2014年1月12日
NPO法人『理科カリキュラムを考える会』の全国大会において、講演「反転授業は日本の理科教育を救うか?」 との演題で、土佐幸子(新潟大学教育学部教授)さんから講演がありました(USTREAM中継)ので、まとめたいと思います。
なお、土佐先生は昨年8月まで30年間アメリカにいらして、アメリカの教育事情にもお詳しいという紹介がありました。
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■講演の流れ
1.土佐先生による講義1(反転授業とは何か、反転授業の定義や歴史)
2.武雄市の反転授業の様子(テレビニュース)、アメリカの大学の例(動画)
3.反転授業についてのまとめ
4.会場アンケート1「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
5.隣の人とペアで反転授業についての長所・短所をまとめ、2組の人が発表
6.土佐先生による講義2(土佐先生による長所・短所まとめなど)
7.会場アンケート2「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
この順番に従って、レポートします。
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■1.土佐先生による講義1(反転授業とは何か、反転授業の定義や歴史)
ここでは、反転授業を初めて聞く先生向けに、定義や歴史がレクチャーされました。
■2.武雄市の反転授業の様子(テレビニュース)、アメリカの大学の例(動画)
武雄市で行われた小学校算数と理科の反転授業の様子をテレビニュースの動画を流し、さらに、アメリカの大学の例(スマートフィジックス プレレクチャー)でニュートンの力学方程式の実際の予習動画を流し、予習動画の理解を深めます。
武雄市の教育監 代田さんから。
意欲的に取り組めない生徒の対応は⇒放課後に補習など
予習教材の作成に時間と労力かかりすぎる⇒次のステップはどの教諭でも使えるよう一般化した教材の作成で対応
佐賀新聞TV夕刊の動画はこちら。
スマートフィジックスプレレクチャーの動画はこちら
■3.反転授業についてのまとめ
反転授業の長所・短所を議論する際のファクターは
・教科(理科、算数・数学、国語、社会・・・)
・学校レベル(小中高大)
・国(日米・・・)
・学習者の学力レベルや意欲
伝達情報量の多い科目(例えば歴史や高校化学)や反復練習が重要な科目(算数、数学)、伝統的に講義形式が多い分野(高校受験講座や大学)で反転授業の実践例が多い傾向がある。
■4.会場アンケート1「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
全員にクリッカーが配られ、以下の質問と結果
●日本の小中学校で反転授業は有効か?
思う 52%
思わない 48%
■5.隣の人とペアで反転授業についての長所・短所をまとめ、2組の人が発表
ミニホワイトボードを使って、二人一組で、ここまでの話から、反転授業の長所と短所をまとめる ⇒ 2組が前に出てきて発表(音声がよく聞き取れなかったので省略)
■6.土佐先生による講義2(土佐先生による長所・短所まとめなど)
(1)反転授業の長所と短所
・時間について
長所:授業時間を話し合いや問題解決などの応用に使うことができ、学習者主体の能動的な学び合いが実現する。
短所:授業形態の変化に伴いカリキュラム、手法、教材、教員の知識・技能・意識の整備が必要となる
・予習について
長所:個人ベースで基礎知識の獲得ができる、繰り返し視聴も可能なので、授業前の不安の解消につながる
短所:ビデオで予習してこなかった子、理解できなかった子への対応問題
・ビデオの利用
長所:わかりやすく、面白いものをつくれば、動機づけになる
短所:一方通行型で学び合いになってない。実験だと見せるだけになってしまう
・教師の対応
長所:授業時間に子供一人ひとりに対応できる
短所:子供一人ひとりに対応するには時間と労力がいる。ビデオ自作にも時間と労力がかかる。
・保護者
長所:学習内容を知ることができる
短所:保護者の理解や予習がきちんと行われているかのチェック
・ICT
長所:危機を扱う経験を持てる
短所:機材の管理や費用負担
反転授業を成り立たせる条件や仮定は
・学校での時間の余裕ができれば有効な学びができる
・生徒が家庭で勉強してくる
・ビデオをみて理解できる
・学校では一人人の学びを支援できる
・家庭での保護者の協力がある
(2)アメリカにおける反転授業の有用性
・アメリカにおける教育の問題は、教科書が日本に比べて整備されていないこと、教師により教育内容・レベルにムラがあること。従って、既存ビデオ(カーンアカデミーなど)を使用することにより、教科内容を確実に伝えることができる。
・例えば化学の従来の授業スタイル(ドリル5分、宿題の答え合わせ20分、新しい内容の学習30-45分、反復学習または実験20-35分)⇒反転授業(復習ドリル5分、ビデオについての質問10分、反復学習または実験75分)で、圧倒的に演習に回せる。
