<雲海に浮かぶ表尾根>
燃えるような新緑の丹沢:塔ノ岳(今年25回目)
(単独山行)
2009年5月12日(火)
■爽やかな歩き出し
5月に入ってから,日毎に新緑が鮮やかである.5時10分に家から出発する.辺り一面にむせるような青葉の香りが漂っている.この所,日に日に夜明けが早くなり,まだ,5時を少し過ぎたばかりなのに,辺りは,もう,すっかり明るくなっている.
何時ものように,東海道本線で小田原に出る.電車が少々遅れ気味だったため,たった3分しかない乗換時間が,さらに少なくなる.私はもの凄い勢いでホームの階段を駆け上がり,さらに小田急電鉄のホームを駆け下りる.私が電車に飛び乗ると同時に,電車は発車する.急に激しい運動をしたので,息が切れる.塔ノ岳登頂以上に草臥れたような気がする.
渋沢発大倉行1番バスには10数名の客が乗車する.ご常連の韋駄天グループTさんや,もうすぐ登頂2000回のMさんも乗車している.
バスが大倉に到着すると,韋駄天グループのお二人は,直ぐに歩き出す.それから,少し間をおいて,Mさんも出発する.私は,どうしても応分のストレッチをしないと気分が収まらない.そこで,ストレッチを終えて,ご常連が出発してから数分後の7時03分に歩き出す.
■ご常連Mさんの歩き方を盗もう
今日は朝から気温が高い.歩き出すと直ぐに汗ばんでくる.ただ,上空には低い雲が立ち込めていて,陽ざしを遮っている.何時もならば,周囲に見えている丹沢の山々も白い霧の中である.登山口付近の路面は,ほんの少しだが濡れている.前方には,同じバスの乗り合わせた登山客が何人も見えている.
7時22分,観音茶屋を通過する.私は何時もの速度で登り続ける.雑事場ノ平手前のトラバース道で,先に歩き始めたMさんに追いつきそうになる.Mさんは登り坂に滅法強い方である.私はMさんの歩き方を盗もうと思い立つ.そこで,Mさんを追い抜かずに,Mさんから10メートルほど離れて,後を付けていくことにする.
見晴茶屋までの平坦な道に入る.何時もの私ならば,歩行速度を最大限まで上げて,ドンドンと進む所だが,今日はMさんの後を付けて,ユックリと歩く.
やがて,見晴茶屋を過ぎて,一本松までの急坂に差し掛かる.Mさんは平坦な道と同じペースで登っていく.随分と速い.この辺りにMさんの歩き方の秘密があるようだ.
一本松を過ぎて平坦な尾根道に入る.私はついつい歩行速度を上げたくなる.そこを我慢して,Mさんの後に続く.やがて,駒止茶屋手前の急な上り階段になる.Mさんは定速で登っていく.後を付けている私は息が上がりそうになる.
8時04分,駒止茶屋を通過する.歩き出してから1時間01分.平地を低速で歩いたにしては,そう悪くないラップタイムである.
■新緑の萱場平
堀山の尾根に到着する.周囲は深い霧に覆われている.わずか数日前に比較しても,登山道周辺の新緑がますます深くなっている.富士山は霧に隠れてしまい全く見えないが,尾根道には爽やかな風が吹き抜けている.とても心地よい.ついついルンルン気分で,前を定速で行くMさんとの距離が縮まりそうになるが,我慢をして,ユックリと歩き続ける.
8時20分に堀山ノ家に到着する.ここでMさんは小休止するようである.私は,Mさんに,
「・・・先にユックリ歩いています・・・」
とお断りして,堀山ノ家を通過する.
直ぐに露岩帯の急坂になる.私は登りながら,今日は全く疲労を感じていないことに気が付く.何時もより登攀速度を少し上げてみるが,汗も出ないし,足に疲労感も出てこない.
「・・先ほど平らな所をゆっくり歩いたからかな・・・Mさん効果かな・・」
と考えながら,登り続ける.
8時35分,戸沢分岐を通過する.そして,萱場平で,定点観測用の写真を撮る.萱場平を囲む林の新緑が一段と濃くなったようである.
<新緑の萱場平>
■花立山荘
何処からともなく,ツツドリの啼き声が木霊しながら聞こえてくる.ウグイスも盛んに啼いている.萱場平に続く急坂も,実に楽に登り続ける.何時もならば,登り切るのに7分ほど掛かる花立山荘手前の急な上り階段も6分で楽に登る.
