし、一度は30秒以上のタイム差が生まれたものの、ヴィンゲゴーがしぶとく食らい付き、ゴールスプリントでポガチャルを下して見せたのです。今年4月に大怪我を負ったヴィンゲゴーが97日振りの復活勝利に涙を流したのです。

 4月のバスク1周の集団落車で骨折に加え肺の損傷に見舞われ、ツールの参戦すら危惧された状況からの勝利ですから、ヴィンゲゴーの喜びは格別なものだったのでしょう。それにしてもポガチャルがゴールスプリントでヴィンゲゴーに負けるというのは衝撃でした。
 昨年の悪夢が頭を過りましたが、マイヨジョーヌの表彰で表彰台に上がったポガチャルの姿を見て安堵しました。何かを食べながら表彰台に上がったポガチャル。おそらく、補給の失敗があったのでしょう。まあ、ガス欠状態でスプリント勝負に迄持ち込んだポガチャルはやはり強かった。昨年は一機に遅れ、取り返しの付かないタイム差を付けられてしまったのですから。
 ポガチャルはその反省から、補給を科学的に分析し、意識的に必要な補給を取ることを心掛けていたようですが、このステージは最後の補給を忘れたというのです。ジロ・デ・イタリアでは沿道の子供に補給のボトルを手渡す余裕があったのですが、この日はヴィンゲゴーの猛追が焦りを生んだのか、珍しくミスをしてしまったようです。

 このミスがあってもヴィンゲゴーに奪われたタイムは僅か1秒。昨年のロズ峠でヴィンゲゴーに5分45秒もタイム差を付けられたことを考えれば、ひとつのミスで1秒というのはポガチャルにとっては幸いでした。ただ、ミスをすれば確実にタイムを失うことは実感したと思います。
 ポガチャルの強さの秘密のひとつがこの修正力でしょう。昨年もロズ峠の大敗の後、第20ステージでは復活勝利をしているのです。補給に注力するようになったポガチャルは今のところ無敵のようです。ツールで総合優勝出来なかった時期も含め4年連続世界ランク1位で、今年は断トツでしたから、今後はポガチャル1強時代に突入するかもしれません。
 



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ツール・ド・フランス2024を振り返る(6)

2024-11-06 14:21:53 | ツール・ド・フランス
 ツール8日目はビニヤム・ギルマイの強さが証明されたステージとなります。第3ステージで驚きのツール初勝利を挙げていたギルマイですが、誰もがフィリップセンのマイヨヴェールはほぼ確実だと思っていたのです。
 所属のアンテルマルシェというチーム自体の強さにも懐疑的だったのですが、この日はアシストが見事な働きを見せ、ギルマイをベストポジションに運びました。登りのゴールスプリントでフィリップセンを退けたギルマイの力は本物だったのです。

 今年のさいたまクリテリウムにも参加してくれたギルマイですが、優勝と同時にヤングライダーも獲得していたのです。21日間のツールでは流石にレムコ・エヴェネプールたちには及びませんでしたが、ギルマイはレムコと同い年なのです。フィリップセンがポガチャルと同い年なので、この二人はこれからも熱いバトルを見せてくれるはずです。
 一週目の最後となる9日目は、ツールに初登場する白い道(グラベル区間)が話題になっていました。今年、ストラーデ・ビアンケ(イタリア語で白い道を意味します)で80km以上を独走勝利しているポガチャルにとってはビッグチャンスと思っていたのですが、早々に逃げが決まってしまったのです。

 ステージ優勝は逃げ集団でのスプリントを征したのはトタルエナジーのアントニー・テュルジスでした。MTBのXCで2大会連続金メダルのトム・ピドコックは惜しくも2位でした。
 タイム差があり逃げを容認したプロトンでは、ポガチャルが果敢にアタックを見せるも、ひとつひとつの未舗装路区間が短いため、舗装路で集団が追いつくという苦しい展開になってしまいました。一度はヴィンゲゴーと二人が抜け出すシーンもありましたが、グラベルを得意としないヴィンゲゴーはパンクのリスクを考えてアシストを待つ選択をしたのです。

