土手猫の手

《Plala Broach からお引っ越し》

No.35「横顔」

2008-10-24 02:06:03 | 掌編(創作)
いつの間にか雨になっていた。

街行く人の中に一つ二つ傘が開いて、
「雨が降って来たのか…」と目を凝らす。
降り始めの細かい雨が、秋の冷ややかな風の上に透けて見える。

ふと、向かいのビルに目をやると屋上に一羽の鳩。

「一羽か…」
そう見渡すと、何羽かの鳩が。視界の外へ飛んで行った。
目を戻すと、上空には旋回する二羽の。

けれど、鳩は「何故?」と思う程に全く意に介す様子が無い。

凝視してるかの様に、背を伸ばし首を一方に固定したまま。
徐々に強くなってゆく雨脚に、たじろぐ様子も無い。
「鳩も何想うこと有るのか…」


身じろぎもせずに。
佇む。

既に他の、姿も声も無くなって。
雨は軒先から吹込んで来る程になっていた。
「濡れるよ」


そのうちに。ふいと。
給水塔の陰に入って行った。
飛び立つ姿は無い。

降る雨を見上げて。一息をつく。


「ねえ気づいてた?」私は「僕は」ずっと君を見ていたけれど。



2008.10.23(10.24 加筆) ?


リンク。10/23


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