どうでもいい話をちょいちょい挟む。
*********
父が死んでから一週間か二週間経って、
どうしても父と会いたくなった日があった。
無理だと分かっていても
急に耐えられなくなる日がたまにあって
その夜もそうだった。
幽霊でもいいから、と会社帰り
夜で顔が見えにくいのをいいことに
べそべそと泣きながら歩いていたら
通り掛かった公園の、歩道から少し離れた外灯の下に
一匹の猫がいることに気がついた。
黒と白のハチワレの、父が生前飼っていた猫によく似ていた。
父の猫は親切な猫好きさんが引き取ってくれて
野良になっていることは無いはずはないんだけど、と
思ったところでふと
あれは父なんじゃないか?という飛躍した考えに至った。
悲しんでいる娘の願いを叶えるため
父が猫の姿を借りてちょっとねえ、ほれ
などと思っていたら、その猫が慎重な足取りで
私のほうへ近付いて来るではないか。
もうこれは間違いなく父だ。
オカルトかファンタジーでよくあるやつや。
藁にもすがりたい私はそう確信して
気持ちしゃがみ猫と話す体勢をとったのだが
猫の目線は何故か地面を向いている。
……外灯を反射してぬらぬら光る
細く流れる水のようなものを追っている……?
ムカデだ。
すごく大きなムカデがこちらに向かって
一直線に地面を這って来ており
猫はそれを追って私の方へ来ていたのだ。
私は結構な悲鳴をあげて立ち上がり
反射的に素早く足を上げ、振り下ろした。
靴の裏が地面をとらえた。
しかしその瞬間思ったのは
「……あれ、こっちがお父さん?!」
私の悲鳴と急激な動き
スパーンという足音に驚いた猫は一瞬固まり
それから即座に身を翻して逃げていってしまった。
残ったのは見事にぺったんこになってしまったムカデ。
こっちに歩いて来ていたのはムカデ……
ごめん、もしこれがお父さんだったなら
お父さんのムカデ人生 終わらせちゃった……
…………
そんなことがあったので
その後は泣くこともなく何だか落ち着いてしまい
家に帰ってごはんを食べて寝た。
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父が死んでから一週間か二週間経って、
どうしても父と会いたくなった日があった。
無理だと分かっていても
急に耐えられなくなる日がたまにあって
その夜もそうだった。
幽霊でもいいから、と会社帰り
夜で顔が見えにくいのをいいことに
べそべそと泣きながら歩いていたら
通り掛かった公園の、歩道から少し離れた外灯の下に
一匹の猫がいることに気がついた。
黒と白のハチワレの、父が生前飼っていた猫によく似ていた。
父の猫は親切な猫好きさんが引き取ってくれて
野良になっていることは無いはずはないんだけど、と
思ったところでふと
あれは父なんじゃないか?という飛躍した考えに至った。
悲しんでいる娘の願いを叶えるため
父が猫の姿を借りてちょっとねえ、ほれ
などと思っていたら、その猫が慎重な足取りで
私のほうへ近付いて来るではないか。
もうこれは間違いなく父だ。
オカルトかファンタジーでよくあるやつや。
藁にもすがりたい私はそう確信して
気持ちしゃがみ猫と話す体勢をとったのだが
猫の目線は何故か地面を向いている。
……外灯を反射してぬらぬら光る
細く流れる水のようなものを追っている……?
ムカデだ。
すごく大きなムカデがこちらに向かって
一直線に地面を這って来ており
猫はそれを追って私の方へ来ていたのだ。
私は結構な悲鳴をあげて立ち上がり
反射的に素早く足を上げ、振り下ろした。
靴の裏が地面をとらえた。
しかしその瞬間思ったのは
「……あれ、こっちがお父さん?!」
私の悲鳴と急激な動き
スパーンという足音に驚いた猫は一瞬固まり
それから即座に身を翻して逃げていってしまった。
残ったのは見事にぺったんこになってしまったムカデ。
こっちに歩いて来ていたのはムカデ……
ごめん、もしこれがお父さんだったなら
お父さんのムカデ人生 終わらせちゃった……
…………
そんなことがあったので
その後は泣くこともなく何だか落ち着いてしまい
家に帰ってごはんを食べて寝た。