<堀山の尾根からの富士山>
何となく気恥ずかしいブログの丹沢:塔ノ岳(今年9回目)
(単独山行)
2009年2月19日(木)
■朝,出掛けるのは辛い
本当は昨日(2月18日)に塔ノ岳詣でをするつもりだった・・・が,何となく1日遅れの今日になってしまった.
この所,晴天が続くので,明け方の放射冷却が厳しい.昨日も,水曜日のご常連,ヤマカガシ氏にも,久々に会いたかったので,早朝4時に起床,塔ノ岳へ行こうかと思った.でも,私の心の奥底に潜むもう一人の私(仮にハイド氏と呼ぼう)が,頻りに私の耳元で囁く.
「・・・何も,こんなに寒い日の朝っぱらから,出掛けなくても良いじゃないか.天気予報が明日も天気って言っていたよ.明日にしましょうよ・・・」
「う~ん・・・それもそうだな~ぁ,・・・こんなに寒い日に出掛けるなんて,やっぱりやめておこうか」
と気が弱い私は,すぐにハイド氏の誘いに乗ってしまう.
ハイドのヤツ,生来怠惰な私の耳元で,
“明日でも構わないことは,今日しない・・
明後日でも構わないことは,明日はしない・・
今日は,何もしないで,ノンビリ過ごせ・・“
と,まるで毀れたテープレコーダーから流れる念仏のように,私の耳元で繰り返す.私は心が弱いので,ついついハイドの言うことに釣られてしまう.
今朝(翌,2月19日の朝),例によって,塔ノ岳に登るつもりで,4時に起床する.今日こそは,ハイドの誘惑には乗らないぞと,心に強く念じて,「えい,やっ!」と,5時10分に家を出発する.
■大倉を歩き出す
外に出ると,やっぱり寒い.
つい1週間前までは,家を出る頃には月が煌々と輝いていた.でも,今日は月は姿をいせず,憂鬱になるほど,未だ暗い.それに晴天続きなので,放射冷却がひどくて,やたらに寒い.それでも,この頃は大分朝が早く明けるようになっている.電車が相模大野に着く頃には,朝日が昇り始めている.
渋沢発大倉行2番バスの乗客は全部で11人.その内,2人は途中のバス停で下車する.残り9人が終点の大倉で降りる.その内,1人は,この辺りの施設に勤務する方である.従って,残り8人が今日の登山者である.この中には,ご常連のNさんが居られる.Nさんとは,先週も一緒だった.その他にも,顔に見覚えのある女性が1人居る.
Nさんと前後して,7時36分に大倉から歩き出す.偶然にも歩き始めた時間は,前回,2月12日と同じである.
今日の塔ノ岳は,前回から1週間,間が空いている.その間,ほぼ絶え間なく,鎌倉周辺の山行やハイキングを続けていたものの,急坂の上り下りが少なかったので,体力の衰えは確実である.歩き出してから早々に,今日の体調は余り良くないなと分かる.
■まあ,まあの体調のようだ
Nさんの出だしの歩行速度は,かなり速い.私には,とても,Nさんに付いていくだけの体力がない.そこで,Nさんには先に行って貰うことにする.
この所の好天気続きで,路面は乾いている.登山道の条件は良さそうである.
今朝は寒いものの,前方に広がる表尾根から櫟山につながる稜線には,霜や残雪は全くなさそうである.登山道の雪は完全に消えているに違いないと予想する.
私はNさんから50メートルほど後を,後から付かず離れずで,暫くの間,歩き続ける.
7時49分,丹沢ベースを通過する.前方を歩いていたNさんが,ここで衣服調整をしている間に,私はNさんの先に出る.そのまま,同じペースで,登り続ける・・・が,また,ハイド氏が調子に乗って,私を煽る.
「折角だから,もっと速く歩いたら・・・ひょっとすれば,塔ノ岳山頂まで2時間10分程度で行けるかもしれないよ・・・」
善良な私は,けしかけられると,ついつい乗ってしまいそうになる.
私も,正直な所,できれば速く登ってみたいなという気持はある.それに前方に登山者が居ると,追い越してやろうという邪心が湧いてくる.でも,ここで,山旅スクールで習った登山の基本を思い出して,絶対に無理をしてはダメだと思い返す.そして,やっとの思いで,ハイドの誘いを無視する.
私は自分の両脚に,
「今日の調子はどうだい・・」
と伺う.両脚は,
「・・今日は,一寸,重い感じだよ.あまり急がないで・・・」
と弱気である.
■駒止茶屋
私は,両脚をなだめながら歩き続ける.
心なしか,前回,2月12日に比較すると,両脚に余裕がない.駒止茶屋直前の登り坂で,両脚が悲鳴を上げそうになる.私は一段と登攀速度を落として,階段道を登り続ける.
