北上市立博物館。岩手県北上市立花。
2023年6月11日(日)。
樺山遺跡の現地は6月13日に見学した。
国史跡・樺山遺跡。
樺山遺跡は、北上市街地の南方約7km、北上川の左岸に張り出した北上山地の麓に所在する縄文時代中期の遺跡である。昭和25年に発見され、翌26年から51年まで数次にわたって発掘調査が実施されている。
遺跡は標高約80mと約100mの上下2段にわたっており、下段に配石遺構群があり、上段は竪穴住居を持つ集落が営まれている。
下段の配石遺構は径約1.2mの範囲に石を敷きつめ、一端に立石を設ける類を典型とし、合計37の存在が確認されているが、ほかに耕作によって破壊されたものがある。配石の中にしばしば石皿が入っており、立石に用いている例もある。また、配石の直下には土壙が設けられており、配石遺構が墓ではないかという推定がなされている。
周辺から発見される土器によって縄文時代中期に属するものと判断され、特別史跡大湯環状列石等の系統につながって行くものと考えられる。
上段の集落跡は、東側の高台上には約5,000年前の村が、西側の斜面には約4,000年前の村があり、台地の周縁に住居跡が集中している。また、中期末から後期初頭にかけても再び集落が営まれ、竪穴住居跡と甕棺が発見されている。
国史跡・八天遺跡。
北上盆地の東縁を流れる北上川に望む舌状台地に営まれた繩文時代の集落跡である。5次にわたる発掘調査の結果、繩文時代中期末から後期中頃までに営まれた大規模な集落跡であることが明らかになった。
台地上には住居跡や土壙が多数存在し、また東と西の両斜面には土器廃棄場とも考えられる大量の土器を出土する地点がある。土壙にはフラスコ形やビーカー形の深く掘り込まれた大形の類も多く、そのうちの2つの土壙からは耳・鼻・口形土製品が発見されており、芸能史上極めて注目されている。同種の遺品を出した遺跡は他に2遺跡あるが、発掘によってはじめて出土状態の把握されたものとしても重要である。
また、台地中央部では特殊な大形の建物跡が発見された。ほぼ正円の住居跡で、最大時で直径17mほどあったものが、10回近い建て替えの結果、直径8mほどまで小さくなった状態が観察される。おそらく集落に附属する公共的な建物と考えられるが、この種の建物を擁する集落跡は極めて稀であり、一地方における中心的な集落としての性格をうかがわせるものである。
重文・土製品(鼻5点・口2点・耳1点)。
2基の土壙内部からは、顔の部位を表現した仮面の部品と考えられる土製品(鼻5点・口2点・耳1点)が出土した。
土製品は、いずれも素焼きで、ほぼ実物大に形成され、縁片部には円孔が幾つかずつ穿たれている。また、その造形表現は、耳・鼻形土製品がきわめて写実的であるのに対し、口形土製品は口唇に無数の突起を作り、口髭の抽象的な表現を想わせる。当時代の習俗や葬送儀礼を示す土製品である。