前回の続きです。
さて実際問題としてカラスであることはどんな性質で確認できるでしょうか? ただし黒いという性質は採用してはいけません。それはこれから確認すべき性質なのですから。
・鳥の姿(外形)をしている
・カアーと鳴く
・羽毛を持つ
・生きている
・嘴の形が独特である
色々あるでしょうが、対象xがこれらのカラスである条件を満たすことをR1(x),R2(x)・・・Rn(x)としますと、対象xがカラスであるという条件R(x)は、次のようになります。
R(x)=R1(x)∧R2(x)∧・・・∧Rn(x)
ですから形式論理としてはR(x)とひとつの述語で表してもよいことになります。その中身が複雑かも知れないことは必要な時に思い出せばよいでしょう。
次に対象xが黒いということをB(x)と表してみれば、全体集合Sから取り出した対象xは次の4つのいずれかに入ります。
a) R(x)∧B(x) カラスであり黒
b) R(x)∧¬B(x) カラスであり黒くない
c) ¬R(x)∧B(x) カラスでなくて黒
d) ¬R(x)∧¬B(x) カラスでなくて黒くない
さて(命題-1)はすなわち、「どんなxも集合bには属していない」ということと同値です。もしも集合bには属する対象xが見つかれば、いわゆる反例になり(命題-1)は否定されます。これをカール・ポパー(Karl R. Popper)は「反証する(falsify)」と呼びました。そして、集合aや集合dに属する対象xが多数見つかってくると、(命題-1)の確からしさが増してきます。もちろん対象xが無限にある限り、(命題-1)の正しさを完全に確証することはできません。
ヘンペルの逆説は「集合dに属する対象xが見つかっても、我々はそれを証拠として採用してよいとは感じない」という点です。そして、「現実世界では集合dは(集合a+集合b)よりも遙かに大きいので、集合dに属する対象xが1例ではほとんど確からしさが増えないからだ」というのがひとつの解決案です。
ここで、(命題-1)の直接検証と(命題-2)の直接検証の違いを考えてみます。
A) カラスを調べて黒いか否かを確認する手順
1) 対象xをひとつ取り出す
2) R(x)か否か(対象xがカラスか否か)を調べる
3-1) ¬R(x)ならば調査終了で手順1(次のxの取り出し)に戻る
3-2) R(x)ならばB(x)か否か(対象xが黒いか否か)を調べる
4-1) B(x)ならば証拠として採用
4-2) ¬B(x)ならば反例として採用し命題-1が反証される
B) 黒くないものを調べてカラスか否かを確認する手順
1) 対象xをひとつ取り出す
2) B(x)か否か(対象xが黒いか否か)を調べる
3-1) B(x)ならば調査終了で手順1(次のxの取り出し)に戻る
3-2) ¬B(x)ならばR(x)か否か(対象xがカラスか否か)を調べる
4-1) ¬R(x)ならば証拠として採用
4-2) R(x)ならば反例として採用し命題-1が反証される
要するに、R(x)か否かの調査とB(x)か否かの調査の順序が交換されているのですが、方法Aも方法Bも両方の調査をしていることは同じです。調査効率としては、R(x)の確認とB(x)の確認のうちでやりやすい方から行うのが良いはずです。ニセガラスの場合、R(x)の確認は困難ですがB(x)の確認は容易なので、方法Bを使うのが効率的です。白い靴,赤いチョーク,緑色の宝石などではR(x)の確認が容易ですから方法Aが効率的です。
あれ、でも、白い靴,赤いチョーク,緑色の宝石などではB(x)の確認も同じくらい容易な気がしますが、なぜ方法Bは採用できないのでしょうか?
-- 続く --
さて実際問題としてカラスであることはどんな性質で確認できるでしょうか? ただし黒いという性質は採用してはいけません。それはこれから確認すべき性質なのですから。
・鳥の姿(外形)をしている
・カアーと鳴く
・羽毛を持つ
・生きている
・嘴の形が独特である
色々あるでしょうが、対象xがこれらのカラスである条件を満たすことをR1(x),R2(x)・・・Rn(x)としますと、対象xがカラスであるという条件R(x)は、次のようになります。
R(x)=R1(x)∧R2(x)∧・・・∧Rn(x)
ですから形式論理としてはR(x)とひとつの述語で表してもよいことになります。その中身が複雑かも知れないことは必要な時に思い出せばよいでしょう。
次に対象xが黒いということをB(x)と表してみれば、全体集合Sから取り出した対象xは次の4つのいずれかに入ります。
a) R(x)∧B(x) カラスであり黒
b) R(x)∧¬B(x) カラスであり黒くない
c) ¬R(x)∧B(x) カラスでなくて黒
d) ¬R(x)∧¬B(x) カラスでなくて黒くない
さて(命題-1)はすなわち、「どんなxも集合bには属していない」ということと同値です。もしも集合bには属する対象xが見つかれば、いわゆる反例になり(命題-1)は否定されます。これをカール・ポパー(Karl R. Popper)は「反証する(falsify)」と呼びました。そして、集合aや集合dに属する対象xが多数見つかってくると、(命題-1)の確からしさが増してきます。もちろん対象xが無限にある限り、(命題-1)の正しさを完全に確証することはできません。
ヘンペルの逆説は「集合dに属する対象xが見つかっても、我々はそれを証拠として採用してよいとは感じない」という点です。そして、「現実世界では集合dは(集合a+集合b)よりも遙かに大きいので、集合dに属する対象xが1例ではほとんど確からしさが増えないからだ」というのがひとつの解決案です。
ここで、(命題-1)の直接検証と(命題-2)の直接検証の違いを考えてみます。
A) カラスを調べて黒いか否かを確認する手順
1) 対象xをひとつ取り出す
2) R(x)か否か(対象xがカラスか否か)を調べる
3-1) ¬R(x)ならば調査終了で手順1(次のxの取り出し)に戻る
3-2) R(x)ならばB(x)か否か(対象xが黒いか否か)を調べる
4-1) B(x)ならば証拠として採用
4-2) ¬B(x)ならば反例として採用し命題-1が反証される
B) 黒くないものを調べてカラスか否かを確認する手順
1) 対象xをひとつ取り出す
2) B(x)か否か(対象xが黒いか否か)を調べる
3-1) B(x)ならば調査終了で手順1(次のxの取り出し)に戻る
3-2) ¬B(x)ならばR(x)か否か(対象xがカラスか否か)を調べる
4-1) ¬R(x)ならば証拠として採用
4-2) R(x)ならば反例として採用し命題-1が反証される
要するに、R(x)か否かの調査とB(x)か否かの調査の順序が交換されているのですが、方法Aも方法Bも両方の調査をしていることは同じです。調査効率としては、R(x)の確認とB(x)の確認のうちでやりやすい方から行うのが良いはずです。ニセガラスの場合、R(x)の確認は困難ですがB(x)の確認は容易なので、方法Bを使うのが効率的です。白い靴,赤いチョーク,緑色の宝石などではR(x)の確認が容易ですから方法Aが効率的です。
あれ、でも、白い靴,赤いチョーク,緑色の宝石などではB(x)の確認も同じくらい容易な気がしますが、なぜ方法Bは採用できないのでしょうか?
-- 続く --
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