 ヴィンゲゴーのようにツールにグラベルは相応しくないと主張する選手もいますが、個人的には登りや平坦に加え、石畳やグラベルといったステージが増えることは歓迎です。特に平坦ステージが多くなると、途中がとても退屈になってしまうからです。逃げとそれを逃がすスプリンターチームという構図が出来やすいからです。
 山岳ステージでも同じことになることもありますが、プロトンの人数が途中で減り、逃げが決まる確率が上がるので。まだ緊張感があるのです。ジロやブエルタに比べ平坦ステージの比率が高いのがツールです。ただ、主催であるA.S.Oは徐々にそうした傾向を改善しつつあるように見えるのです。今年のグラベルの導入もその一環でしょう。加えて、恒例となっていた最終日のシャンゼリゼゴールもオリンピックの関係でニースでの個人TTに変更しているのです。
 グラベルを最初に取り入れたのはジロの主催者RCSスポルトでした。長年のライバル関係ということもあり、ジロの真似と見られるのを嫌ったのか、パヴェ(石畳)のステージはあってもグラベル(未舗装路)ステージが無かったことが不思議なほどなのです。
 総合を争う選手たちは、集団でゴールしたためタイム差は付かず、ポガチャルがマイヨジョーヌを手にしたまま終わりました。レムコとは33秒、ヴィンゲゴーとログリッジには1分以上の差で2週目に突入することになりました。
 



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さいたまクリテリウムを考える(3)

2024-11-04 08:58:22 | ツール・ド・フランス
 そんなログリッジをさいたまクリテリウムに招待したA.S.Oは流石でした。しかも、マイヨ・ロホの着用まで許しているのです。3大ツールの主催者はそれぞれ異なり、互いにライバル意識が高く仲が良くないとも言われていたのですが、近年はそうでもなくなっているのでしょうか?

 ツール・ド・フランスの名を冠した大会でマイヨ・ロホが走ることはそれだけ異様なことなのです。マイヨジョーヌのポガチャルに代わりマイヨ・ロホのログリッジが参加したのには何らかの意向が働いたと見るべきでしょう。今年は世界選手権にも出場したログリッジはポガチャルのアルカンシエル獲得に大きく貢献したと思っています。
 さいたまクリテリウムの前日にCycle Sportsのインタビューで「彼とは友達ですし、彼が今、成し遂げていることは本当にすごいことです。信じられないほどのレベルですから、僕たちは彼をどうやって倒すかを考えるのではなく、自分たちをどう改善できるかを考えています。彼はもう20歳というような年齢ではありませんが、まだ若いですし、彼が持っている楽しさが最大の強みだと思います。それが自転車レースに対する姿勢を支えているんです。もちろん、パフォーマンスやパワーなどの数値も素晴らしいですが、楽しむという部分が彼の本当の強さだと思います」と応えていたログリッジ。友人という域を超えてリスペクトする存在になっているのかもしれないです。
 ポガチャルの代理を頼まれ、マイヨ・ロホ着用を条件にログリッジが受けたというのが私の見立てです。ポガチャルの代わりである以上勝ちたいという気持ちがあったのでしょう。雨が強くなる中、残り1周を前にレインジャケットを脱ぎ、マイヨ・ロホ姿になったログリッジが、新城とバルデを牽き連れて逃げに出たのです。

 バルデ、新城と集団に吸収されていく中、単独走行になったログリッジが逃げに逃げますが、マイヨヴェールのギルマイ擁するアンテルマルシェが追い。ゴール前スプリントでギルマイに優勝はさらわれたものの、カヴェンディッシュやフィリップセンを抑え2位でゴール。ゴール前で脚がカラ回りしていたので、変速のミスがあったのかもしれません。

 レース後、J-Sportsのインタビューを着替えを理由に拒んでいたので相当悔しかったのだと思います。この負けず嫌いが彼を強くしているのでしょう。それにしても優勝がマイヨヴェールのギルマイ、2位がマイヨ・ロホのログリッジ、3位がステージ35勝の新記録を達成したカヴェンディッシュ、ポイント賞はフィリップセン、山岳賞はバルデとA.S.Oの筋書き通りの結果となりました。
 



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ツール・ド・フランス2024を振り返る(5)

2024-11-03 14:19:33 | ツール・ド・フランス
 7日目は最初の個人タイムトライアルが登りを含む25.3kmという距離で行われ、優勝はTTスペシャリストのレムコ・エヴェネプールでした。区間2位のタデイ・ポガチャルに12秒という差を付けて、初参加のツールで初優勝となりました。流石にタイムトライアルの現世界王者という走りは見事でした。

 空力モンスターとも呼ばれるエヴェネプールですが、身長は171cmと小柄な選手なのです。ジュニア時代はサッカーでワールドカップを目指していた高い身体能力と天性の体形が理想的なエアロフォームを生み、空気抵抗を極限まで低減し、フロント62Tという大きなギアを回す走りは圧巻です。ちなみにポガチャルのフロントギアは60Tでした。

