従来欧米では日本や東アジアほどマスクをする習慣がなく、健康な人がマスクをしていることは奇異の目で見られていました。その根拠のひとつがWHO(世界保健機関)が「健康な人のマスク着用は推奨しない」としていることです。当然ながら医療関係者の多くは、この指針に従った見解を表明していますが、その根拠がどんなエビデンスに基づくのかという資料まではなかなか行き着きません。1箇所だけしっかりしたサイトを見つけましたが、検討中です[*1]。
WHOの推奨とは
そもそもWHOの見解そのままというのも見つけにくかったのですが、国立感染症研究所・感染症情報センターのサイトに2009年新型インフルエンザ流行またの名をパンデミック(H1N1)2009の時のWHOの手引が載っていました。これは他の呼吸器系感染症でも変わらないと思われます。
「インフルンエザA(H1N1)アウトブレイクにおける市中でのマスク使用に関する助言 暫定的な手引き(2009/05/03)」
原文"Advice on the use of masks1 in the community setting in Influenza A (H1N1) outbreaks Interim guidance 3 May 2009"
当時の日本でも厚生労働省・新型インフルエンザ専門家会議 (2008/11/20)で、この手引に準じた指針が提唱されていました。
今回の新型コロナ(COVID-19)でもほぼ同じ内容の推奨がなされていると思われ、これを要約したものが様々なところで紹介されているということです。例えばPRESIDENT 2020年3月20日号「WHOが示した推奨行為を知ってるか」など。
さて読んでみるとこの手引には色々と疑問点が出たのですが、まずは翻訳がわかりにくかった部分とその原文とを示します。
--------引用開始-------------
しかしながら、特に開かれた空間において、インフルエンザ様症状のある人と閉鎖空間で濃厚接触した場合と比較した、マスク着用の有効性は確立されていない。
-------------------------
In the community, however, the benefits of wearing masks has not been established, especially in open areas, as opposed to enclosed spaces while in close contact with a person with influenza-like symptoms.
--------引用終り-------------
私は次のように訳してみました。
--------翻訳開始-------------
しかしながら一般生活の場では、特に開放空間(でのマスク着用)の場合、インフルエンザ様症状のある人と閉鎖空間で濃厚接触した場合(のマスク着用)に比較すれば、その有効性は確立されていない。
--------翻訳終り-------------
どうも何と何とを比較したのかがわかりにくいですね。私は、「閉鎖空間でのマスク着用は有意に効果が見られたけれど、開放空間でのマスク着用では効果は検出されなかった」と解釈しました。だとすれば当然すぎる研究結果だと言えます。もともと開放空間では感染リスクが低いのですから、その条件ではマスク着用と非着用との差が誤差範囲にしかならないというのは予想しやすいことです。
ここで開放空間での研究というのは、マスク着用の被験者群と非着用の被験者群とに分けて感染率を比較するとか、ウイルスの代わりにトレーサーとなるものをばら撒いて吸わせるとかを思いつきます。実際の研究は知らないのですが。(<=[*1]が見つかったけれど検討中です。)
結局は、この研究から判明するのは、「開放空間では元々リスクが低いので、マスクを着用してもしなくてもリスクはほとんど変わらない」ということだったのではないのでしょうか?
しかし一般の市中でマスクを感染予防に使いたいという場合というのは、確かに多くの経路では他人との距離も広くて感染リスクは低いかもしれないが、時には混雑して感染者が近くにいる可能性もありうる(電車やバス、店舗内など)という状況なのです。この状況で積極的に(ではないかも知れないが?)非推奨という理由は疑問です。なお上記の新型インフルエンザ専門家会議 (2008/11/20)の文書では「~といった感染予防策を優先して実施することが推奨される」と書かれていて、「(マスクもしていいけど、)その前にもっと大事な対策をしっかりしてください」というニュアンスです。