今日の堀山ノ家から花立山荘までの所要時間は36分.前回,5月9日は38分,前々回は41分掛かっている.それに比較すれば今日は上出来のようである.
ここからの富士山の眺望は素晴らしいはずだが,今日は一面の雲で,富士山は全く見えない.
花立山荘を通り過ぎる.登山道の脇の小高い所で,白人の男女がテントをたたんでいる.こんな所でテントを張っている人など,始めて見るので,私はビックリする.すると,その様子を見ていたお二人が,笑顔で私に頭を下げる.
“Good mourinng, How are you today?”
と出任せの英語で返事をする.すると,
「お早うございます」
と日本語で返事が返ってくる.何だ,日本語ができるのかと思って,
「これから登るんですか?」
と聞くと,今度は日本語が通じない.「何?」と英語で私に聞き返す.私はちぐはぐな感じで,
“Going up, or going down?”
と英語で聞き返す.ほんの1分ほど,英語で雑談をする.どうやら彼らは丹沢山稜を越えて,ここで野宿をしたらしい.今度は,彼らが私に,きょう何処に泊まるのかと聞く.私は午前中に塔ノ岳を往復する予定と答える.
<妙な所にテントする白人二人連れ>
■素晴らしい雲間の富士山
ツツドリの啼き声を聞きながら,9時04分に花立場を通過する.花立山荘からここまでの所要時間は8分.ここも疲れているときは10分掛かる所である.
晴れていれば,この辺りから富士山や南アルプスが,とても良く見えるところだが,今日は一面の雲.しかし,目を凝らしてみると,眼下の谷間は白い雲で一杯なのに,花立場から上の方はこの雲の上にでている.ただ,上空の高い所には一面の雲が掛かっていて太陽を遮っている.その高い雲をバックにして,雪を抱いた真っ白の富士山が浮かび上がるように見えている.
「何という美しさだろう・・・」
私は真っ白な雲を背景に優雅に浮かび上がる神々しい富士山に,半ば畏怖の念を抱きながら,暫くの間見とれている.こうなると,もうラップタイムはどうでも良くなる.私は,暫くの間,立ち止まって,花立場で富士山を堪能する.
<茫洋の富士山>
■新緑が美しい鍋割山稜
9時09分,金冷シを通過する.直ぐに最初の長い登り坂になる.ここでも,全く疲労感がない.私は,随分と早足で坂道を登り続ける.1番目の坂道を終え,木道を下る.そして,塔ノ岳山頂直下の急な上り階段に差し掛かる.ここで,韋駄天組のTさん達とすれ違う.同じバスで来たのに,これだけ時間差ができてしまうのだから脅威である.
<新緑が美しい鍋割山稜>
■爽やかな塔ノ岳山頂
9時21分,塔ノ岳山頂に到着する.山頂には誰も居ない.そよ風が吹いている.今日の大倉から山頂までの所要時間は2時間18分.大倉から駒止茶屋までの所要時間に比較すると,案外の好タイムである.
「Mさんの歩き方を,もう少し研究する必要があるな・・・」
と私は自分に言い聞かせる.
相変わらず素晴らしい富士山が見えている.
<塔ノ岳山頂からの富士山>
■尊仏山荘:営業部長がノンビリ
周囲の写真を撮ってから,尊仏山荘に向かう.
入口付近でノンビリとした歩調で,別棟の方へ歩いていく営業部長,ミー君を見付ける.早速,写真に撮る.
「ミー君に会えて良かった!」
山荘に入る.先客は誰も居ない.今日の小屋番はオーナーのHさんとWさんのお二人.
9時30分現在の山頂の気温は+15.5℃.随分と高い.
300円也のお茶を所望する.Wさんと雑談しながら,窓越しの富士山を眺めている.特に面白い話題もない.
<営業部長がノンビリ>
■ローギャー氏,チャンピョンとすれ違う
そろそろ引き揚げようかと思っていると,ご常連の女性が入ってくる.何回も会っているが名前が分からない.続いて,2番バスで来たご常連Moさんが到着する.随分と早い.多分2時間ソコソコで登られたようである.
9時40分,尊仏山荘を出発する.山頂の登山客の人数が幾分増えている.
金冷シ手前で,2番バスのローギャー氏とすれ違う.
「今日は,風が涼しくて,気持ちが良いですね・・」
とローギャー氏が私に話しかける.
10時05分,花立山荘を通過する.急な階段で,大きな荷物を背負ったチャンピョンとすれ違う.
「・・ご苦労様です・・」
と私が挨拶すると,
「貴方も・・・毎日のように,ご苦労さんですね・・」
という返事が返ってくる.
