あんな事故が起きなければ、と何度思ったか知れない。
私達には子孫がいないんじゃないかと
後輩のKちゃんと話し合った事がある。
子孫がいたらこんな悲しいばかりで
何の益もない事故なんか、
事前に防いでくれるんじゃないかと思ったのだ。
タイムマシンに乗ってさ。
だけどOの事があって
私は人の色々な面を見ることが出来た。
時にはがっかりするほど汚い面もあったけど
大部分は思いがけず純粋で優しいものだった。
そのことを考えると私達の通ってきた道は
決して無駄に悲しく
苦しいだけの道ではなかったのだと思える。
こんな出来事以外では決して学べなかった事だ。
酒癖が悪くて乱暴だと思っていたS君は
私が一人でお弁当を食べていた時
「一緒に食堂で食べようよ」と誘ってくれた。
S君が一緒に食べていたグループは
男の子ばかりだったので、その中に私を入れるのは
大変勇気がいったと思う。本当に嬉しかった。
調子のいい事ばかり言って、いわゆるビッグマウスのF君。
彼が入った時から私もOもよく思っていなかった。
しかしOのために鶴を毎日毎日折ってきて
昼の休憩中も仲間と談笑しながら折っていた。
一番折鶴が似合わない人だったのに
一番数を折ってくれたんじゃないだろうか。
後輩のS君はやんちゃで悪い事ばかり言う、
強いゆえに残酷な子だった。
だけどK君や私の事をなにくれとなく気にかけてくれ、
元気付けようと家に食事に呼んでくれたり、
仲間同士のバーベキューに誘ってくれたりした。
大人みたいな気遣いをする子だったのだ。
同僚のS君、後輩のKちゃん、その他大勢で
フリーマーケットに出店して
みんなの家から集めた品物を売った。
そのお金を手術費用の足しにしてもらおうと思って
何週間も準備した。
結果は…多分会場で一番お客さんが集まった。大成功だ。
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本当はこんなに何もかも書くつもりじゃなかったのに
(35)も続いてしまった。
(あのコメントは冗談だったのに)
事故の一部と周囲の人の心模様と
それに関った私の話を少しだけ書こうと思っていたのに
まとめている内にもう少し、もう少しだけ
あの事故がどういうものだったのかを
何より自分のために書いておきたかった。
誰も特別な道を歩み、特別な事故に遭遇する訳じゃない。
命を脅かす出来事、死ぬほど後悔を残す出来事、
辛くて死んでしまいたいと思う出来事は
すぐ隣に無防備に存在している。
大半のロールプレイングゲームでは
よほど意地の悪いものでない限り、
落ちたら死んでしまうような穴はフィールドに空いていない。
右に行ったら死ぬような罠もない。
物凄い後悔を残すような選択肢も用意されていないし
間違ったとしてもあとから取り返しがついたりする。
人の人生はそうはいかないという事
私が二十歳を過ぎてようやく知った事を
書けるようになったらずっと書いておきたかった。
そして後悔しない生き方が出来るように
決して忘れないように覚えておきたかったのだ。
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書き足りない所、書けない所
書ききれない部分も多々ありますが
そろそろこの話も終わりにしたいと思います。
ずっと読んで下さった方、途中からでも読んで下さった方
本当にありがとうございました。
読んでてさぞかしお疲れになったと思います。
明日からは又ちょっぴりアホなレンキンに戻りますので
これからもどうぞ、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
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OとK君の近況は詳しく書けませんが
二人ともそれぞれの道を
それぞれ幸せに進んでいます。
大丈夫です。