欧州の主要都市で、高齢者を含めた「すべての人がストレスなく動ける都市づくり」を目指し、総合的な都市交通計画の立案と都市計画の見直しが進んできたきっかけとなったのは、欧州委員会エネルギー・運輸総局の施策「CIVITAS(City-Vitality-Sustainability/ Cleaner and Better Transport in Citiies)」です。
2002年にスタートしたこのプログラムは、車依存社会からの脱却を前提に、歩行者、自転車、公共交通、そして自動車の順で「交通の優先権」を決め、それに従って「道路空間の再配分」をするという街づくりを促進しています。その結果は、環境対策、また高齢者の健康維持・増進の手段としてのみならず、街の活性化にもつながるというものです。
欧州の多くの都市が、「車を運転する人の目線とは全然違う、自転車利用者の目線」での街づくりや、自転車走行空間の拡充・整備に力を入れているのが大きな特徴です。日本の政策に最も欠けているのがこの「自転車利用者の目線」だと思っています。
ロードバイクで車道を走り始めると感じることのひとつに、郊外に出るまでは意外と走る場所が無いということでした。北海道は道幅も広く走り易いと思われがちですが、街中は意外と走り辛いのです。近年、札幌市内では路側帯を削って歩道の拡幅が当たり前のように行われているのです。また、融雪溝が車道に敷設されている所も少なくありません。春先は歩道に撒かれた滑り止め砂が車道と歩道の間に砂溜まりを作ったり、寒暖差で凹凸する雨水桝やマンホールに加え違法駐車の車両等々、これらを避けつつ車道を走るのは容易なことではありません。
札幌の中心部にも近年自転車専用レーンが増えつつありますが、ほとんどが道幅の広いメインストリートにあり、ほとんどがバス路線です。せっかくの自転車専用レーンがあっても、大きなバスが止まっていては意味がありません。ほとんどの自転車利用者は広い歩道を走っているのが現状なのです。これがこの国の実情なのだと思います。圧倒的に「自転車利用者の目線」が欠けているのです。
大阪や東京などの都市部で自転車専用レーンが増えつつあるとはいえ、欧米のそれとは規模が違います。ニューヨークでは2007年以降400km以上整備され、自転車通勤者がほぼ倍増しているのです。かつてロンドンは「欧州最悪」と言われるほど自転車に優しくない街でしたが、地下鉄テロやロンドンオリンピック開催などを契機として、市内の自転車レーン網、郊外と都心を結ぶ通勤目的に特化した「サイクルスーパーハイウェイ」、市内全域をカバーするシェアサイクル「バークレイズサイクルハイヤー」を整備するなど、短期間で自転車先進都市へと変貌を遂げつつあるのです。
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