・反転授業は学力の高い子供には有効であるが、低い子供には有効ではないという議論があり、有効でないと判断する教師は、反転授業は導入していない。
(3)理科教育に特化して考えた場合の土佐先生の私見
・日本の理科授業では、素朴概念から新しい授業内容を構築するようにしている。それをビデオ学習に変えてしまうのは難しいと思う。新しい知識や概念の構築は理科の根幹。反転授業は、基本、概念を先にレクチャーする演繹型。理科教育は、帰納と演繹を往ったり来たりするのが本来望ましいので、日本の理科教育では反転授業の単純導入はそぐわないと考える。
・ただし協働の話し合い・学び合いは大事である。一人一人の意見の交流は大事。なんとか捻出しなくてはならない。教師の役割としての個別対応も大事である。
・武雄市に文書で確認したが、研究授業で行っていた理科の授業については、生徒がビデオで観てきた予習部分は、実はすでに前時間に勉強してきている。「新しい授業を予習してくる」という定義から言えば、反転にはなっていない。
・ただし、こうした動画をプレレクチャー、ポストレクチャーとして使っていくのは有効なことがある。動画作成を実際に自分でしてみることにより、シナリオ作成や生徒に伝えやすい分かる表現を教師が考えるようになる。新しい要素を外に出す
・反転授業の要素で使えること、新しい可能性をポジティブに使っていこう
■7.会場アンケート2「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
再度、反転授業は日本の小中学校理科において有効な授業形態か
思う 33%
思わない 48%
どちらでもない 21%
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結論から言うと、土佐先生の見解では、単純に日本の小中学校理科に限定した場合、反転授業の導入はふさわしくないということ。
しかし、動画作成をしたり、それをプレ講義やポスト講義として授業に組込み、新しい風を理科教育に入れることには賛成という立ち位置のようでした。
※当ブログは、福島がまとめました。
以後、訂正追加する場合があります。
NPO法人『理科カリキュラムを考える会』の全国大会において、講演「反転授業は日本の理科教育を救うか?」 との演題で、土佐幸子(新潟大学教育学部教授)さんから講演がありました(USTREAM中継)ので、まとめたいと思います。
なお、土佐先生は昨年8月まで30年間アメリカにいらして、アメリカの教育事情にもお詳しいという紹介がありました。
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■講演の流れ
1.土佐先生による講義1(反転授業とは何か、反転授業の定義や歴史)
2.武雄市の反転授業の様子(テレビニュース)、アメリカの大学の例(動画)
3.反転授業についてのまとめ
4.会場アンケート1「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
5.隣の人とペアで反転授業についての長所・短所をまとめ、2組の人が発表
6.土佐先生による講義2(土佐先生による長所・短所まとめなど)
7.会場アンケート2「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
この順番に従って、レポートします。
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■1.土佐先生による講義1(反転授業とは何か、反転授業の定義や歴史)
ここでは、反転授業を初めて聞く先生向けに、定義や歴史がレクチャーされました。
■2.武雄市の反転授業の様子(テレビニュース)、アメリカの大学の例(動画)
武雄市で行われた小学校算数と理科の反転授業の様子をテレビニュースの動画を流し、さらに、アメリカの大学の例(スマートフィジックス プレレクチャー)でニュートンの力学方程式の実際の予習動画を流し、予習動画の理解を深めます。
武雄市の教育監 代田さんから。
意欲的に取り組めない生徒の対応は⇒放課後に補習など
予習教材の作成に時間と労力かかりすぎる⇒次のステップはどの教諭でも使えるよう一般化した教材の作成で対応
佐賀新聞TV夕刊の動画はこちら。
スマートフィジックスプレレクチャーの動画はこちら
■3.反転授業についてのまとめ
反転授業の長所・短所を議論する際のファクターは
・教科(理科、算数・数学、国語、社会・・・)
・学校レベル(小中高大)
・国(日米・・・)
・学習者の学力レベルや意欲
伝達情報量の多い科目(例えば歴史や高校化学)や反復練習が重要な科目(算数、数学)、伝統的に講義形式が多い分野(高校受験講座や大学)で反転授業の実践例が多い傾向がある。
■4.会場アンケート1「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
全員にクリッカーが配られ、以下の質問と結果
●日本の小中学校で反転授業は有効か?