確かに使い方が拙ければ却ってリスクが増すかも知れないという危惧はその通りでしょう。では、正しい使い方で推奨するというのが筋のように思えるのです。確かにここで、正しい使い方を多くの人に浸透させるのが困難だから、ならいっそ非推奨にする、という考え方もあるでしょう。しかし、この文書に書かれた正しい使い方にもいくつか疑問があります。
WHOの手引での正しい使い方は「医療機関における方法[4]に準じている」とされています。つまり環境中にウイルスを含む飛沫や飛沫核が多く漂っている可能性が極めて高い空間での使用を想定したものです。では一般の市中でマスクを使用する場合も、これくらい厳しくしないと危険なのでしょうか? そうは思えません。むろん厳しくするほうがリスクが低いのは当然だとしても、コストに見合うほどにリスクが下がるかどうかが問題です。
どんな状況で使うにせよ、同じ状況で使うことを想定したとき、次の3通りのリスクの順序はどうなるのでしょうか? ただしマスクはVFE試験をパスしたもので、口と鼻を隙間なく覆えるものを正しく着用するものとします。
1.着用しない
2.正しく着用したが、手に触る機会が多い:外す時、外した後、再使用する、など
3.WHO手引通りに慎重に使い捨てる
3が最もリスクが低いのは当然でしょう。2がリスクがあるということはマスク表面にウイルスが蓄積する状況だということを意味します。その状況であれば着用しなかった場合は、マスク表面に蓄積するはずだったウイルスはほとんどが吸い込まれるということにはならないのでしょうか? 2のリスクが1よりも高くなるという状況がどうしても思い浮かびません。
マスク不足で現在多くの日本人が行っているのではないかと思いますが、外した後に、エタノール消毒や煮沸、または洗濯などをして再使用する、という方法でも、「たまたま密集状態や密室状態に遭遇する可能性のある市中」での使用ならば十分に推奨できるのではないでしょうか? もっとも、エタノール消毒や煮沸、または洗濯などによるフィルター性能の低下については私は何も知りませんし、そういう実験が行われたことがあるのかどうかも知りません。
そもそもマスクの正しい使い方を言うならば、手洗いなども正しくやらないとリスクが高まる可能性もあるのではないのでしょうか? それでも有効だからこそ推奨しているはずです。この点は後日ということで、少し基本的知識としてマスクの種類と性能についてです。
マスクの種類と性能
まず、上に出てきたVFE試験ですが、一般財団法人カケンテストセンターの細菌ろ過効率(BFE)・ウイルスろ過効率(VFE)試験 [(ASTM F 2101/ASTM F 2101準用)]に具体的方法が載っています。御覧の通り、これは3μmの飛沫をマスク生地がどれだけカットできるかという試験です。つまり飛沫感染を想定した試験です。(04/11)の記事「飛沫感染と空気感染」で紹介したように今回の新型コロナやインフルエンザを含めた多くのウイルスは飛沫感染はしても飛沫核感染(空気感染)はしないとされていますから、これがまさにウイルスろ過効率(Viral Filtration Efficiency)の試験とされるのです。なお細菌ろ過効率(Bacterial Filtration Efficiency)の試験との違いは被験体(マスク生地)を通す飛沫に細菌を混ぜるかウイルスを混ぜるかの違いです。両者の結果はほぼ相関することが予想できますね。
VFE試験をパスしたマスク生地を、口と鼻とを隙間なく覆える形に加工したマスクを、鼻の穴だけ露出するなどということなく正しく着用したならば、理論的には飛沫感染予防の効果が期待できます。
さてマスクの分類については日本衛生材料工業連合会の不織布マスクの性能と使用時の注意に詳しくまとめられています。他からの知見も合わせて、よく使われる用語を使い一応は性能別にまとめれば、次のようになります。
1.N95マスク相当性能
固形塩化ナトリウムエアロゾルの捕集効率試験をした時に95%以上の捕集効率
3M社の医療用製品サイトのN95マスクに関するよくある質問のA2,A5,A6。
日本の国家規格ではDS2規格マスクに相当
湘南ワイパーサプライの防塵マスクの国家検定規格
3M社の個人用保護具サイトのN95とDS2の違い
防塵マスクとして工業用途に多く使われる。着用者が微粒子を吸い込むことを防ぐ目的のマスク
2.サージカルマスク
施術者である外科医の唾液などが手術される患者の体内に入ることを防ぐ目的のマスク
BFE試験で95%以上
北海道薬剤師会のマスクの種類や形、効果
3.家庭用マスク
3-1.花粉対策用:約30㎛以上の粒子をカットするフィルタを採用、息苦しさを軽減
3-2.ウイルス対策用:BFE(約3㎛)、VFE(約1.7㎛)の試験を行い、99%までのフィルタ捕集効果を表記
【注意】BFEとVFEとの違いが飛沫の大きさと言ってるように見えるが本当だろうか?
