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学問全般について語ります

診療の可視化?医療行為の適マーク?

2012-01-03 06:34:27 | 医学
 12/23の記事の最後に述べた通り、「保険内であれ保険外であれ、医療(ないし医療と称するもの)の質を担保する仕組みは必須」です。日本の現状では素人から見ると、保険適用されているということがひとつの信頼の証になることは確かです。この点は 例えば地下猫さんのブログ1,2)が指摘しています。しかし、個々の医師や医療機関の技術の善し悪し、本当に標準的医療が適用されているか否かなどは保険内というだけではわかりません。また有効だが保険外となっているものの信頼性はどう確保するのかという問題もあります。まあ薬剤などは一度レッテルを張れば個別の場合に内容が異なるということはあまりありませんから3)、保険適用はしないけど認可はするという方法も可能です。というか市販薬がそうですね。医師の処方で使えば保険内ですが、患者自身の判断で購入すれば保険外です。そして薬剤自体は薬事法で規制されていて、具体的には「日本薬局方」が定められています。

 物ではない医療行為や治療手順なども保険適用はしないけど認可はするという方法は取れるはずですが、規格設定がなかなか難しそうです。実際医療法医療法施行規則では具体的に医療行為の規格を定めているわけではありませんし、そんな規格はどこにもなさそうです。さらにもし規格を定めたとしても、認可した通りに実行されているかどうかの保証が必要で、それがなかなか難しいでしょう。

 そもそも実行された医療が適切か否かという判断は専門家にしかできません。とすれば、医療の品質を保ち信頼性を保証するには、学術論文のピアレビューのように、実行された医療の実態が他の専門家に評価できるようにしておくしか方法はないように思えます。犯罪捜査の正確さを保証するために尋問を可視化するように、医療の実施過程を可視化するわけです。むろん患者のプライバシーの問題がありますから、データの取り方や使い方には工夫が必要です。可視化と言ってもビデオを残すというわけではなく、カルテを電子化してデータベース化できるようにしておけば十分有効だとも考えられます。集められたデータは疫学的調査研究により、医療技術の進歩に役立つでしょう。また万が一の医療事故の場合には、原因究明に役立つでしょう。

 上記の診療の可視化は実際に実行される医療行為の品質保証のためのものですが、その前の医療行為自体の適マークみたいなものはできないものでしょうか。まあ、まともな医学界では相手にされないよと言うにもかかわらず、いや相手にされないからこそ代替医療に頼る人は適マークの有無など無視するでしょう。しかし、「○○博士推薦の」とか「米国で大人気」とかの文句で釣られるような人々の幾分かは救えそうな気がします。


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1) 情報の非対称性で市場は機能しない(2009/03/03)
2) 混合診療全面解禁は戯れ言だ(2009/03/05)
3) 使用量や使用法の問題はあるが、これは薬剤自体の責任ではない


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