好美と忍はなかなか良い考えが思い浮かばず、そうこうしているうち、修学旅行の日程が近くなってきた。忍と文人は同じ班になり、好美の白石北小学校も、偶然に宿泊するホテルが同じだった。
忍は、文人に竜次達の事を話すか否か迷っていたが、好美に促され、話す事にした。
修学旅行前の休日、忍は修学旅行の買い物と言い、文人を街に連れ出した。途中、JR札幌駅で、好美と合流した。
三人で修学旅行に持って行く物を買った後、ハンバーガーショップに入った。そして、忍がなかなか話を切り出せないでいたので、好美から文人に話の口火を切った。
「そんなっ…!」
二人の話を聞いた文人は、最初信じられず、好美と忍の顔を交互に見ながら、泣き出しそうな表情をした。
「二人で何とかしようと相談してたんだけど、君にも聞いてもらおうと思って…」
「…あたしは、あの暴力教師の噂を聞いてたけど、集団でリンチっていうのはどうかと思う…。それに、よりによって、あの風間が絡んでるのも気になるし…」
「風間って小学校の頃からあまり良い評判じゃないんだ。もしかしたら、変な事に二人が巻き込まれるかもしれないし…」
好美と忍は、竜次と洋次が司に巻き込まれるのではないかと、心配していた。
「これは、あくまでも噂だけど、風間のヤツ、今の番長が引退したら、自分が不良達を仕切ろうと企んでいるみたい。そんな事になったら…」
「…僕は、何をすればいいの…?」
うつむいていた文人が、顔を上げ、泣き出しそうになるのを堪えながら、好美をじっと見た。
「今、竜次を止められるのは、文人君だけなんじゃないかと思って…」
「俺も、文人君だったら、竜次を説得出来るんじゃないかって、そう思う…」
「僕が…?」
「あたし達も、協力するからっ…!」
文人は、最初戸惑っていたが、好美と忍の真剣な表情を見て、黙ってうなずいた…。
修学旅行の当日、文人は学校へ行く途中、竜次の家に立ち寄った。
「…あれっ?」
竜次は一瞬驚いたが、6年生になってからずっと文人と逢っていなかったので、文人を見て顔がほころんだ。
「しばらく見ないうちに、背ぇ伸びたなぁ…」
「うん…」
文人は最近、急に背が伸びてきて、150センチ程になっていた(それでも、竜次と比べると20センチ以上差があるが…)。
文人と竜次は学校へ着くまでの間、久々に一緒に歩きながら話していた。そして、現地に着いたら一緒にお土産を買いに行く約束をした。
「じゃあ、向こうでね♪」
学校に着くと、文人は嬉しそうに手を振り、教室に入った。
「文人君、どうだった…?」
「大丈夫、向こうで一緒にお土産買いに行くって約束したから、その時に…」
文人は、周囲に聞かれないよう、忍の耳元で話した。忍は黙ってうなずいた。
グラウンドに集合し、校長の話が終わった後、各クラス毎バスに乗り込んだ。その際、文人は竜次の後ろ姿を見つめていた。
〈…竜次君、絶対、馬鹿なマネはさせないっ…!〉
文人は、決心を強く固めていた…。
幸い、良い天気に恵まれ、途中で野外学習をしながら、宿泊先の洞爺湖に向かった。
午後3時頃、宿泊するホテルに到着し、忍と文人は部屋に荷物を置くと、好美から予め教えてもらっていた部屋番号に連絡をし、ロビーの片隅で待ち合わせした。
「どうだった…?」
「文人君が、竜次と一緒にお土産買いに行く約束したから、その時に…」
「…そう、ありがとう。あたし達も、同じ時間帯になるから、合流しようか?」
「ううん、竜次君は、僕が…」
文人は、自分一人で竜次を説得しようと考えている事を話した。
「…文人君、大丈夫なの?」
「竜次君なら、きっと僕の話を聞いてくれると思うんだ。だから、植村さんと忍君は、洋次君を…」
「でもっ…」