3-3.PM2・5対策用:PFE(約0.1㎛)の試験を行い、99%までのフィルタ捕集効率を表記
注意しておくと、VFEなどの試験はあくまでもマスク生地の性能試験であり製品そのものの試験ではありません。製品そのものの性能は形状や着用方法にも大いに左右されるのは言うまでもありません。顔面モデルに製品を着用させてフィルター性能を調べるということもできないことはないでしょうが、N95にしてもDS2にしてもそこまでの試験による規格ではないようです。
私のような素人は名前だけで「サージカルマスクというくらいだから優秀なはずだ」と勘違いしやすいのですが、サージカルマスクはN95やDS2よりも生地のフィルター性能は低く、市販のVFE試験パスのマスク生地と同程度なのです。医療関係者の認識としては、サージカルマスクも市販のVFE試験パスのマスクも「病原体保有者から他の人への感染を防ぐ」ことには効果は認められるが、「マスク着用者を病原体から守る」という効果には明確なエビデンスはない、ということのようです。むろんサージカルマスクの形状は顔面にぴったりフィツトするもので、市販マスクに多い隙だらけの製品とはまるで違うのでしょうが。
危険な現場で使われる防護服には高性能のN95マスクが使われているのでしょう。さらに接触感染をも防ぐために防護服、とは言わないまでも目や顔面全体も防護して初めて効果が高まることは確かなのでしょう。「顔には触るな」なんて守れるはずがありませんから。
では低性能の代表?の布マスクのVPEは何%くらいなんでしょうね? 布マスクとはいっても布の間に他の材質のフィルターを挟んでいる製品も多いようですが。それに着用者からの大きな飛沫を防ぐ効果はあるはずですし。
----------------------
*1) マスクの予防効果(コロナ、インフルエンザ)について(医師である片山泰輔が文責をもって記載します)。内容はこれまで読んだ中で最も納得できるものだった。以下の実証研究の紹介がある。
*1a) 吉田製薬の"感染対策情報レター"(Y's Letter)から「日常的なマスク着用による感染予防効果について」 Y's Letter Vol.4.,No.8 (Publised online:2018.04.17)。そのPDF版。13報の文献のレビュー。13報中で、マスクや手洗いの効果に関する実証研究の報告が6報。
*1b) 「院内のインフルエンザ発症予防におけるN95マスクとサージカルマスクの有用性の比較」の紹介。原論文はLewis J. Radonovich Jr ;Michael S. Simberkoff ;Mary T. Bessesen ;et al "N95 Respirators vs Medical Masks for Preventing Influenza Among Health Care PersonnelA Randomized Clinical Trial" JAMA. 2019;322(9):824-833. (2019/09/03)。なおJAMAは(The Journal of the American Medical Association)の略である。
マスク着用者への感染予防性能は最高のはずのN95マスクと市販のウイルス対策マスクと同等のサージカルマスクを比較したら有意差がなかったというアメリカの7施設を対象とした研究。[*1a]には、類似の研究でカナダのオンタリオ州にある8施設を対象とした研究の概要が書かれている。
WHOの推奨とは
そもそもWHOの見解そのままというのも見つけにくかったのですが、国立感染症研究所・感染症情報センターのサイトに2009年新型インフルエンザ流行またの名をパンデミック(H1N1)2009の時のWHOの手引が載っていました。これは他の呼吸器系感染症でも変わらないと思われます。
「インフルンエザA(H1N1)アウトブレイクにおける市中でのマスク使用に関する助言 暫定的な手引き(2009/05/03)」
原文"Advice on the use of masks1 in the community setting in Influenza A (H1N1) outbreaks Interim guidance 3 May 2009"
当時の日本でも厚生労働省・新型インフルエンザ専門家会議 (2008/11/20)で、この手引に準じた指針が提唱されていました。
今回の新型コロナ(COVID-19)でもほぼ同じ内容の推奨がなされていると思われ、これを要約したものが様々なところで紹介されているということです。例えばPRESIDENT 2020年3月20日号「WHOが示した推奨行為を知ってるか」など。
さて読んでみるとこの手引には色々と疑問点が出たのですが、まずは翻訳がわかりにくかった部分とその原文とを示します。
--------引用開始-------------
しかしながら、特に開かれた空間において、インフルエンザ様症状のある人と閉鎖空間で濃厚接触した場合と比較した、マスク着用の有効性は確立されていない。
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In the community, however, the benefits of wearing masks has not been established, especially in open areas, as opposed to enclosed spaces while in close contact with a person with influenza-like symptoms.
