レンキン

外国の写真と
それとは関係ないぼそぼそ

ぶどうのジュース

2019年03月02日 | 父の話
思い出したこと

小さい頃、父とよく行った場所があった。
最寄りの駅からたった一駅、
絶景無人駅から程よい距離の自然歩道を登った先にある
大きな池のある公園。
公園には今と違ってスリリングな遊具 (大怪我をする危険性のある楽しい遊具)が充実していて
広い芝生もあり、ボートにも乗れ、桜も見られる。
子供を連れて来て遊ばせるには絶好のスポットだった。
父はここへ私たち兄妹を連れて来ては
一緒に釣りをしたりボートに乗ったり
ボール投げやフリスビーで遊んでくれた。
兄は昔からマイペースなインドア派だったので
駅から結構な距離を登らなければ行けない
あの公園を好いてはいなかったが
私は歩くの大好き、何より父が大好きだったので
父の連れてってくれるあの場所が大好きだった。
いくつになっても良い思い出の場所として
私の中にあの公園は君臨していた。


それから時が流れ、私が幾つの時だったか
どうしてだったか覚えていないが
父と2人であの公園を訪れた事がある。
とりたて自動車免許の運転練習に、父を助手席に乗せて
ドライブしたのだったかなあ。
危険な遊具が撤去された公園はがらんとなっていて
ボートにも乗れなくなっていたが
懐かしい場所を思い出しながら2人で歩き
昔のように味噌田楽を食べた。

そのあと、父が自動販売機の前で 「愛、ジュース買ってやろうか」と言って
財布を取り出した。
父がいつも尻のポケットに入れていた
古い小さな革の財布だ。
私はその時喉が渇いていなかったのと、
車の運転が出来る大人になってるのに
ジュース買ってもらうって...(照)という気持ちから
とっさに「ううん、いらない」と言った。
父はちょっと意外そうな顔をして
「なんだ、いいのに」とか小さい声で言って
元どおり尻ポケットに財布をしまった。

(続)