忍が心配そうな表情をしたが、好美は、文人が自分の意志を強く固めていたのを感じ取った。
「わかった…。洋次は、あたしと忍が説得してみる…」
好美はそう言うと、他の生徒達に見つからないよう、自分の部屋に戻っていった。忍と文人も、時間をずらして部屋に戻った。
夕方5時頃、文人はロビーで竜次と待ち合わせした。洋次も一緒について来たが、ホテルを出る時、忍と好美が合流し、洋次を無理矢理連れ、二人から引き離した。
「なっ、何っ…?」
「バカ、少し気ぃ利かせなって…」
忍はそう言って、竜次と文人の方を指さした。
「ちぇっ…、そういう事か…。まぁ、仕方ねぇな…」
洋次は、渋々承知し(それでも、何故好美が一緒にいるのか納得しないまま)、三人で出掛ける事になってしまった。
文人と竜次は、久々に二人だけでいろいろと店を見て歩きながら、いろいろと話し込んでいた。この時は、竜次も久々に笑顔を見せていた。
〈あっ、これ、いいな…♪〉
文人は、店の中で、洞爺湖限定のキーホルダーを見つけ、眺めていた。すると、その様子を見ていた竜次が、内緒で色違いのものを二つ買い、店から出てホテルに戻る途中、文人に一つ手渡した。
「竜次君、これ…?」
「ホラ…♪」
竜次は、自分用のキーホルダーを取り出し、文人に見せた。
「ありがとう…♪」
文人は嬉しくて、思わず竜次に抱きついた。
〈文人…〉
竜次も、たまらず文人をギュッと抱きしめていた。その様子を、見回りしていた大瀬が見ていたのを、二人は気付かなかった。
ホテルに戻ってくると、ロビーの片隅で一旦休憩する事にした。その際、文人から話を切り出した。
「…忍君から聞いた話なんだけど…、竜次君、本当なの…?」
文人からそう言われた瞬間、竜次から笑顔が消えてしまった。
「…文人、アイツは、洋次がハーフだからっていうだけで、暴力を振るうようなヤツなんだっ…! 俺が見かねて止めに入ったら、今度は俺もっ…!」
そう言いながら、竜次は着ていたTシャツの裾をめくって、文人に腹部を見せた。
忍は、文人に竜次達の事を話すか否か迷っていたが、好美に促され、話す事にした。
修学旅行前の休日、忍は修学旅行の買い物と言い、文人を街に連れ出した。途中、JR札幌駅で、好美と合流した。
三人で修学旅行に持って行く物を買った後、ハンバーガーショップに入った。そして、忍がなかなか話を切り出せないでいたので、好美から文人に話の口火を切った。
「そんなっ…!」
二人の話を聞いた文人は、最初信じられず、好美と忍の顔を交互に見ながら、泣き出しそうな表情をした。
「二人で何とかしようと相談してたんだけど、君にも聞いてもらおうと思って…」
「…あたしは、あの暴力教師の噂を聞いてたけど、集団でリンチっていうのはどうかと思う…。それに、よりによって、あの風間が絡んでるのも気になるし…」
「風間って小学校の頃からあまり良い評判じゃないんだ。もしかしたら、変な事に二人が巻き込まれるかもしれないし…」
好美と忍は、竜次と洋次が司に巻き込まれるのではないかと、心配していた。
「これは、あくまでも噂だけど、風間のヤツ、今の番長が引退したら、自分が不良達を仕切ろうと企んでいるみたい。そんな事になったら…」
「…僕は、何をすればいいの…?」
うつむいていた文人が、顔を上げ、泣き出しそうになるのを堪えながら、好美をじっと見た。
「今、竜次を止められるのは、文人君だけなんじゃないかと思って…」
「俺も、文人君だったら、竜次を説得出来るんじゃないかって、そう思う…」
「僕が…?」
「あたし達も、協力するからっ…!」
文人は、最初戸惑っていたが、好美と忍の真剣な表情を見て、黙ってうなずいた…。
修学旅行の当日、文人は学校へ行く途中、竜次の家に立ち寄った。
「…あれっ?」
