ゆったりヒヤヒヤの塔ノ岳(2)
(トドさんチーム)
2007年6月6日(木)
(つづき)
■堀山ノ家
駒止茶屋で一休みした後,9時35分に歩き出す。直ぐに急勾配の階段道が続く。この階段道をユックリと登り続けるが,どうしても登る速度が速くなりがちである。Tさんが先頭を行く。その後に付いた私はSUUNTOの高度計を見ながら,登攀速度が時速400メートルを超えそうになると,
「ゆっくり歩きましょう・・」
と声を掛ける。Tさんは多分「うるさいやつだな・・」と思っているかも知れない。
急坂が一段落すると,緩やかな尾根伝いの道になる。進行方向右手には,木の間から,三の塔,烏尾山などの表尾根の山々が見え隠れしている。そして,左側には鍋割山方面の山々が良く見える。ただ残念ながら富士山は雲に覆われていて全く見えない。
どこからともなく,「ボー,ボー」というツツドリの啼き声が聞こえてくる。
9時51分に堀山(930m)を通過する。この辺りでは小さな上り下りが2回繰り返す。そして,やや急な登り坂を進んで,10時06分に堀山ノ家(940m)に到着する。晴れていれば,ここから見事な富士山が見える筈だが,今日は全く見えない。ここで,5分ほど休憩を取る。
<堀山付近から箱根方面を望む>
■戸沢分岐
10時11分に堀山ノ家を出発する。Flower-hillが単独で登っているときには,もうとっくに塔ノ岳山頂に到着して,お茶を楽しんでから,下山を始めている時間である。あらためて,
「今日は,ヤッパリ遅いな~ぁ・・・」
と実感する。
狭いヤセ尾根を通り抜けると,いよいよ急傾斜の岩稜地帯になる。暫くの間,ジグザグ道が続く。この辺りから花立山荘までの急坂が,大倉尾根の核心部である。ここを登り切って花立山荘に辿り着けたら「万歳!」である。
その内に,ユックリした登攀速度に焦れったくなったのか,同行のIさんが,数10メートルほど,Tさんの先に出る。私は内心で,出発前に,
「最も足の遅い方の前に出ないように歩いてください・・・」
と,あれほど口酸っぱくお願いしたのに守ってくれないことに,とても不安感を持つ。そして,何時,注意しようかと戸惑っている。
Iさんは10~20メートルばかり先へ進むと,振り返ってTさんが登ってくるのを待っている。でも私は,
「速く登るならば,次の機会にご一緒しますから,今日はユックリ歩きましょう・・」
と諭すのが精一杯である。
Tさんは目を剥き出すような勢いで頑張る。少し先を行くIさんを見て,
「ああして,待っていられると,焦っちゃうよ・・・」
と思わず愚痴を言う。Iさんに悪げがあるわけではないが,団体行動をするときには,もう少し細心の心遣いをして欲しいなと思う・・・が,添乗員でもない私には,とても面と向かって注意することはできない。
10時36分に漸く戸沢分岐(1100m)に到着する。私はTさんに,
「ここで休みますか,それとももう一寸登ると広場がありますが,・・・そこまで行って休みますか・・・」
と伺ってみる。Tさんは「広場まで行きましょう」と言う。実に心強い。
■花立山荘
10時40分,広場(1105m)のベンチに倒れ込むように座る。ここで6分ほど休憩を取り,10時46分に出発する。平坦な道を少し進むと,すぐに急な登り坂になる。暫くの間岩稜帯が続いてから,いよいよ長い急な階段道が始まる。振り返れば素晴らしい見晴らしが楽しめるはずだが,今日は厚い霧に覆われていて何も見えない。それに,Tさんには風景を楽しむゆとりもなさそうである。
一同,階段の途中で何回も何回も立ち止まりながら,一段,一段,粘り強く登り続ける。そんな姿を見ていると,「凄いな・・・」と思う。
「あそこに頭が曲がった棒が見えるでしょう・・・あそこが花立山荘ですよ」
と皆を勇気づける。そして,元気なIさんに,花立山荘まで先に登って待ってて下さいと言うが,結局,Iさんも私達と殆ど一緒に登っていく。
11時20分,ようやく花立山荘(1290m)に到着する。山荘前の広場には,ほとんど人気がない。晴れていれば聳えるように見える富士山は濃い雲の中である。ここで6分ほど休憩を取る。
<山肌に映える・・・>
■塔ノ岳山頂へ
11時26分に花立山荘を出発する。ここまで登れれば,塔ノ岳登頂は,もう時間の問題である。私は少なからず「ホッ」とする。
広い階段道を暫く登ると岩稜地帯に入る。そして見晴らしの素晴らしい台地に到着する。残念ながら,今日は,厚い霧に覆われていて何も見えないが,天気ならば富士山から南アルプスまでの素晴らしいパノラマが見えるところである。本当に残念!