8時35分に駒止茶屋を通過する.少々疲労を感じるが,大倉からの所要時間は,前回とピッタリ同じ時間である.歩き始めてからここまで59分.やや疲労感はあるものの,僅か1分とはいえ,1時間を切っている.毎回,59分になるのが面白い.まるで歩行機械のようである.
「・・俺はロボットになっちゃったのかな・・」
と不思議にな気分になる.
■富士山が良く見える
やがて,堀山の尾根に出る.富士山が良く見えている.ただ,富士山の上空に雲が棚引いているのが残念である.私は見晴の良い所で足を止めて,富士山の風景をデジカメに収める.
デジカメの液晶画面に,電源の乾電池が残り少ないと警告するサインが点滅している.気温が低いので,乾電池の起電力が下がっているようである.私はデジカメを懐に入れて暖めることにする.ただ,余り長く懐に入れていると,デジカメの筐体が結露した汗で濡れてしまうのが心配である.
■凍てつく萱場平
8時50分に堀山ノ家を通過する.この辺りまで来ると,私の前後に,登山者の姿は全く見えない.ただ,私よりほんの数分遅れで,Nさんが歩いていることだけは確かである.全くの一人旅となると,私の心の中のハイド氏は居眠りを始めるらしくて,何も言わずに静かである.
この辺りの尾根道は平坦なので楽に歩ける.両脚も文句は言わない.
やがて,急な岩稜の登り坂になる.登りながら,前回よりは体力に余裕がない感じがする.私は両脚の様子を見ながら,速からず遅からずの速度を守る.
9時06分,萱場平に到着する.路面の泥が凍り付いている.無数の踏み跡が,そのまま凸凹に固くなっている.今日は寒いので,帰りの時間でも,凍結したままでと願いながら通過する.
前回と同じように,もしや「ネコのSさん」が,ベンチに座っていないかなと期待する.でも,今日は姿が見えない.
萱場平を過ぎて,岩稜地帯に入る.そのとき,頭の上からダダダ・・と降りてくるご常連のYさんとすれ違う.軽く挨拶するだけで,お話をする合間もない.
<今日の萱場平>
<まるで雷のようにYさんが下る>
■花立山荘
ここまで来れば,先が見えている.もう10数分登れば花立山荘である.花立山荘まで辿り付けば,気分的には,もう山頂に登ったのも同じである.何回もバカ尾根を往復している内に,バカ尾根がだんだんと短く感じられるようになるから不思議である.
私は自分の心臓に,
「どうだい? 今日の調子は・・・?」
と聞く.すると,心臓は,
「うん,まあ・・・まあだな.心拍数は80位かな?」
と呑気なことを言う.
余談になるが,本川さんという先生が,面白いことを言っている.先生によると「ゾウさんも,ネコもネズミも(人間も),心臓はドッキン,ドッキンと,一生の間に,15億回打って止まる・・」という(本川,1996,pp.55-59).
もし,そうだとすれば,山に登らなければ,毎分60回程度で済んでいる脈拍が,なまじ山へ登っているばかりに80回以上に増えている.一生の間に15億回打って止まるんだったら,山へなんか登らない方が得ではないか・・・なんて,妙なことを考えながら登り続ける.
考え事をしながら,気が付くと花立山荘に到着している.9時26分である.今日の堀山ノ家から花立山荘までの所要時間は36分.私の場合,35分を標準としているので,1分ほど余計である.
振り返って見下ろすと,遙か下の階段をNさんが登っている.時間差にして3~4分ほどだろうか.
■ご常連のTさん
花立場からの登り坂を8分ほど登って花立場に到着する.ここからの富士山と南アルプスの眺めは最高である.今日は上空に多少雲が掛かっているものの,素晴らしいパノラマが展開している.例によって,私はここでも数枚の写真を撮る.ここからの風景を見ていると,やっぱり,今日,塔ノ岳に来て良かったなと嬉しくなる.
花立場を過ぎて馬ノ背に向かう.途中,ご常連のTさんとすれ違う.私は,
「こんにちは,今日は寒いですね・・」
と挨拶する.Tさんが,
「・・・今日の山頂はマイナス4℃でした.でも一昨日はもっと寒くてマイナス8℃ほどでした・・」
という.つづいて,私に質問する.
「・・・Hさんという方,ご存じですか・・・貴方のブログを読んでいるそうです.貴方に会いたいと言っていましたよ.貴方に宜しくとのことですよ・・・」
私は,Hさんという方には面識がないが,私の拙いブログを読んで頂けるとは,嬉しいことである.
