2019年の記録
高台民居が描かれた壁、僕はカシュガルの旧市街を美しいと思う。
カシュガルの旧市街は、解放北路の西側(エイティガールモスクや僕の宿泊しているホテルがある)と東側、さらに帕依納甫路の東側の高台民居、それに国際バザール東側と4つに分けられる。高台民居は、前回の日記に書いたように封鎖されているようなので、解放北路の東と西を終日散歩した。旧市街のほぼ真ん中にホテルがあるのは都合が良い。疲れたらホテルの自室に戻りゴロンとすることもできるし、汗をかいたらシャワーを浴びても良い。
前の日記にも書いたが、どうにも街が閑散としている。住宅街を歩くと、外カギで施錠された住宅が目立つのだ。どういうことなのだろうか?
カシュガル空港で目にした不思議な光景がよみがえった。40歳前後の身なりもきちんとした男性が、迎えに来た母親と思しき女性と涙ぐんで抱擁している。そんな人たちが何組かいた。ひょっとすると彼らは再教育施設からの帰還組なのではないか?日本でも広く報道されているウイグル人の再教育施設だ。再教育施設という言葉からは、反政府的な言動のあった問題人物が収容されると考えがちだが、ウイグル人社会で影響力のある人から先に収容されていると聞いた。(統治の手法としては理に適っている。さすが中国共産党、って感心してどうする?) そのように考えると、身なりのきちんとした男性ということも腑に落ちる。
ウイグル人の弾圧や民族浄化のことは、最近、やっと日本でも報道されるようになった。しかし、すべての報道が、「中国共産党、けしからん!」といった一本調子の論調なのだ。確かにウイグル人の弾圧や民族浄化は、どこをどう切っても肯定されるところはないが、「なぜ、中国共産党は、ウイグル人弾圧、民族浄化をするのか?」といった根っこまで掘り下げていかないと、真の問題解決に至らないと思う。DNAレベルの異民族に対する恐怖心を漢族は持っているのではないか、漢族の友人や部下と話していると感じる。そのことは、万里の長城のような世界に類を見ない壁を作ったことからも想像できる。実際に漢民族は、少数民族のモンゴル族(元)、満州族(清)に征服された歴史を持っている。少数民族に征服された歴史を持たない日本人には、異民族に対する深い恐怖心を理解することはできないと思う。
外カギで施錠された扉を見ると、その先にある悲しい物語を想像してしまい、何とも言えない悲しい気持ちになった。旅は、どうしようもない厳しい現実を目のあたりにする経験を与えてくれる。決して心地よいものではないが、価値のある経験だ。
迷路のような旧市街を感じて欲しくて、1枚1枚が微妙に違う旧市街とウイグルの人たちの笑顔を撮影順にアップしました。スライドショーでご覧いただき、旧市街を散歩した気分になっていただけたら幸甚です。
旅は続く