6年生になると、『クラス替え』があり、文人は忍と同じクラスに、竜次は洋次と同じクラスになり、文人と竜次は初めてクラスが離れてしまった。
竜次と洋次のクラスの担任には、他校から転勤してきたばかりの大瀬浩一という体育会系の男性教師になった。
HRの時間、大瀬は竹刀を持って教室に入ってきた。そして、自己紹介をしていた際、窓際の席に座っていた洋次の髪の毛の色を見ると、怒りをあらわにした表情で、洋次のもとへツカツカと歩いてきた。
「おいっ、コラッ、貴様っ! ガキのくせに、この髪の毛の色は何だっ…!」
大瀬は、いきなり洋次の髪を掴むと、そのまま席から引きずりだした。
「いてっ…! 何すんだよっ…!」
洋次が思わずキッと大瀬を睨みつけると、大瀬は逆ギレし、そのまま洋次を廊下に引きずり出すと、水飲み場に連れてきて、水道の蛇口をひねって洋次の頭から水をかけ流した。
「教師に向かって何だっ! その反抗的な目つきはっ!」
他の教室にいた生徒達も、大瀬の怒鳴り声を聞いて廊下に出てくると、その様子を見て、思わず震え出した。
「先生、やめて下さいっ!」
竜次が止めようと駆けつけたが、大瀬が手に持っていた竹刀で打たれてしまった。
「やめて下さいっ! 沼津君は、亡くなったお母さんがイギリス人で、髪の毛の色は、生まれつきなんですよっ…!」
騒ぎを聞きつけた他の教師達が慌てて駆けつけてきて、大瀬に洋次の髪の毛の色について、事情を説明した。
「…何だ、貴様、半人前かっ…?」
大瀬は、洋次に侮蔑の眼差しを向け、そう言い放った。
「何だとっ、この野郎っ…!」
洋次が反撃しようとした時、竜次はとっさに洋次を取り押さえ、有無を言わさずそのまま保健室に連れて行った。
竜次は、保健室に来ると、先生がいないので、棚の引き出しからバスタオルと着替えを出してきて(いつも文人を連れて来ているので、どこに何があるか把握している)、洋次に手渡した。
「…竜次、何で止めたんだっ? アイツ、俺の事バカにしたんだぞっ…!」
洋次は、濡れた服を脱ぎ、髪を拭いながら、竜次を睨みつけた。
「洋次、少し落ち着けっ…。いくら俺達がケンカ慣れしてるからって、相手は大人だぞっ…!」
竜次はそう言うと、洋次の額を指でバチッと叩いた。
〈大人だろうが、教師だろうが、あの野郎、絶対許さねぇっ…!〉
洋次は大瀬に対して沸々と怒りがこみ上げてきていた…。
担任の大瀬は、何かにつけてクラスの生徒達に対して、体罰を加えるようになった。生徒達は、なるべく大瀬を怒らせないよう、毎日顔色を伺い、怯えながら授業を受けていた。
1学期の半ばになると、大瀬の体罰はエスカレートしていった。特に、洋次に対しては、ハーフだという事だけで『目の敵』にでもしているかのように、他の生徒達以上に体罰と嫌がらせを加えていった。
そんなある日、大瀬は、洋次の髪の毛を掴むと、持っていたハサミで、洋次の髪を切り落とそうとした。
「先生っ、いい加減にしろよっ…!」
普段温厚な竜次も、この時ばかりは黙って見過ごすワケにはいかなくなった。洋次に対する大瀬の体罰と嫌がらせがあまりにもひどいので、竜次は見るに見かねて止めに入った。
その結果、竜次も大瀬に『目の敵』にされてしまい、洋次と一緒に体罰と嫌がらせを受けるようになってしまった。
竜次と洋次の体のアザは、日毎増えていった…。
ある日の放課後、竜次と洋次は、誰もいない体育館そばの裏庭で話し込んでいた。
「…俺達、このままだと、卒業するまでアイツに体罰受けて、その最中に、殺されかねないぞ…」
「あぁ…」
竜次も、大瀬の度を越えた体罰に対し、我慢の限界に来ていた。
「けど、どうやって仕返ししたらいいと思う…? もし失敗したら、今まで以上にひどくなるかも…」
洋次はいつになく弱気になってそう言い、溜息をついた。
「…そういえばアイツ、前の学校でも、同じように体罰してたんじゃないか? だったら、俺達と同じように、アイツの事恨んでるヤツ、沢山いるんじゃないのか…?」
竜次の口からそんな言葉が出ると思っていなかった洋次は、驚いて思わず振り向いた。
〈竜次…? お前、何言ってる…?〉
洋次は、うつむいた竜次の表情が、次第に険しくなっていくのを見て、思わず背筋がゾッとした。
「…なぁ、洋次。明日、大瀬が前にいた小学校に行って、俺達みたいに体罰加えられた奴等集めてみようか…?」
竜次の口から信じられない言葉を聞き、洋次は耳を疑った。
「…おいっ、竜次っ、お前、本気で言ってるのかっ…?」
「ああ…」
