中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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残雪が深い塔ノ岳(第9回)

2008年02月19日 11時24分05秒 | 丹沢の山旅

                 <塔ノ岳山頂からの富士山の眺望>

            残雪が深い塔ノ岳(第9回)
            2008年2月18日(月)

■長靴で登りたい・・・

 先週は山旅スクール主催に,仏果山,大洞山・大沢山縦走に参加していたので,塔ノ岳にご無沙汰してしまった。それに,15日の大洞山山行に参加してから,もう2日も,家でブラブラしている。その間に,何となく身体が鈍ってしまったような不安を感じる。
 何時ものように,4時頃起床する。天気予報通りに,今朝は放射冷却のためか,随分と冷え込んでいる。いくら山好きでも,こんなに寒い日,しかも暗い内に外出するのは億劫である。暫くの間,塔ノ岳へ行くか,止めるかで迷い続けるが,4時30分頃,遂に意を決し,出掛けることにする。
 この所の山行は,山旅スクール主催なので,愛用している長靴を履いていく訳にもいかない。しかも,6本爪のアイゼンを持参せよとの連絡を受けている。わたし的には,丹沢周辺の山ならば,4本爪のアイゼンの方が良いなと思っているのだが・・・今回は自分勝手な山行である。だから長靴と4本爪アイゼンで登ろうと思う。
 5時10分に家を出る。寒い!
 この頃は,朝,明るくなるのが大分早くなり,大船6時04分発静岡行の電車に乗る頃には随分と明るくなっている。こんなことからも春はもうすぐだなと肌で感じる。大船から東海道本線で小田原へ。平塚辺りで朝日が車内に射し込んでくる。小田原で小田急電鉄に乗り換えて,7時07分頃渋沢に到着する。そして,定番の大倉行2番バスに乗車する。

■顔なじみのXさん
 今日はどういう訳か,2番バスに乗っている登山客は,ほんの3~4人しか居ない。その中の1人は,顔馴染みのご常連さん,三角鼻髭のXさんである。
 Xさんは町田に住んでいる。何時も1番バスに乗って塔ノ岳に登っている。私は,30分後の2番バスである。先に登り始めたXさんとは,花立山荘から金冷しの間で,何時もすれ違う。そのことから類推すると,Xさんは大倉尾根を2時間程度で登っていることになる。
 「おや・・今日は遅いですね」
とXさんに挨拶する。
 「いやぁ~,,,寒むくって・・今日は遅くなっちゃいました・・」
Xさんは私の長靴を見て,早速,長靴の履き具合が話題になる。
 「・・・長靴は,一長一短ですね・・・」
と,私はこれまでの経験をお話しする。
 Xさんと,とりとめもない雑談をしている内に,終点大倉バス停に到着する。Xさんは三ノ塔へ登られるというので,ここでお別れする。
 私は軽くストレッチをしてから,7時40分に大倉を歩き出す。

■全く人影がない
 雲一つない明るい青空が広がっている。風もなく絶好の日和である。私は浮き浮きした気持を押さえながら歩き出す。足元は,このところの好天続きで,良く乾いているので,歩きやすい。今日は登山客が少ないので,最初から私の前後には人影がない。
 ラップタイムを取りながら,登山口,克董窯,丹沢ベース,観音茶屋を通過する。この辺りまでのラップタイムは,毎回1分と狂わないから不思議である。
 8時15分に見晴茶屋を通過する。前回(2月5日)は,この辺りから雪道になっていたが,今日は道端に霜柱が立っているものの,登山道には全く雪はない。ただ,おびただしい足跡が,そのままゴツゴツと凍結している。
 一本松までの坂道を登る。前後に全く人影がない。眩しいほどの朝日が降り注いでいる。明るい日光を浴びながら,ユックリとしたテンポで登り続ける。これが何とも気分がよい。一本松を過ぎると日陰の道になる。ここには,まだ大量の残雪がある。踏み固められた根雪が凍結していて,かなり滑りやすい。
 やがて,なだらかな尾根道になる。融雪が昨夜の内に凍結したためか,かなり広い範囲にわたってツルツルな氷になっている。いつもならば,この辺りの尾根道は,フルスピードで歩くところだが,今日は転倒しないように気を付けながら,慎重に歩き続ける。