--------引用終り-------------
私は次のように訳してみました。
--------翻訳開始-------------
しかしながら一般生活の場では、特に開放空間(でのマスク着用)の場合、インフルエンザ様症状のある人と閉鎖空間で濃厚接触した場合(のマスク着用)に比較すれば、その有効性は確立されていない。
--------翻訳終り-------------
どうも何と何とを比較したのかがわかりにくいですね。私は、「閉鎖空間でのマスク着用は有意に効果が見られたけれど、開放空間でのマスク着用では効果は検出されなかった」と解釈しました。だとすれば当然すぎる研究結果だと言えます。もともと開放空間では感染リスクが低いのですから、その条件ではマスク着用と非着用との差が誤差範囲にしかならないというのは予想しやすいことです。
ここで開放空間での研究というのは、マスク着用の被験者群と非着用の被験者群とに分けて感染率を比較するとか、ウイルスの代わりにトレーサーとなるものをばら撒いて吸わせるとかを思いつきます。実際の研究は知らないのですが。(<=[*1]が見つかったけれど検討中です。)
結局は、この研究から判明するのは、「開放空間では元々リスクが低いので、マスクを着用してもしなくてもリスクはほとんど変わらない」ということだったのではないのでしょうか?
しかし一般の市中でマスクを感染予防に使いたいという場合というのは、確かに多くの経路では他人との距離も広くて感染リスクは低いかもしれないが、時には混雑して感染者が近くにいる可能性もありうる(電車やバス、店舗内など)という状況なのです。この状況で積極的に(ではないかも知れないが?)非推奨という理由は疑問です。なお上記の新型インフルエンザ専門家会議 (2008/11/20)の文書では「~といった感染予防策を優先して実施することが推奨される」と書かれていて、「(マスクもしていいけど、)その前にもっと大事な対策をしっかりしてください」というニュアンスです。
確かに使い方が拙ければ却ってリスクが増すかも知れないという危惧はその通りでしょう。では、正しい使い方で推奨するというのが筋のように思えるのです。確かにここで、正しい使い方を多くの人に浸透させるのが困難だから、ならいっそ非推奨にする、という考え方もあるでしょう。しかし、この文書に書かれた正しい使い方にもいくつか疑問があります。
WHOの手引での正しい使い方は「医療機関における方法[4]に準じている」とされています。つまり環境中にウイルスを含む飛沫や飛沫核が多く漂っている可能性が極めて高い空間での使用を想定したものです。では一般の市中でマスクを使用する場合も、これくらい厳しくしないと危険なのでしょうか? そうは思えません。むろん厳しくするほうがリスクが低いのは当然だとしても、コストに見合うほどにリスクが下がるかどうかが問題です。
どんな状況で使うにせよ、同じ状況で使うことを想定したとき、次の3通りのリスクの順序はどうなるのでしょうか? ただしマスクはVFE試験をパスしたもので、口と鼻を隙間なく覆えるものを正しく着用するものとします。
1.着用しない
2.正しく着用したが、手に触る機会が多い:外す時、外した後、再使用する、など
3.WHO手引通りに慎重に使い捨てる
3が最もリスクが低いのは当然でしょう。2がリスクがあるということはマスク表面にウイルスが蓄積する状況だということを意味します。その状況であれば着用しなかった場合は、マスク表面に蓄積するはずだったウイルスはほとんどが吸い込まれるということにはならないのでしょうか? 2のリスクが1よりも高くなるという状況がどうしても思い浮かびません。
マスク不足で現在多くの日本人が行っているのではないかと思いますが、外した後に、エタノール消毒や煮沸、または洗濯などをして再使用する、という方法でも、「たまたま密集状態や密室状態に遭遇する可能性のある市中」での使用ならば十分に推奨できるのではないでしょうか? もっとも、エタノール消毒や煮沸、または洗濯などによるフィルター性能の低下については私は何も知りませんし、そういう実験が行われたことがあるのかどうかも知りません。
そもそもマスクの正しい使い方を言うならば、手洗いなども正しくやらないとリスクが高まる可能性もあるのではないのでしょうか? それでも有効だからこそ推奨しているはずです。この点は後日ということで、少し基本的知識としてマスクの種類と性能についてです。
マスクの種類と性能
まず、上に出てきたVFE試験ですが、一般財団法人カケンテストセンターの細菌ろ過効率(BFE)・ウイルスろ過効率(VFE)試験 [(ASTM F 2101/ASTM F 2101準用)]に具体的方法が載っています。御覧の通り、これは3μmの飛沫をマスク生地がどれだけカットできるかという試験です。つまり飛沫感染を想定した試験です。(04/11)の記事「飛沫感染と空気感染」で紹介したように今回の新型コロナやインフルエンザを含めた多くのウイルスは飛沫感染はしても飛沫核感染(空気感染)はしないとされていますから、これがまさにウイルスろ過効率(Viral Filtration Efficiency)の試験とされるのです。なお細菌ろ過効率(Bacterial Filtration Efficiency)の試験との違いは被験体(マスク生地)を通す飛沫に細菌を混ぜるかウイルスを混ぜるかの違いです。両者の結果はほぼ相関することが予想できますね。
