企画 / 下家 猪誠
作 / 猪 寿
特別編 / 大輝の死
~天国での再会~
悲しみよこんにちは
悲しいから わざと笑顔を見せています
寂しいから わざと楽しく振舞っています
君の黒い淵の付いた 古くなって色あせたセピア色の写真の前で
いつでも会うたびに チョット体調を崩しただけの
軽い病気だからと 笑って話してくれていたのに
こんな終わりを告げる Love story のヒロインになるなんて
悲しみにこんにちは そして涙にGood-by
悲しみにこんにちは そして思い出にThank you
いつかこんな素適な花嫁衣裳で 結婚式を挙げたいねと
いつだったか二人で見に行った お店のショーウィンドウのウェディングドレス
今日も売れずに飾ってありました
「ママ!ママ!大輝お爺ちゃんがたいへんよ!」
「ど、どうしたの?お爺ちゃんが愛ちゃん・・・・・」
「急に胸が苦しいって、公園の近くの道端で倒れちゃったの・・・・・」
「えっ!えっ!!えっ!!!」
「お母さん、私お爺ちゃんのところへ行ってくるから、お母さんはすぐに救急車を呼んでくれる・・・・・」
「分かった。そうするから、すまないけどお前はすぐにお父さんの所へ行ってあげて・・・」
凛は、陽子にそう言われ愛に案内されて、大輝が倒れているという公園の近くの道端に向かった。
大輝が倒れていた場所は、愛が言ったように公園のすぐ出入り口を出た所ということもあって、すでに凛が駆けつけたときには、四、五人の人だかりが出来ていた。
「す、すみません。父がご迷惑をお掛けしまして・・・」
凛は、その場にいた人たちにそう言って礼を言うと、すぐに大輝を抱きかかえて話し掛けた。
「お、お父さん、お父さん、大丈夫?!」
「わ、私の声が聞こえる?!」
凛が、大声でそう問いかけると、大輝は小さく顔を上下に動かして答えた。
凛は、大輝のその返答する姿を見て、“まだ父が生きていることに”心からホッとした。
―ピィーポー、ピィーポー、ピィーポー・・・・・―
陽子が電話をしたのだろう。
やがて、大輝と凛がいる公園の出入り口近くの側面の大通りの方角から、救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
―ピィーポー、ピィーポー、ピィーポ・・・・・―
―救急車が通ります。道を開けてください!―
―キィー、キィー、キィーッ・・・・・―
救急車は到着するや否や、さっきより見物人の数が増えて10名ほどの人だかりがあったために、すぐにその場所の確認が出来たのだろう、凛に大輝のいる場所に横付けした。
そして、救急車に同乗していた三人の救急隊員は下車すると同時に、その中で救急救命士の資格を持っていると思われる隊員が、凛に大輝の症状の内容についてこと細かく尋ね、残りの二人の隊員は大輝を病院に運ぶための担架の準備をし始めた。
「ちょっと、患者さんについての、お話を聞かせてもらってもいいですかね?」
「は、はい・・・・・」
「いったい、何があったのですか?」
「ええ、娘の話によりますと公園で一緒に遊んで帰宅途中に、父が急に“胸が苦しい”と言い出して、もがき苦しむようにして道端に倒れこんでしまったようです・・・・・」
「お話を聞く限りでは、急性心筋梗塞の疑いがありますね・・・・・」
「念のために、脈拍を測ってみましょう・・・・・」
「こ、これはいかん、すぐに搬送の用意をしろ!」
「脈拍数(心拍数)が40に低下しているぞ!」
「血圧は?体温は?」
「早く、担架に乗せろ!」
凛は、その救急救命士の言葉に驚き、大急ぎで愛にこのことを母の洋子に伝えるように言い付けると、自分は大輝に付き添い救急隊員たちと一緒に、救急車に同乗し“風のある町”の町立病院に向かった。
―ヒュー、ヒュー、ヒュー・・・・・―
―ガタガタガタ、ガタガタガタ、ガタガタガタ・・・・・―
「大輝、大輝・・・」
「うっうん、気のせいかな?」
大輝は、風の音を縫って、誰かが自分の名前を呼んでいるような気がした。
だが、やっぱり気のせいだと勝手に思い込み、それ以上は面倒くさくて昼寝しているベッドの中から起き上がって、その事実を確かめようとはしなかった。
―・・・・・―
「大輝、大輝ってば、いつまでの寝ているのよ!」
「???」
「えっ!あ、愛?!」
「き、君は、ずいぶん前になくなったはずなのに、どうしてここにいるの?」
「何を寝ぼけたことを言っているのよ。私たちは“風のある町”でずっと一緒に暮らしているじゃないの・・・・・」
「そ、そうすると、僕が今まで愛がなくなったと思っていたことは、みんな夢だったというわけ?!」
「そうよ。」
