・保存食Preserved food ほぞんしょく
今日で、レトルト食品の登場などで美味しく保存食を食べられますが、昔の人は、現代のように便利なものがありませんでした。各家庭で、特に冬を越すための蓄えの保存食をどのようにしていたのでしょう。
内陸まで食材を運んだり、冬期に備えたりするために肉や魚を長期保存するためにどのような方法があったのでしょうか。
古くより行われている保存食として、現在でも馴染みのあるものとして
米、米菓子、餅、うどん、蕎麦、穀類、切干大根、干ぴょう、干し柿、ジャッキー、 凍り豆腐、凍みこんにゃく、ホシナ、干し菊、漬物(塩漬け・味噌漬け・醤油漬け・粕漬けなど)、梅干、レーズン、発酵食品(酒、酢、醤油、味噌など)、魚の干物、へしこ、鰹節、寒天、佃煮、燻製、するめ、ジャム、なれ寿司などがあります。
保存方法として食品の保存・運搬方法として、さまざまに考えられた方法としては、1)水分の乾燥、2)塩、糖による浸透圧の調整、3)酢によるPH調整、4)燻煙が主なものでした。時間が経過しても、変質、変敗することなく微生物の繁殖が抑えられ食中毒を起こすことなく食べられるようにしたものです。
保存食は、ある期間保存しても変質、変敗することなく食べられる食物のことで微生物を減菌、殺菌させることによって微生物の繁殖しにくい環境としているのです。
今回は、特に昔から作られてきた保存食について紹介します。
◇保存性は、水分12%以下となると殆どの微生物が増殖できなるといわれ高まります。
80~40%(米飯60%、モチ44.5%、赤飯53%、いも類85-66%、くり45-60%、ぎんなん53.6%、むかご75.1%、糸引き納豆60%、魚類85-59%、鯵の開き干67.9%、しらす干46.0%-69.9%、鮭の燻製64%、蓄肉類60%、佃煮類26.9-56.5%、卵75%、ピータン66.7%、チーズ45%、ソース60%、醤油65%)、
40~20%(パン38%、するめ20.2%、塩昆布24.1%、干しあわび27.9%、蓄肉類脂身32-15.6%、ビーフジャッキー22.4%、甘納豆26.2%、練り羊羹26.0%、ホシイモ22.2%、蜂蜜20%)、
20-12%(穀類12.5-15%、豆類12-15%、水飴15%、種実10.4-15.5%、切干大根15.5%、干ぴょう19.9%、干しブドウ14.5%、干し杏16.8%、素干し藻類2.3-16.9%、素干さくらえび19.4%、煮干15.7%、乾かずのこ16.5%、削り節17.2%、乾麺12.5-14%、パルメザンチーズ15.4%、粉類14%、焼麩・マカロニ・スパゲティ12%、マーガリン15.5-29.7%、バター16%)
12%以下(黒砂糖5%、上白糖0.8%、即席中華麺2-10%、アルファ化米8%、ビーフン11.1%、ホップコーン4.0%、きなこ5%、凍り豆腐8.1%、干し湯葉6.5%、アーモンド・カシューナッツ・くるみ・ごま3-5%、落花生6%、干し菊11.6%、干しぜんまい8.5%、乾燥キノコ類9.7-13%、畳鰯10.7%、植物性油0%)
をおおよそ含みます。
現代でも最も多く利用している切干大根は、大根を細長く切って、すのこで天日干し乾燥させ太さによって1~7日ぐらいかかり歩留まり8~10%、水分は、15%内外に干され寒気であるほど甘味、旨みのあるよいものが仕上がります。
炒め煮、味噌汁の実、酢のもの、きり漬けなどにしています。
可食量切干大根10g(カリウム320mg、カルシウム54mg、鉄1.0mg、食物繊維2.1g)、生大根100g(カリウム230mg、カルシウム24mg、鉄0.2mg、食物繊維1.6g)でありミネラルのカリウムがナトリウムの排泄を促し高血圧予防、カルシウムの骨粗鬆症を防ぎ、鉄の疲労回復、食物繊維に整腸作用があり、生大根に比較し多く取る事が出来ます。
◇砂糖の防腐効果は、糖度50%で期待できます。
◇食塩では15~25%もの食塩量が長期保存で使われていました。
おいしい塩漬をつくるには、材料の選定、食塩、重石(材料と同程度から3倍の重量)、手入れが加減が必要です。
過度に乳酸菌を発酵させないように酸味を作らないようにすることから微生物(酵母、カビ、細菌)の至適温度25~30℃、発生を抑えられる気温5℃以下、45℃以上となっています。冬場の蓄え、気候からもこの晩秋が漬物に取りかかるのによい時期だったのです。
◇10%前後のアルコールに酢酸菌Acetobacter が加わることによって5~8%の酢酸が得られます。食酢の主成分で酢酸は3~5%です。 実験で、酸度4~5%の食酢の中ではO-157は30分で10万分の1に減少し、 酸度10%の酢酸濃度では1分で同じ効果が得られたといいます。
酒のアルコール度数は、清酒15%ほどで、アルコールの殺菌力は、10~20%では10分間以上作用させないと殺菌効果がなく、最適殺菌濃度は70~80%です。微生物の膜の変化を起こす前に浸透して通過してタンパク質を損傷させることによるとしています。80%以上になると逆に殺菌力が低下するようです。
◇燻煙成分にはフェノール化合物を含むが防腐効果もありますが、燻煙 による脂質の酸化防止が期待されます。防腐は、主に食品の乾燥によるものといわれます。蓄肉、魚介類、チーズでおこなわれています。
秋田県の「いぶりがっこ」は、大根を囲炉裏(いろり)の天井につるしてけむりでいぶし干しにしたものを、ぬか漬けにしたもので独特の歯ごたえと香りがあります。
主食としての穀類、蛋白源の大豆、寒い冬を越すには、魚の塩辛い干物、漬物、乾燥野菜、根菜類の大根、人参、じゃが芋、玉葱も比較的長期に保存できます。緑黄色の野菜が不足がちになりますが、冬至かぼちゃとして保存していました。
もしもの時には、流通網がストップしてしまったら各家庭で工夫して作ることが必要になってくるかもしれません。どのようにして作られていたのかを知っておくこともよいでしょう。
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