■凍結した尾根道
 やがて,駒止山荘手前のトラバース道に差し掛かる。山荘の直ぐ手前は,杉林に囲まれ,日陰で急な登り坂になっている。踏み固められた根雪が凍結していて,とても滑りやすい。先日も,4人連れのグループが,ここで四つんばいになって,困っていた。
 8時43分に駒止茶屋を通過する。
 直ぐに,なだらかなトラバース道になる。ところが,日中溶けた水が夜中の内に真っ平らに凍結しているところが所々にある。今回は時間を掛けて慎重に歩き続ける。
 途中,何時も富士山を撮影する定点で,今回も富士山の写真を撮る。今日は真っ青に晴れ渡った空に,真っ白な富士山がクッキリと見えている。この冬,一番の美しい姿である。シメ,シメ,と思いながら,写真を何枚も撮りまくる。東側には三ノ塔周辺の山がクッキリと聳えている。
 堀山を過ぎると,日陰の下り坂になる。ここには表面がツルツルになった残雪が分厚く残っている。転倒しないように注意をしながら,ここを通過する。
 下り坂が終えると,また少しの間,水平な尾根道が続く。その後,登りのトラバース道になる。この辺りは日陰になっているので,硬く凍結した根雪がしつこく残っていて,とても滑りやすい。ヒョッとしたら,ここが大倉尾根最大の難所かもしれない。
 このトラバース道を登り切って,9時01分に堀山ノ家を通過する。

                  <今日の萱場平の残雪>

■女性と長靴談義
 堀山ノ家から先は,日当たりの良い岩稜帯になる。岩陰には残雪が凍結しているところもあるが,まあまあ歩きやすい。
 上から12本アイゼンを,右手にぶら下げたまま,降りてくる男性とすれ違う。登山学校では,絶対にアイゼンをぶら下げたまま歩くな,必ずリュックに仕舞いなさいと厳しく指導されている。もし転倒して,手で持っているアイゼンで怪我をしたら,どうするんだろうと気になるが,注意して叱られるのも厭なので,そのまま見過ごしてしまう。
 坂の途中で,私の先を登っていた中年の女性に追いつく。追い越そうか,それとも,足場の良いところまで,暫く追い越すのも待とうかと迷っていると,気配を察してか,女性が,
 「どうぞお先へ・・・」
と道を譲ってくれる。
 「済みません・・・ではお先に失礼します」
と私は女性の前に出る。
 私の長靴姿を見て,女性が私に話しかける。
 「長靴の履き具合はどんなですか・・・山小屋の皆さんは良く長靴を履いていますが・・・」
この女性が楚々とした美形だったので,私も,ついつい,暫くの間,長靴談義をする。最後に,
 「尊仏山荘のHさんに聞いたら,いろいろ教えてくれますよ・・・」
とコメントして,先を急ぐ。
 山頂方面から,両足を丸出しにしたご常連が走り降りてくる。素足にスパッツを付けている。何とも珍妙な出で立ちである。何時もより随分と下の方ですれ違う。
 「今日は,今日は随分と早いですね・・」
ついで,墨染めの巡礼姿の坊さんとすれ違う。坊さんも何時もより随分と早い。

              <残雪の花立山荘:ここから先は完全な雪道になる>

■富士山と南アルプスがとても綺麗に見える
 9時41分に花立山荘を通過する。この辺りからは完全な冬道になる。1週間前に比較すると,大分雪の量は少なくなっているが,それでも階段は,ほぼ雪に覆われてしまっている。ただ,雪が日中溶け出すこともないらしくて,踏み固められているものの随分と歩きやすい。厚い雪に覆われた岩稜帯は,返って歩きやすい。
 やがてコルの上に出る。ここから見る今日の富士山は,正に絶景である。やや紫色がかった青空に真っ白な富士山が見えている。小さな岩肌までクッキリと見えている。その右手には,手に取るように,南アルプスの山々がクッキリと見えている。これまで,ここから,南アルプスをこんなにクッキリと見たのは,初めてのような気がする。
 コルの上の木道は,相変わらず深い雪に覆われている。ここからのヤセ尾根道も,まだ深い雪に覆われている。金冷し手前にある小さな下り坂が滑るのではないかと気になっていたが,アイスバーンにはなっていないので,意外に歩きやすい。