 3位はプリモシュ・ログリッジ、4位にヨナス・ヴィンゲゴーとビッグ4がそのまま1~4位を独占することになりました。わずか25kmでポガチャルには12秒、ログリッジには35秒、ヴィンゲゴーには37秒という差を付けているのですからTTでレムコに勝つのは相当に難しいでしょう。
 ただ、登坂に関してはポガチャルやヴィンゲゴーに利があり、マイヨジョーヌはまだ先かもしれませんが、マイヨブラン(新人賞)は確実でしょう。ガリビエと最初の個人TTを終えてマイヨジョーヌを守ったポガチャル。33秒差の2位にレムコですが、昨年までの覇者ヴィンゲゴーには1分以上のタイム差を付けているのです。

 怪我明けのヴィンゲゴーがどこまでポガチャルに迫れるのか、このままレムコの後塵を拝したままで終わってしまうのか?レッドブルに移籍し、ヴィンゲゴーと袂を分かったログリッジがどこまで肉薄できるのか?2024年のツールの第1週は残り1ステージです。
 



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さいたまクリテリウムを考える(2)

2024-11-03 09:02:18 | ツール・ド・フランス
 10回目を迎えたさいたまクリテリウムがビニヤム・ギルマイ選手の優勝で幕を閉じました。ツール・ド・フランスの名を冠したこの大会はフランスの主催者A.S.Oが800ページに及ぶ運営マニュアルを持ち込み、本国の大会と同じ運営形態で行われるのだそうです。

 UCIワールドツアーのシーズンは10月で終わっているので、招待される海外勢はオフシーズンのため観光気分で来日しているのかと思いきや、激しい雨が降る中でもトップ選手のモチベーションの高さには驚かされました。
 正直、ジャパンカップ迄は見ていましたが、さいたまクリテリウムはお祭りと勝手に思い込み、これまで1度も観ていなかったのです。今年は骨折の影響もあり、春先からモチベーションを保つためにJ-Sportsでサイクルトードレースを春先から見て来たこともあり。10数年ぶりにシーズンを通してUCIワールドツアーを見続けました。

 今年は圧巻の強さを見せ、トリプルクラウンを達成したポガチャルが昨年参加し勝利していることを知り、前夜祭から観ました。ポガチャル本人が不参加なのは残念でしたが、ポガチャルの代わりと思われるログリッジの走りが気になっていたのです。
 前夜祭に現れたログリッジは物静かな紳士でした。昨年までユンボ・ヴィスマに在籍し、ユンボの黄金時代を支えて来たチームの主軸です。昨年は本人がジロ・デ・イタリアを征し、ツール・ド・フランスはヴィンゲゴーが、ブエルタ・ア・エスパーニャはセップ・クスが総合優勝し、同一チームがそれぞれ別の選手が3大ツールを征するという偉大な記録を作っていたのですが、ログリッジが抜けた途端にグランツールの総合優勝は無く、チームの勝利数も激減させているのです。
 ヴィンゲゴーやファンアールトの落車負傷があったとはいえ、ログリッジが抜けた穴がいかに大きかったかが数字でも見て取れるはずです。ログリッジがチームを離れたきっかけは間違いなく昨年のブエルタでのクスのマイヨ・ロホでしょう。チームはエース同士のつぶし合いを嫌い、クスの総合優勝をチームが決めてしまったのです。そのあたりの経緯は『ヴィスマ・リースアバイク低迷の理由』に書いています。
 レッドブルがスポンサーに付いたボーラ・ハンスグローエの一員としてツールにエースとして参戦したものの、落車でリタイヤしていたログリッジ。ブエルタでこそ4度目のマイヨ・ロホを獲得したものの、彼のツールに懸ける想いは並々のものではないはずです。

 2020年にはマイヨジョーヌを着用していながら、第20ステージの個人TTでツール初出場のポガチャルに大逆転を許し、マイヨジョーヌを失ってしまったのです。リベンジを期して挑んだ翌年は落車の影響でエースの座をヴィンゲゴーに譲らざるを得なくなります。その後はヴィンゲゴーがエースとなりツールを連覇することになってしまったのです。2020年が一番マイヨジョーヌに近づいた年だったのかもしれません。この日も最後に果敢な逃げを見せ、ゴール前スプリントで僅かの差でギルマイに敗れていたログリッジはツールの神様には好かれていないのかもしれません。
 



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