~原発事故は度重なる指摘を無視したことによる人災 国会審議を振り返る~
【2006年3月1日 衆議院予算委員会第7分科会第2号】(「3.11」の5年前)
吉井分科員
日本共産党の吉井英勝です。
きょうは、原子力発電所の地震、津波対策を取り上げたいと思います。(中略)まず、その取水の方では、いただいた資料では、浜岡原発などは600メートル先まで延ばしていって、6メーター下のところで取水するという形なんですが、そもそもあそこは東海地震の震源域の真上なんですね。そうすると、液状化の問題もあれば、直下型地震による配管そのものの破壊という問題もあるわけです。非常に深刻な問題を抱えているんだから、私は、直下型の短周期の地震動、それから長周期の地震動、あわせて津波の問題について、今、根本的に地震国日本としては考えていかなきゃいけないというふうに思います。
(中略)
運転には毎秒35トン必要なんですね。取水槽の海水量、容量が1200トンですから、仮に引き波で取水できなくなって、ダンパーか何かでプールの水は漏れないようにしたとしても、ここで運転に必要な取水時間というのは34秒間なんですね。
(中略)
仮にとめたとしても、原子炉というのは放射性崩壊していきますから崩壊熱を除去する、これには幾ら必要かといったら、毎分60トンの冷却水が必要だと。だから、プールに蓄えられているのが1200トンで、最初、すぐとめるまでの間にどんどん冷却に使っていますから、使った上で、とめてからも毎分60トンですから、仮にすぐとめたとしても、やはり10分から10数分間は、最悪の場合には崩壊熱を除去する機能が失われてくるということについても、対策をきちっと考えておかなきゃいけないんじゃないですか。
広瀬政府参考人
地震が発生しました場合には、事業者は津波警報によく注意をすることになります。津波警報が発表された場合には、事業者は潮位をよく監視しまして、津波のおそれがあるというときには直ちに原子炉を停止させるということになります。
(中略)
浜岡発電所の場合には、取水槽を設けておりまして、原子炉機器冷却系に必要な量の海水が20分間程度以上確保されておるということであります。その間には取水の水位が回復をしますので、水位低下に対しましても原子炉施設の安全性は確保されているというふうに考えております。
吉井分科員
今おっしゃった4分の話というのは、直下型で同時に津波が起こったときには、私はそういう発想も成り立つかと思っているんです。
(中略)
しかし、チリ津波なんかのときには、そもそも周期が50分なんですね。
(中略)
近くの津波の場合は、地震そのものの問題、浜岡でいえば冷却水管が破損されるということも含めて考えなきゃいけない。
(中略)
最悪の場合には、崩壊熱が除去できなければ、これは炉心溶融であるとか水蒸気爆発であるとか水素爆発であるとか、要するに、どんな場合にもチェルノブイリに近いことを想定して対策をきちんきちんととらなければいけないと思うんです。最悪の場合は、崩壊熱が除去できなかったら、そういうことになり得るわけでしょう。
【2006年10月27日 衆議院内閣委員会】(「3.11」の4年半前)
吉井委員
スウェーデンのフォルスマルク原発1号では、バックアップ電源が4系列あるんだけれども、同時に2系列だめになった、こういう事故があったことは御存じのとおりです。
それで、日本の原発の約6割は、バックアップ電源は3系列、4系列じゃなくて2系列なんですね、6割は。そうすると、大規模地震等によって原発事故が起こったときに、本体が何とかもったとしても機器冷却系に、津波の方は何とかクリアできて、津波の話はことしの春やりましたけれどもクリアできたとしても、送電鉄塔の倒壊、あるいは外部電源が得られない中で内部電源も、海外で見られるように、事故に遭遇した場合、ディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなったときに機器冷却系などが働かなくなるという問題が出てきますね。このときに原子炉はどういうことになっていくのか、この点についての原子力安全委員長の予測というものをお聞きしておきたいと思うんです。
(中略)
鈴木篤之参考人
いろいろな事態がもちろんあり得ると思っていまして、ただ、そういう事態になったとしてもできるだけ、先生が御心配のように、炉心が深刻な事態にならないようにというのが我々がとっている方針でありまして、そういう意味では、例えば非常用ディーゼルが万一動かなくなったという場合には、さらに直流のバッテリーを用意するとか……
(吉井委員「いや、フォルスの方はそれもだめでしたからね、2系列」と呼ぶ)
フォルスマルクの場合は4系列の2系列がさらにだめになったということですね。
(吉井委員「バッテリーもだめでしたから」と呼ぶ)
はい、2系列ですね。
(中略)
基準をさらに超えるような大変大きな地震が来たときには、では、どうなのかということも、これは事業者に、そういうことも評価してください、評価した結果、そういうことがまず起こらないことを数字で確認するか何らかの方法で確認してください、そういう方針で今考えております。
吉井委員
(中略)
ですから、そういう場合にどういうふうに事故は発展していくものかということをやはり想定したことを考えておかないと、それは想定していらっしゃらないということが今のお話ではわかりましたので。
【2010年5月26日 衆議院経済産業委員会】(「3.11」の10ヶ月前)
吉井委員
日本共産党の吉井英勝です。
私は、最初にきょうは、電力会社の鉄塔倒壊事故の最近の状況、これが一体どうなっているのかということから伺っておきたいと思います。
(中略)