               <塔ノ岳山頂から南アルプスを望む>

■だれも居ない尊仏山荘
 9時56分に金冷シを通過する。残雪はますます深くなる。階段は完全に雪の中である。山頂直下の急坂は,アイゼンなしでは,さすがに登りにくい。踏み跡とスプーンを選びながら,慎重に登り続ける。そして,10時11分に塔ノ岳山頂に到着する。
 大倉からの所要時間は,いくら雪道だとはいえ,2時間31分とは冴えない。
 山頂には誰も居ない。深い残雪の中に踏み跡道がついている。山頂から富士山,南アルプス,大山などの展望を写真に収めてから,踏み跡を辿って,尊仏山荘に入る。
 先客は誰も居ない。山荘のオーナー,Hさんが,机に座って新聞を読んでいる。早速,300円也のお茶を所望する。山荘の寒暖計によると,10時15分現在の山頂の気温はマイナス6.4℃である。
 営業部長のミー君は,コタツに潜っているのだろうか,一向に姿を見せない。
 「2番バスには,登山客らしい人は3人しか乗っていませんでしたよ・・・」
 「そうですか,1番バスも人が少なかったようですよ・・・」
とHさんは首を傾げる。私が,
 「・・・ところで,鍋嵐には,もう登りましたか・・・」
と質問する。Hさんが近々鍋嵐に登ると言っていたので伺ってみた。
 「いえ,まだです。暖かくなると,ヒルが出るので,行くなら今の内なんですがね・・」
 山荘の窓越しに山頂付近を見ていると,チラホラと登山者の姿が見え出す。
 私は,
 「今日は,雪もあって,登りに2時間31分も掛かっちゃいましたよ・・・」
と愚痴る。すると,
 「でも,まあ,早い方ですよ・・」
とHさんが慰め顔で答える。
 その内に,電話のベルが鳴り出す。Hさんが番台から中に引っ込んでしまう。山荘には私以外に規約が居ない。1人でこんなところに座っていても仕方がないので,山荘の奥の方に,
 「ごちそうさまでした・・」
と大きな声で挨拶をして,山荘を出る。

■下山開始
 山荘の外のベンチに腰掛けて,長靴に4本爪アイゼンを装着する。軽登山靴に比較して,アイゼンの装着具合は今ひとつ。
 10時35分に下山を開始する。雪の中の下山である。どうせ,12時22分のバスに間に合わないのなら,12時52分のバスに合わせて,ユックリと下山しようと決める。
 急坂の下りは,結構,厳しい。転倒しないよう,山旅スクールのサンダーウエスト氏に教わった雪道の歩き方を思い出しながら,慎重に下り続ける。
 金冷シ付近で,下から登ってくる女性とすれ違う。
 「おや・・もう,下山ですか! 随分とお早いですね」
と私に話しかける。知らない女性に,いきなり話しかけられて,ビックリするが,直ぐに,先ほど長靴談義をした女性だと気が付く。
 また暫く下り続ける。
 今度は,カメラをぶら下げた中年の男性とすれ違う。
 「flower-hillさんですか?」
と,いきなり話しかけられる。flower-hillと聞いて,本当にびっくりしてしまう。
 「私,ブログでコメントさせて頂いた北××に済む○○です・・・やっぱり,flower-hillさんは速いですね」
 「いつも,コメント有り難うございます。これからも宜しく」
 「また,コメントさせて頂きます」
 そういえば,○○さんの本名を伺ったのに,私の方から自分の本名をお知らせしていなかったことに,後から気が付く。後の祭り。

■無謀だよ
 4本爪のアイゼンも,なかなか威力を発揮する。途中,雪や氷のないところも随分とあったが,結局,一本杉手前まで,アイゼンを装着したまま下山する。今日のようにアイスバーンと泥道が混在しているところでは,6本爪アイゼンより4本爪アイゼンの方が扱いやすいなと,つくづく思う。4本爪なら,そんなに気にせずに雪のないガレ道を歩くことができる。
 11時50分,駒止茶屋を通過する。茶屋のベンチで休んでいる男女2人に呼び止められる。
 「ここから先,アイゼンがないと歩けませんか」
と私に聞く。
 「雪道の経験があれば,登りはアイゼンなしで行けますよ・・でも,下りはアイゼンなしでは,ちょっと大変ですよ」
と答える。伺うと2人とも,アイゼンを持参していない。私は心の中で「なんと無謀な」と呆れる。
 「無理をされずに下山された方が宜しいと思いますよ・・」
と忠告する。
 杉林の中の道を下り続ける。リスが「ヘッ,ヘッ」と声を立てている。
 そういえば,前回の登山の時も気になったが,アイゼンやスパッツを左右逆に付けている人が意外に多いのには驚いている。左右逆だと引っかける危険があるので,本当は注意してあげるのが良いのだろうが,叱られそうなので躊躇する。