竜次は一瞬驚いたが、6年生になってからずっと文人と逢っていなかったので、文人を見て顔がほころんだ。
「しばらく見ないうちに、背ぇ伸びたなぁ…」
「うん…」
文人は最近、急に背が伸びてきて、150センチ程になっていた(それでも、竜次と比べると20センチ以上差があるが…)。
文人と竜次は学校へ着くまでの間、久々に一緒に歩きながら話していた。そして、現地に着いたら一緒にお土産を買いに行く約束をした。
「じゃあ、向こうでね♪」
学校に着くと、文人は嬉しそうに手を振り、教室に入った。
「文人君、どうだった…?」
「大丈夫、向こうで一緒にお土産買いに行くって約束したから、その時に…」
文人は、周囲に聞かれないよう、忍の耳元で話した。忍は黙ってうなずいた。
グラウンドに集合し、校長の話が終わった後、各クラス毎バスに乗り込んだ。その際、文人は竜次の後ろ姿を見つめていた。
〈…竜次君、絶対、馬鹿なマネはさせないっ…!〉
文人は、決心を強く固めていた…。
幸い、良い天気に恵まれ、途中で野外学習をしながら、宿泊先の洞爺湖に向かった。
午後3時頃、宿泊するホテルに到着し、忍と文人は部屋に荷物を置くと、好美から予め教えてもらっていた部屋番号に連絡をし、ロビーの片隅で待ち合わせした。
「どうだった…?」
「文人君が、竜次と一緒にお土産買いに行く約束したから、その時に…」
「…そう、ありがとう。あたし達も、同じ時間帯になるから、合流しようか?」
「ううん、竜次君は、僕が…」
文人は、自分一人で竜次を説得しようと考えている事を話した。
「…文人君、大丈夫なの?」
「竜次君なら、きっと僕の話を聞いてくれると思うんだ。だから、植村さんと忍君は、洋次君を…」
「でもっ…」
忍が心配そうな表情をしたが、好美は、文人が自分の意志を強く固めていたのを感じ取った。
「わかった…。洋次は、あたしと忍が説得してみる…」
好美はそう言うと、他の生徒達に見つからないよう、自分の部屋に戻っていった。忍と文人も、時間をずらして部屋に戻った。
夕方5時頃、文人はロビーで竜次と待ち合わせした。洋次も一緒について来たが、ホテルを出る時、忍と好美が合流し、洋次を無理矢理連れ、二人から引き離した。
「なっ、何っ…?」
「バカ、少し気ぃ利かせなって…」
忍はそう言って、竜次と文人の方を指さした。
「ちぇっ…、そういう事か…。まぁ、仕方ねぇな…」
洋次は、渋々承知し(それでも、何故好美が一緒にいるのか納得しないまま)、三人で出掛ける事になってしまった。
文人と竜次は、久々に二人だけでいろいろと店を見て歩きながら、いろいろと話し込んでいた。この時は、竜次も久々に笑顔を見せていた。
〈あっ、これ、いいな…♪〉
文人は、店の中で、洞爺湖限定のキーホルダーを見つけ、眺めていた。すると、その様子を見ていた竜次が、内緒で色違いのものを二つ買い、店から出てホテルに戻る途中、文人に一つ手渡した。
「竜次君、これ…?」
「ホラ…♪」
竜次は、自分用のキーホルダーを取り出し、文人に見せた。
「ありがとう…♪」
文人は嬉しくて、思わず竜次に抱きついた。
〈文人…〉
竜次も、たまらず文人をギュッと抱きしめていた。その様子を、見回りしていた大瀬が見ていたのを、二人は気付かなかった。
ホテルに戻ってくると、ロビーの片隅で一旦休憩する事にした。その際、文人から話を切り出した。
「…忍君から聞いた話なんだけど…、竜次君、本当なの…?」
文人からそう言われた瞬間、竜次から笑顔が消えてしまった。
「…文人、アイツは、洋次がハーフだからっていうだけで、暴力を振るうようなヤツなんだっ…! 俺が見かねて止めに入ったら、今度は俺もっ…!」
そう言いながら、竜次は着ていたTシャツの裾をめくって、文人に腹部を見せた。