VFE試験をパスしたマスク生地を、口と鼻とを隙間なく覆える形に加工したマスクを、鼻の穴だけ露出するなどということなく正しく着用したならば、理論的には飛沫感染予防の効果が期待できます。
さてマスクの分類については日本衛生材料工業連合会の不織布マスクの性能と使用時の注意に詳しくまとめられています。他からの知見も合わせて、よく使われる用語を使い一応は性能別にまとめれば、次のようになります。
1.N95マスク相当性能
固形塩化ナトリウムエアロゾルの捕集効率試験をした時に95%以上の捕集効率
3M社の医療用製品サイトのN95マスクに関するよくある質問のA2,A5,A6。
日本の国家規格ではDS2規格マスクに相当
湘南ワイパーサプライの防塵マスクの国家検定規格
3M社の個人用保護具サイトのN95とDS2の違い
防塵マスクとして工業用途に多く使われる。着用者が微粒子を吸い込むことを防ぐ目的のマスク
2.サージカルマスク
施術者である外科医の唾液などが手術される患者の体内に入ることを防ぐ目的のマスク
BFE試験で95%以上
北海道薬剤師会のマスクの種類や形、効果
3.家庭用マスク
3-1.花粉対策用:約30㎛以上の粒子をカットするフィルタを採用、息苦しさを軽減
3-2.ウイルス対策用:BFE(約3㎛)、VFE(約1.7㎛)の試験を行い、99%までのフィルタ捕集効果を表記
【注意】BFEとVFEとの違いが飛沫の大きさと言ってるように見えるが本当だろうか?
3-3.PM2・5対策用:PFE(約0.1㎛)の試験を行い、99%までのフィルタ捕集効率を表記
注意しておくと、VFEなどの試験はあくまでもマスク生地の性能試験であり製品そのものの試験ではありません。製品そのものの性能は形状や着用方法にも大いに左右されるのは言うまでもありません。顔面モデルに製品を着用させてフィルター性能を調べるということもできないことはないでしょうが、N95にしてもDS2にしてもそこまでの試験による規格ではないようです。
私のような素人は名前だけで「サージカルマスクというくらいだから優秀なはずだ」と勘違いしやすいのですが、サージカルマスクはN95やDS2よりも生地のフィルター性能は低く、市販のVFE試験パスのマスク生地と同程度なのです。医療関係者の認識としては、サージカルマスクも市販のVFE試験パスのマスクも「病原体保有者から他の人への感染を防ぐ」ことには効果は認められるが、「マスク着用者を病原体から守る」という効果には明確なエビデンスはない、ということのようです。むろんサージカルマスクの形状は顔面にぴったりフィツトするもので、市販マスクに多い隙だらけの製品とはまるで違うのでしょうが。
危険な現場で使われる防護服には高性能のN95マスクが使われているのでしょう。さらに接触感染をも防ぐために防護服、とは言わないまでも目や顔面全体も防護して初めて効果が高まることは確かなのでしょう。「顔には触るな」なんて守れるはずがありませんから。
では低性能の代表?の布マスクのVPEは何%くらいなんでしょうね? 布マスクとはいっても布の間に他の材質のフィルターを挟んでいる製品も多いようですが。それに着用者からの大きな飛沫を防ぐ効果はあるはずですし。
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*1) マスクの予防効果(コロナ、インフルエンザ)について(医師である片山泰輔が文責をもって記載します)。内容はこれまで読んだ中で最も納得できるものだった。以下の実証研究の紹介がある。
*1a) 吉田製薬の"感染対策情報レター"(Y's Letter)から「日常的なマスク着用による感染予防効果について」 Y's Letter Vol.4.,No.8 (Publised online:2018.04.17)。そのPDF版。13報の文献のレビュー。13報中で、マスクや手洗いの効果に関する実証研究の報告が6報。
*1b) 「院内のインフルエンザ発症予防におけるN95マスクとサージカルマスクの有用性の比較」の紹介。原論文はLewis J. Radonovich Jr ;Michael S. Simberkoff ;Mary T. Bessesen ;et al "N95 Respirators vs Medical Masks for Preventing Influenza Among Health Care PersonnelA Randomized Clinical Trial" JAMA. 2019;322(9):824-833. (2019/09/03)。なおJAMAは(The Journal of the American Medical Association)の略である。
マスク着用者への感染予防性能は最高のはずのN95マスクと市販のウイルス対策マスクと同等のサージカルマスクを比較したら有意差がなかったというアメリカの7施設を対象とした研究。[*1a]には、類似の研究でカナダのオンタリオ州にある8施設を対象とした研究の概要が書かれている。
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