思う 52%
思わない 48%
■5.隣の人とペアで反転授業についての長所・短所をまとめ、2組の人が発表
ミニホワイトボードを使って、二人一組で、ここまでの話から、反転授業の長所と短所をまとめる ⇒ 2組が前に出てきて発表(音声がよく聞き取れなかったので省略)
■6.土佐先生による講義2(土佐先生による長所・短所まとめなど)
(1)反転授業の長所と短所
・時間について
長所:授業時間を話し合いや問題解決などの応用に使うことができ、学習者主体の能動的な学び合いが実現する。
短所:授業形態の変化に伴いカリキュラム、手法、教材、教員の知識・技能・意識の整備が必要となる
・予習について
長所:個人ベースで基礎知識の獲得ができる、繰り返し視聴も可能なので、授業前の不安の解消につながる
短所:ビデオで予習してこなかった子、理解できなかった子への対応問題
・ビデオの利用
長所:わかりやすく、面白いものをつくれば、動機づけになる
短所:一方通行型で学び合いになってない。実験だと見せるだけになってしまう
・教師の対応
長所:授業時間に子供一人ひとりに対応できる
短所:子供一人ひとりに対応するには時間と労力がいる。ビデオ自作にも時間と労力がかかる。
・保護者
長所:学習内容を知ることができる
短所:保護者の理解や予習がきちんと行われているかのチェック
・ICT
長所:危機を扱う経験を持てる
短所:機材の管理や費用負担
反転授業を成り立たせる条件や仮定は
・学校での時間の余裕ができれば有効な学びができる
・生徒が家庭で勉強してくる
・ビデオをみて理解できる
・学校では一人人の学びを支援できる
・家庭での保護者の協力がある
(2)アメリカにおける反転授業の有用性
・アメリカにおける教育の問題は、教科書が日本に比べて整備されていないこと、教師により教育内容・レベルにムラがあること。従って、既存ビデオ(カーンアカデミーなど)を使用することにより、教科内容を確実に伝えることができる。
・例えば化学の従来の授業スタイル(ドリル5分、宿題の答え合わせ20分、新しい内容の学習30-45分、反復学習または実験20-35分)⇒反転授業(復習ドリル5分、ビデオについての質問10分、反復学習または実験75分)で、圧倒的に演習に回せる。
・反転授業は学力の高い子供には有効であるが、低い子供には有効ではないという議論があり、有効でないと判断する教師は、反転授業は導入していない。
(3)理科教育に特化して考えた場合の土佐先生の私見
・日本の理科授業では、素朴概念から新しい授業内容を構築するようにしている。それをビデオ学習に変えてしまうのは難しいと思う。新しい知識や概念の構築は理科の根幹。反転授業は、基本、概念を先にレクチャーする演繹型。理科教育は、帰納と演繹を往ったり来たりするのが本来望ましいので、日本の理科教育では反転授業の単純導入はそぐわないと考える。
・ただし協働の話し合い・学び合いは大事である。一人一人の意見の交流は大事。なんとか捻出しなくてはならない。教師の役割としての個別対応も大事である。
・武雄市に文書で確認したが、研究授業で行っていた理科の授業については、生徒がビデオで観てきた予習部分は、実はすでに前時間に勉強してきている。「新しい授業を予習してくる」という定義から言えば、反転にはなっていない。
・ただし、こうした動画をプレレクチャー、ポストレクチャーとして使っていくのは有効なことがある。動画作成を実際に自分でしてみることにより、シナリオ作成や生徒に伝えやすい分かる表現を教師が考えるようになる。新しい要素を外に出す
・反転授業の要素で使えること、新しい可能性をポジティブに使っていこう
■7.会場アンケート2「反転授業は有効か」(クリッカー使用)
再度、反転授業は日本の小中学校理科において有効な授業形態か
思う 33%
思わない 48%
どちらでもない 21%
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結論から言うと、土佐先生の見解では、単純に日本の小中学校理科に限定した場合、反転授業の導入はふさわしくないということ。
しかし、動画作成をしたり、それをプレ講義やポスト講義として授業に組込み、新しい風を理科教育に入れることには賛成という立ち位置のようでした。
※当ブログは、福島がまとめました。
以後、訂正追加する場合があります。