■無事帰宅,水戸黄門を楽しむ
 ノンビリと下って,予定通りに,12時49分にバス停大倉に到着する。水道で長靴を洗って,12時52分の渋沢行きのバスに乗車する。一緒に乗車した登山客は,わずかに2名だけである。
 下山を終えて,バスに乗ったときの気分は最高である。この開放感に浸りたいから,性懲りもなく,塔ノ岳登頂を繰り返しているとも言えよう。
 その後,順調に乗り継いで,14時半頃,帰宅する。
 山に着ていった物を全部着替えて,すぐさま洗濯をしてしまう。
 そして,16時からテレビの水戸黄門を楽しむ。

[ラップタイム]

 7:40  大倉歩き出し
 7:45  登山口
 7:49  克董窯
 7:53  丹沢ベース
 8:00  観音茶屋
 8:04  分岐
 8:14  雑事場ノ平
 8:15  見晴茶屋
 8:29  一本松
 8:43  駒止茶屋
 8:53  堀山
 9:01  堀山ノ家
 9:18  戸沢分岐
 9:20  萱場平
 9:41  花立山荘
 9:56  金冷シ
10:11  塔ノ岳山頂 着
=====================================
10:35  塔ノ岳山頂 発(-6.4℃)
10:47  金冷シ
10:59  花立山荘
11:16  萱場平
11:18  戸沢分岐
11:32  堀山ノ家
11:41  堀山
11:50  駒止茶屋
12:04  一本松
12:17  見晴茶屋
12:19  雑事場ノ平
12:28  分岐
12:31  観音茶屋
12:38  丹沢ベース
12:42  克董窯
12:44  登山口
12:49  大倉 着

[山行記録]

■登攀・下降高度
  1201m
■水平移動距離   6.5km
■登攀所要時間
  大倉発      7:40
  塔ノ岳山頂着  10:11
  (所要時間)  2時間31分(2.52h)
 登攀速度
   1,201m/2.52h=476.6m/h
■下降所要時間
  塔ノ岳山頂発  10;35
  大倉発     12:49
  (所要時間)  2時間14分(2.23h)
 下降速度   1,201m/2.23h=538.6m/h
                           (おわり)


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2 コメント

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お会いできて嬉しいです (flower-hill_2005)
2008-02-20 07:20:26
諸澤さん
コメント有り難うございました。
また,先日は,偶然,お目にかかれて,大変嬉しかったです。

言われてみれば,確かに私の長靴には名前が書いてありました。

ラップタイムは,ご指摘の通り,いつも取っておりますが,自分の体調を見るのが目的で,別に速く歩くことを,目的としていませんので,どうぞお気軽にお声を掛けてください。

また,お目にかかれることを楽しみにしています。

なお,北鎌倉周辺でも,いろいろなところを歩き込んでいますので,こちらの方でも,情報交換をさせていただければ幸いです。

また,当ブログにお越し下さい。
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お会いできて光栄です (諸澤洵)
2008-02-19 22:36:24
flower-hillさん、こんにちは。北鎌倉なま情報局を運営している諸澤です。

昨日はflower-hillさんにお会いできて光栄です。

もっと長くお話ししたかったのですが、flower-hillさんはタイムを記録しているようなのでこちらから切り上げました。

樹氷が見れなくてとても残念です。
実はあの大雪の翌日も塔ノ岳に登ったのですが、やはり樹氷は見られませんでした。

私は週に1度しか休みを取れないので、もう今年は無理かもしれません。
あとはflower-hillさんのブログで楽しむほかなさそうです。

> そういえば,○○さんの本名を伺ったのに,私の方から自分の本名を
> お知らせしていなかったことに,後から気が付く。後の祭り。

大丈夫です。長靴にちゃんと書いてありましたから(笑)。

またいつかお会いできたらと思っています。それでは。
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