まず鉄塔が倒れたら、これはもう完全に、さっきもおっしゃった事故の中には、2005年の石川県羽咋市で地すべりによる鉄塔倒壊、これは、地震等によれば当然地すべりどころの話じゃなくなるんですが、外部電源がまず断たれる。内部電源はどうかという点では、これは以前取り上げたこともありますが、2006年の7月に、スウェーデンのフォルスマルク原発1号機では、安全系の内部電源4系列のうちの2系列の事故で、4系列すべて電源喪失につながる事故がありました。
つまり、内外の例から見ると、やはり最悪の場合を想定しなきゃいけないんですね。ですから、自然崩壊熱が除去できなくなる、それは炉心溶融にも至り得る大変深刻な事態を考えておかなきゃならないということだと思うんですが、どうですか。
寺坂政府参考人
(中略)
この鉄塔自身の復旧と建て直しまでには約14カ月を要したものでございますけれども、同時に、並行して作業をしてございました別の幹線がございまして、これは約3週間後の4月22日に運用を開始してございます。
それ以前に、倒壊した直後、これは原子力発電所が安全に停止をしたところでございまして、それで、御案内のとおり、電力といいますか、送電線、いろいろなところでつながっているわけでございますので、そういった意味で、北陸電力の場合におきましても、外部電源の喪失、そういう事態にはならなかったということでございます。
ただ、いずれにいたしましても、これは今の事例でございますけれども、原子力施設を設計する場合に、放射性物質の閉じ込めのために、多重性それから独立性を有します非常用の所内電源を備える、そういったことなどの多重防護の考え方というものは極めて重要でございまして、日本の原子力発電所におきましては、今申し上げましたような多重防護の考え方に基づいた設計がなされまして、それによって安全性を確保しているというところでございます。
(吉井委員「最悪の場合は炉心溶融ですね、最悪のとき」と呼ぶ)
最悪といいますか(笑)、そもそもそういった事態が起こらないように工学上の設計、ほとんどもうそういったことはあり得ないだろうというぐらいまでの安全設計をしているところでございますけれども、ゼロじゃないという意味の論理的な世界におきまして、外部電源がすべて喪失されて、今、非常用の所内電源、ディーゼル発電機の話を申し上げましたけれども、隣の発電所からの電源融通もできないとか、いろいろな悪い事態というものが、非常に小さい確率ながらも1つ1つ、その小さい確率のものが全部実現をして、それで外部電源が全部喪失されて冷却機能が失われるということになりますと、もちろんその時間によるわけでございますけれども、長時間にわたりますと炉心溶融とかそういったことにつながるというのは、論理的には考え得る、そういうものでございます。
【2011年4月6日 衆議院経済産業委員会】(「3.11」の1ヶ月後)
吉井委員
日本共産党の吉井英勝です。私は、まず最初に、今回の地震、大津波で犠牲となられた方々に対して哀悼の意を表したいと思います。それからまた、今も大変な生活を余儀なくされている被災者の皆さんに心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
地震と津波というのは、これは間違いなく自然災害です。しかし、全電源喪失と炉心溶融という問題については、実は私は、2005年の質問主意書以降、2006年の国会質問なども通じて、ずっとこの問題を取り上げてきたんです。対策をとらなきゃだめだということを言ってきたんです。
最初、寺坂原子力安全・保安院長に伺っておきますが、昨年5月26日の当委員会で、私の質問に対して、全電源喪失で炉心溶融は論理的には考え得ると答弁しておられました。今回の原発事故というのは、論理的な話じゃなくて、現実のものとなったのではありませんか。
寺坂政府参考人
お答え申し上げます。昨年5月、吉井委員からの御質問に対しまして今御指摘のような答弁をしたことは事実でございます。
(中略)
現実に、ただいま御指摘のような事態が発生をしたわけでございまして、そのような意味におきまして、私の当時の認識におきまして甘さがあったことは深く反省をしているところでございます。
吉井委員
私は、次に鈴木原子力研究開発機構理事長に伺っておきたいんです。
実は、2006年、ちょうどあなたが原子力安全委員長であった当時の3月1日の予算委員会で、私は、津波の押し波と引き波、これにより機器冷却系が取水不能になる問題なども取り上げ、同年10月27日の質問では、地震による鉄塔倒壊で外部電源喪失となり、内部電源が事故に遭ってディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなるという問題で、鈴木委員長のこの点での予測を質問しました。
(中略)
全電源喪失というのは、要するに、他の外部電源や、同じ原発敷地内の他の原発からの融通や、その原発自身に設置してあるディーゼル発電機とバッテリーの組み合わせにより、設計上ちゃんとしてある、大丈夫だというお話だったわけです。
3月11日に原発が停止した後、福島第1では、機器冷却系を動かすすべての電源、これは喪失したんじゃありませんか。
鈴木参考人
お答え申し上げます。それは、私が原子力安全委員会の委員長を仰せつかっていたときのお話ではございますが、そのとおりお答えしたと思います。
現実にこのような事故が起きておりまして、私は、原子力に長年携わっております者として、国民の皆様方に大変な御心配、御心労、御迷惑をおかけしていることに対しまして大変申しわけないと思っておりますし、私自身、痛恨のきわみでございます。
今先生お尋ねの件につきまして、私は考え方はそのとおりだと思っておりますが、結局は、具体的にそれに対してどのような手を打つかということ、つまり、多重性、多様性について、実際、設備対応ないしその運転管理に当たって具体的にどのような考え方をとるかというところが、私は、今後大いにこの事故を反省して考えなきゃいけないことだ、そのように思っております。