<深い霧に覆われた山肌:晴れていれば南アルプスが見える>
この辺りから,霧の中で目に染みるように鮮やかなミツバツツジが沢山咲いている。 やがて登山道は少し下り坂になる。そこを通過すると,平らなヤセ尾根道が続く。そこから階段を数段登って,11時50分に金冷し(1360m)を通過する。金冷しから暫くの間は,なだらかな登りが続く。やがて木道のある水平な道になる。この辺りの登山道の両側には,満開を少し過ぎたばかりのミツバツツジが雑木の間にチラホラと見え隠れする。
<金冷やし付近で>
やがて,頂上直下の急な階段道に差し掛かる。私は,
「ここが最後の難所です・・・でも,もうすぐそこが山頂です。ユックリ登りましょう・・・」
と勇気づける。階段道を登り詰めて急角度に左折すると,目の前に木製の立派な階段がある。この階段を登りさえすれば頂上である。最後の力を振り絞って「ウンコラサ,ウンコラサ・・」と登る。そして,12時13分,遂に塔ノ岳山頂(1465m)のポールにタッチする。私は同行者と握手をする。そして,
「万歳!・・・」
一同,ポールの前で記念写真を撮る。
■尊仏山荘にて
尊仏山荘に入る。一人旅で登っているときよりも,今日は,2時間半近く遅い到着である。何時もならば,今頃は,丁度,大倉へ下山している時間である。
「今日はお嬢様方と一緒に登ってきました・・・ユックリ登ってきましたので,少々,遅くなりました・・・・」
と小屋番のOさんに挨拶する。私は例によって,300円也のお茶を所望する。
12時20分現在,山頂の気温は+16.5℃。風もなく暖かい。
小屋には先客が1人居る。私達の雑談をニコニコしながら聞いている。
「今日は『ネコちゃん』は居ないんですか?・・・」
と私が小屋番に聞く。すると,小屋番がビニール袋を手でこね回しながらガシャガシャと音を出してネコを呼ぶ。この音を聞いた看板ネコ「ミー君」が,2階からスタスタと降りてくる。そして,土間にチョコンと座る。この姿が実に良い。私は,
「ネコちゃん・・・,ジッとしていて・・・」
と制しながら,数枚の写真を撮る。
「3年ぐらい前までは,10日ぐらい帰ってこないで,大倉辺りまで行くことがありましたよ・・・」
と,小屋番のOさんは得意げにネコのエピソードを披露する。
<今日のミー君>
そうこうしている内に,太股から下を丸出しにしたご常連が小屋に入ってくる。彼はサラリーマンだが,尊仏山荘の強力もやっている。この方は無類のネコ好きである。早速ネコの背中を撫でている。私は彼に挨拶しながら,
「今年になって,もう100回ぐらいは登りましたか・・・」
と伺う。彼は小屋の日誌に何か書きながら,
「もう,百××回ですよ・・・今日1日で3往復です・・」
とのことである。とにかくこの方は凄い。暫くして,彼は空になったプロパンボンベを背負って下山していく。
「普通の人があんなに登ったら死んじゃいますよ・・・」
と小屋番も呆れている。
この小屋のご常連には,大倉尾根を1時間台で登ってくる方が沢山居る。
「・・・速く登ってくる人ほど,『速く登った』って,自慢するんですよ・・・だから,私は速い人を褒めることなしていませんよ・・・」
と小屋番が言う。