<山頂からの富士山>
■塔ノ岳山頂
9時39分に金冷シを通過する.花立山荘からの所要時間は13分,何時もは12分である.Tさんと雑談していた時間だけ,何時もよりほんのちょっぴり遅くなっている.記録とは正直なものである.
気が付くと,今日は,私の前後には誰も居ない.すれ違ったのもご常連3人だけである.私の前に登山者が居ると,ついついジェキル氏に急かされて,追い抜きたくなる.今日は前方に誰も居ないので,ユックリ落ち着いて登ることができる.
9時53分,塔ノ岳山頂に到着する.山頂には誰も居ない.冷たい風が吹いている.私はデジカメをポケットから出して周囲の写真を撮ろうと思う.所がデジカメを懐で暖めていたのに,電池が寒さでヘタっている.しょうがないなと思いながら,新しい電池と交換する.もたもたした後,彼方此方の写真を撮り続ける.怪しい色の雲が富士山に掛かりそうになっている.
そろそろ,Nさんが山頂に到着する頃である.どうせならNさんと一緒に尊仏山荘にゴールインしようと思う.少々寒くて待つのが辛いが,我慢してNさんの到着を待つ.その間,寒風が山頂を吹き抜けていく.
<塔ノ岳山頂から南アルプスが見える>
■尊仏山荘
ほどなくNさんが山頂に到着する.一緒に尊仏山荘に入る.
今日の小屋番は,オーナーのHさんである.ネコは,隣の小屋の2階で昼寝をしている.山頂の10時少し前の気温はマイナス5.4℃.やっぱり寒い.先客は2~3人,何れもご常連らしい.
オーナーのHさんが,私に話しかける.
「・・・九州の知人が,flower-hillさんのブログを読んでいるそうです.もっと丹沢のことを書けっていっていましたよ・・・」
有り難いことである.それにしても,今日は私のブログのことが,2回も話題になる.嬉しいことである.序でに私がオーナーのHさんに伺う.
「・・・そういえば,さきほど,Tさんから,やっぱり私のブログを見て居られるHさんという方のことを伺いましたが,男性ですか,女性ですか?」
「女性ですよ.flower-hillさんは,会ったことないと思いますよ・・」
その後,2番バスに何人乗っていたかという慣用句が出る.
暫くして,私は,下山の準備を始める.折角,苦労して山頂まで来たのに,何でそんなに急いで下山するんだと自問自答する.それにしても,何のために,私は塔ノ岳に登っているんだろう・・・という疑問が,またまた頭をもたげてくる.
<隣の小屋の2階で昼寝する営業部長>
■ネコとシカ
10時27分頃,尊仏山荘を出る.隣の小屋の2階で日向ぼっこをしているネコの背中が窓越しに見えている.
「あいつの心臓も15億回,ドッキンしているんだな・・」
と思いながら,
「お~ぃ・・・ミャオや~・・」
と声を掛けてみる.忠実な僕(しもべ)のOさんの声ではないので,どうせ無視するだろうと思っていたが,何と営業部長は,私の声に反応して,物憂げに首をもたげ,こちらを見ている.私はすかさず写真を撮る.私は実感を込めて.
「お前さんは,本当に幸せ者だな・・・何の苦労もなしに,昼寝をして,したいまま,やりたいままの生活をしている・・・」
と無言でネコに話しかける.
山頂に大きな雄のシカが来ている.格好が良い.思わず写真を撮る.
ノンビリ下っている内に,後発のNさんに追いつかれる.大倉12時52分発のバスの時間に合わせて,ユックリ,ノンビリと下る.
<山頂の雄シカ>
[ラップタイム]
7:36 大倉歩き出し
7:55 観音茶屋
8:09 見晴茶屋
8:35 駒止茶屋
8:50 堀山ノ家
9:06 萱場平
9:26 花立山荘
9:39 金冷シ
9:53 塔ノ岳山頂着
===========================================
10:27 塔ノ岳山頂発(-5.4℃)
10:37 金冷シ
10:49 花立山荘
11:05 萱場平
11:16 堀山ノ家
11:34 駒止茶屋
11:59 見晴茶屋
12:12 観音茶屋
12:32 大倉
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀・下降高度 1201m
■所要時間
大倉発 7:36
塔ノ岳山頂着 9:53
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
登攀速度 1201m/2.28h=545.9m/h
水平速度 7km/2.28h=3.07km/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:27
大倉着 12:32
(所要時間) 2時間05分(2.08h)
下降速度 1201m/2.08=577.4/h
水平速度 7km/2.08h=3.37km/h
(おわり)
[参考文献] 本川達雄,1996『時間:静物の視点とヒトの生き方』NHKライブラリー,日本放送出版協会
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/ebb53f9e90f3136534b8da463168837a
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/568ab380d7a3099398eaad79a4f1fd7a
最新の画像[もっと見る]
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前