愛のその言葉を聞いて驚き、とっさに大輝ベッドから飛び起きると、再度彼女の頭の天辺から爪先まで見回して、今自分の目の前で起こっている出来事が、すべて夢でも見ているのではないかと思い、その事実を何度も繰り返し確かめた。
だが、何度大輝が繰り返してその現実を確かめても、実際に愛が自分の目の前に、突然“風のある町”にやって来て一緒に暮らしていた頃と、何一つ変わらないままの姿をして、笑顔で立っていることだけは事実だった。
しかし、不思議なことはそれだけではなかった。
いつの間にか、年老いているはずの大輝の姿まで、愛と同じように若い姿に返っていることだった。
「あれ、ここはどこだ?!」
大輝は、見慣れない天井の壁の色を見て、驚きました。
そして、すぐに立ち上がろうとしたが、まったく躰を動かすことが出来なかった。
「いったい、どうしたんだろう?!」
その理由は、人工呼吸器が付けられたまま、病院のベッドの上に寝かせられていたからだった。そして耳を澄ますと、かすかに医師と看護婦数人が話している声が聞こえました。
「バイタル・・・」
「血圧76~50・・・」
「脈拍110・・・」
「体温39.5」
この話声を聞き、初めて大輝は自分が家ではなく、病院の救急処置室にいることが分かった。
「あれ、ちょっとおかしいぞ・・・・・」
「確か、僕は今さっきまで愛と話していたはずなのに・・・・・」
この時、大輝は自分に死期が近づいていることを、まだまったく気付いていなかった。
病名は、救急救命士が娘の凛に言っていたように、急性心筋梗塞だった。
そのとき、初めて大輝はついさっきまで体験していたことが、すべて彼が病院の救急処置室で手当てを受けているときに創り出した、一種の幻想(夢)であることが分かった。
ただ、もしかしたらついさっきまでの出来事は、まったく単なる大輝の幻想ではなく、彼が死ぬのを知った愛が本当に天国からやって来て、彼を迎えに来てくれたのかもしれないことも、決して嘘だとは言えないことも確かである。
大輝が亡くなったのは、愛が死んでから五十二回目の命日を迎える、突然彼女が“風のある町”にやって来て大輝と出会ったときと同じように、桜前線の話題がいっせいにテレビニュースで流れ始めた、早春の風の強い日だった。
アメージンググレイス・・・
そんなに悲しい 顔をしないで
あの空を 見てごらん
その瞳(め)を閉じて 心を開いてごらん
天使になった 君の愛する人の
やさしい歌声が 聞こえるはずだから
下竹原 啓高
◎紹介コメント
やはり、『風のある町』特別編と来たら、僕の郷土鹿児島県の大先輩でもあり、あの小泉首相と韓国の盧武鉉大統領(ノムヒョン大統領)が日韓首脳会議を行った場所としてもその名をよく知られている、鹿児島県でも名門中の名門ホテル指宿白水館の現社長である下竹原啓高さんです。下竹原さんは、30年勤めた三菱商事を退職して6年前に37年振りに鹿児島に戻り、彼の父が創業した指宿白水館の経営を跡継ぎする傍ら、ボストンやニューヨーク、タタール共和国、モスクワなど、都合10年の海外駐在中に経験したり、鹿児島に新幹線が開通(九州新幹線全線開業)する際に、その鹿児島を観光資源の主要都市にするために大きな尽力をしたりした方だと聞いています。そんな方がいると、鹿児島の将来にも大きな期待と展望が持てることは確かですね。
◎プロフィール
勤務先: 株式会社 指宿白水館
出身校: 慶応義塾大学
居住地: 東京都渋谷区既婚
言語: 英語、日本語、ロシア語
血液型: AB型
出身地: 鹿児島県鹿児島市
誕生日: 1952年11月23日
ウェブサイト
http://www.hakusuikan.co.jp/
http://www.satsuma-denshokan.com/den/index.php?id=1
メールアドレス
shimotakehara@yahoo.co.jp
あなたの愛で
福島の地を「ひまわり」の花でいっぱいにさせてください
あの世界一美しいと言われている四季と、もう一度日本中に笑顔の花を咲かせるために・・・・・
ひまわり基金募集!
「ひまわり基金募集!」 http://www2.ocn.ne.jp/~willtown/Sunflowerfund.pdfへのリンク
「あなたの愛をください」企画書
himawari.pdf へのリンク
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〒191-0061
東京都日野市大坂上3丁目8-6
ひまわり基金・ひまわり友の会事務局
電話番号:090-1990-3944
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下家 猪誠