私達は,それぞれが注文したコーヒーやお茶を飲みながら昼食を摂る。今日は家庭の主婦が中心のチームである。皆さんそれぞれにキュウリの漬け物,プチトマトなどを持参している。握り飯以外何も持っていないのは私だけである。私は,もっぱらご馳走になるばかりで恐縮する。
■ちょっと寄り道
尊仏山荘の小屋番の進めもあって,丹沢山に向かって少し下ったところまで行って,ミツバツツジを見ることにする。山荘を出て急な階段を少しばかり下る・・・が,同行者の1人が,この階段をまた登り返すのは辛い,それにもう今日は途中でミツバツツジを見たから,もう先へ下りたくないと言い出す。
「それでは先へ下るのは止めましょう」
ということになり,すぐに塔ノ岳山頂へ引き返す。
山頂に戻ると,先ほどより霧が少し薄くなっている。眼下に,ユーシンや同角山稜が見通せる。だが,肝心の富士山は,相変わらず雲の中である。
<路傍の花>
■大倉尾根を下山
13時13分,私達は塔ノ岳山頂から下山を開始する。足下に気を付けながら,慎重に下り続ける。金冷し付近で,尊仏山荘のミー君がノソノソと歩いているのを見掛ける。こんな所まで歩き回っているのは驚きである。
13時55分に花立山荘まで下山する。幾分,雲が切れて,花立山荘前からは秦野付近の平野がボンヤリと見え始める。私は誰かが足が攣ったと言い出すのではないかと不安を持ちながら下山している。
花立山荘で5分ほど休憩を取る。その後,戸沢分岐(14時21分着)で5分,堀山ノ家(14時46分着)で5分,駒止茶屋(15時07分着)で8分,見晴茶屋(15時41分着)で2分休憩を取りながら下山し続けて,16時40分,無事,大倉に到着する。
下山中に,だれも転倒しなかった。
「やれやれ・・・やっと無事に下山できた・・! 良かった!」
というのが,私の率直な感想である。
バス停大倉付近の無人スタンドで,思い思いに野菜を購入する。大きな大根が2本で100円,ビニール袋に満載の生食タマネギやジャガイモが100円・・・兎に角安い。
所要時間は,登り4時間30分,下り3時間27分であった。計画通りの所要時間で,無事,大倉尾根を往復することができた(登り下り共に,私が1人で登攀・下降するときの所要時間の約2倍である)。
とにもかくにも,無事,予定通りに塔ノ岳に登れた!
万歳!
それに,「やれやれ・・・やっと無事に下山できた!」という安堵感・脱力感!
単独山行に比較すると,気分的にシンドイ・・・シンドイ・・・
[ラップタイム]
7:43 大倉歩き出し
↓
8:12 観音茶屋
↓
8:31 雑事場ノ平(10分休憩)
↓
8:45 見晴茶屋
↓
9:35 駒止茶屋(8分休憩)
↓
10:06 堀山ノ家(5分休憩)
↓
10:40 戸沢分岐広場(6分休憩)
↓
11:20 花立山荘(6分休憩)
↓
12:13 塔ノ岳山頂 着
13:13 〃 発
↓
16:40 大倉着
■登攀高度 1201m
■登攀所要時間 4時間30分(4.50h)
登攀速度 1201m/4.50h=266.9m/h
■下降所要時間 3時間27分(3.45h)
下降速度 1201m/3.45h=348.1m/h
※所要時間は登攀・下降ともに休憩時間を含む。
(おわり)
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