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カラスの逆説-2- ニセガラスの群

2010-06-07 06:40:02 | 数学基礎論/論理学
 前回の続きです。

  (命題-1)すべてのカラスは黒い
  (命題-2)すべての黒くないものは、カラスではない

 命題-2の観察、つまり「黒くなくてカラスでないものが見つかったこと」が命題-1の証拠として採用しにくいのは、黒くないものの集合がカラスの集合に比べて圧倒的に多いので、黒くないものを調べるのはカラスを調べるのに比べて効率が悪いからだという解釈があります。しかし、集合の大きさだけが問題なのでしょうか?

 先日挙げたいくつかの論点を合わせて含むような、次の想定をしてみます。

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 外形は全く同じで区別できないカラスとニセガラスがいる。違いは、繁殖期になるとカラスはカアーと鳴くが、ニセガラスはポッポッと鳴くことである。
 これまでの観察では、カラスと確認された個体は皆黒かったがニセガラスと確認された個体は黒いものも白いものもいた。
 「(命題-1)すべてのカラスは黒い」の検証をしたい。
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 この場合、実際的な検証方法は実は「白い個体を集めておくか追跡するかして、繁殖期にどう鳴くかを観察する方法」です。「カラスだけを観察する」というのは極めて使いにくい方法です。なにしろ繁殖期に声を聞かないとカラスとニセガラスの区別ができないのですから。もちろん「黒い個体を集めて繁殖期にどう鳴くかを観察する」ことは(命題-1)の検証としては意味がありません。
 えっ文句ある? もしかしてウェイソン選択作業テスト(Wason_selection_task)にひっかかりました?(^_^)

 上記想定は、全体集合Sが極めて限定されているために(命題-2)の観察が証拠として採用できる一例だと言えます。またカラスであることの確認が難しくなった例でもあります。カラスが黒くないものに比べて非常に多い世界でカラスを調べることが非効率的な理由は、多すぎて調査が難しいからです。つまり本質はある性質を持つか否かの調査の難易度であり、集合の大きさというのは難易度に影響するひとつの要因に過ぎないとも言えるでしょう。

 ところで上記想定の場合、黒くない鳥(白い鳥)の数が黒い鳥の数(命題-1が正しいならカラスの数より多い)より多かったとしても、白い鳥を追跡してカラスでないことを確認する必要があります。なぜなら白い鳥の中にもたくさんのカラスがいるかも知れないからです。そもそもカラスの集合の大きさがわかっていないのだとも言えます。


   続く

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