この時、竜次の心の中で、大瀬に対する『憎悪』が芽生えていた…。
竜次と洋次のクラスの担任には、他校から転勤してきたばかりの大瀬浩一という体育会系の男性教師になった。
HRの時間、大瀬は竹刀を持って教室に入ってきた。そして、自己紹介をしていた際、窓際の席に座っていた洋次の髪の毛の色を見ると、怒りをあらわにした表情で、洋次のもとへツカツカと歩いてきた。
「おいっ、コラッ、貴様っ! ガキのくせに、この髪の毛の色は何だっ…!」
大瀬は、いきなり洋次の髪を掴むと、そのまま席から引きずりだした。
「いてっ…! 何すんだよっ…!」
洋次が思わずキッと大瀬を睨みつけると、大瀬は逆ギレし、そのまま洋次を廊下に引きずり出すと、水飲み場に連れてきて、水道の蛇口をひねって洋次の頭から水をかけ流した。
「教師に向かって何だっ! その反抗的な目つきはっ!」
他の教室にいた生徒達も、大瀬の怒鳴り声を聞いて廊下に出てくると、その様子を見て、思わず震え出した。
「先生、やめて下さいっ!」
竜次が止めようと駆けつけたが、大瀬が手に持っていた竹刀で打たれてしまった。
「やめて下さいっ! 沼津君は、亡くなったお母さんがイギリス人で、髪の毛の色は、生まれつきなんですよっ…!」
騒ぎを聞きつけた他の教師達が慌てて駆けつけてきて、大瀬に洋次の髪の毛の色について、事情を説明した。
「…何だ、貴様、半人前かっ…?」
大瀬は、洋次に侮蔑の眼差しを向け、そう言い放った。
「何だとっ、この野郎っ…!」
洋次が反撃しようとした時、竜次はとっさに洋次を取り押さえ、有無を言わさずそのまま保健室に連れて行った。
竜次は、保健室に来ると、先生がいないので、棚の引き出しからバスタオルと着替えを出してきて(いつも文人を連れて来ているので、どこに何があるか把握している)、洋次に手渡した。
「…竜次、何で止めたんだっ? アイツ、俺の事バカにしたんだぞっ…!」
洋次は、濡れた服を脱ぎ、髪を拭いながら、竜次を睨みつけた。
「洋次、少し落ち着けっ…。いくら俺達がケンカ慣れしてるからって、相手は大人だぞっ…!」
竜次はそう言うと、洋次の額を指でバチッと叩いた。
〈大人だろうが、教師だろうが、あの野郎、絶対許さねぇっ…!〉
洋次は大瀬に対して沸々と怒りがこみ上げてきていた…。
担任の大瀬は、何かにつけてクラスの生徒達に対して、体罰を加えるようになった。生徒達は、なるべく大瀬を怒らせないよう、毎日顔色を伺い、怯えながら授業を受けていた。
1学期の半ばになると、大瀬の体罰はエスカレートしていった。特に、洋次に対しては、ハーフだという事だけで『目の敵』にでもしているかのように、他の生徒達以上に体罰と嫌がらせを加えていった。
そんなある日、大瀬は、洋次の髪の毛を掴むと、持っていたハサミで、洋次の髪を切り落とそうとした。
「先生っ、いい加減にしろよっ…!」
普段温厚な竜次も、この時ばかりは黙って見過ごすワケにはいかなくなった。洋次に対する大瀬の体罰と嫌がらせがあまりにもひどいので、竜次は見るに見かねて止めに入った。
その結果、竜次も大瀬に『目の敵』にされてしまい、洋次と一緒に体罰と嫌がらせを受けるようになってしまった。
竜次と洋次の体のアザは、日毎増えていった…。
ある日の放課後、竜次と洋次は、誰もいない体育館そばの裏庭で話し込んでいた。
「…俺達、このままだと、卒業するまでアイツに体罰受けて、その最中に、殺されかねないぞ…」
「あぁ…」
竜次も、大瀬の度を越えた体罰に対し、我慢の限界に来ていた。
「けど、どうやって仕返ししたらいいと思う…? もし失敗したら、今まで以上にひどくなるかも…」
洋次はいつになく弱気になってそう言い、溜息をついた。
「…そういえばアイツ、前の学校でも、同じように体罰してたんじゃないか? だったら、俺達と同じように、アイツの事恨んでるヤツ、沢山いるんじゃないのか…?」
竜次の口からそんな言葉が出ると思っていなかった洋次は、驚いて思わず振り向いた。
〈竜次…? お前、何言ってる…?〉
洋次は、うつむいた竜次の表情が、次第に険しくなっていくのを見て、思わず背筋がゾッとした。
「…なぁ、洋次。明日、大瀬が前にいた小学校に行って、俺達みたいに体罰加えられた奴等集めてみようか…?」
竜次の口から信じられない言葉を聞き、洋次は耳を疑った。
「…おいっ、竜次っ、お前、本気で言ってるのかっ…?」
「ああ…」
この時、竜次の心の中で、大瀬に対する『憎悪』が芽生えていた…。