■妙な初心者
岩稜帯を下っていると,両手にスキー用のストックを持って登ってくる60才代の男性が私に話しかける.
「・・・貴方,ストック使わないんですか?」
私がスタスタと下山してきたのを見とがめたらしい.私は,普段,ストックを使っていないことをお話しする.ストックを使うと身体が楽だから使ったらどうかと進言してくれる.
この男性,登山を始めてから,今回は3回目.これまで2回は途中で下山したが,3回目の今日は山頂まで目指すという.
「足元ばかり見ていると分岐を間違えるので,分岐の所にビニール袋に入れた石を置いてきました・・」
と妙なことを言い出す.
私は,急がば回れで,登山学校に通った方が良い.丁度,今日は山旅スクールのガイドが登ってくるから,相談したらどうですかと言ってお別れする.
10時29分,戸沢分岐を通過する.成る程,分岐点に小石を入れた白いビニール袋が置いてある.
<登山道に咲く花:名前は後日ジャイアンさんに伺う>
■山旅スクールの皆さんとすれ違う
10時40分,堀山ノ家を通過する.新緑が滴り落ちるような尾根道を,十分堪能しながら,時々,時計を見る.そして,11時52分のバスに間に合うように歩行速度を調整する.周辺の森では盛んにウグイスが啼いている.
木々の緑がますます深く濃くなってくる.まるで緑のトンネルの中を通っているようである.私はルンルン気分で緑陰の登山道を下る.
やがて,堀山の尾根道を通過して,10時54分に駒止茶屋を通過する.標高が下がるにつれて,木々の緑がますます濃くなってくる.平坦な道が終わって,11時08分,一本松に差し掛かる.10名ほどの集団が,妙な所で休憩を取っている.私は心の中で,
「こんな中途半端なところで休憩とは変なグループだな・・・ほんの少し登れば,ベンチのある平坦なところに出るのに・・」
と思う.リーダーがこの登山道を良く知らないのかな(失礼)と思いながら,通過する積もりだった.通過し終わろうとしたときに,私のリュックについている白いハンカチを見た誰かが,
「フラワーヒルさん・・フラワーヒルさんですか?」
と私に声を掛ける.この集団は山旅スクール11期の皆さんであった.私は新しいガイドの方のお顔を良く知らなかったので,山旅スクールの方々だとは思わなかった.
そうこうしている内に,良く存じ上げているKガイドと,フレンドリースタッフ(というよりは新ガイド)のIさんが別の集団とともに登ってくる.お二人は冬の槍ヶ岳へ行ったとかで,雪焼けして凄い顔になっている.
11期の方々が,次々に私に質問する.その中で,何時間で山頂まで登ったかという質問が多かった.私は,自分の体調を管理するために,他人と所要時間を比較することはしないようにしているが,ついつい2時間××分で登った・・・というような話になってしまう.話をしながら,こんな筈ではないのにと反省する.
<山旅スクール11期の皆さん:一本松付近にて>
■再びMさんと同じバス
11時13分,山旅スクールの方々とお別れして,再び下山を開始する.5分ほど雑談していたので,予定のバスの時間が厳しくなる.途中から半ば走るようにして下山を続けて,11時50分にバス停大倉に到着する.
早速バスに乗り込む.すると,同じバスにご常連のMさんが乗っている.私の顔を見ると,
「・・・お待ちしていましたよ・・・」
と言いながらニヤリとする.乗り合わせた登山客は私を含めて3人.
渋沢駅で,
「また,2~3日中に,(塔ノ岳に)来ます.宜しく・・」
と挨拶して.お別れする.
私は,明日,明後日は所用がある.従って天気さえ良ければ,金曜日辺りに,もう一度塔ノ岳に登ろうかと思っている.
[ラップタイム]
7:03 大倉歩き出し
7:22 観音茶屋
7:38 見晴茶屋
8:04 駒止茶屋
8:20 堀山ノ家
8:56 花立山荘
9:09 金冷シ
9:21 塔ノ岳山頂着
=====================================
9:49 塔ノ岳山頂発(+15.5℃)
10:05 花立山荘
10:40 堀山ノ家
10:54 駒止茶屋
11:08 一本松(11:13まで山旅スクール生と雑談)
11:25 見晴茶屋
11:35 観音茶屋
11:50 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀・下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉 発 7:03
塔ノ岳山頂 着 9:21
(登攀所要時間) 2時間18分(2.30h)
登攀速度 1202m/2.30h=522.2m/h
■下降所要時間(休憩時間込み)
塔ノ岳山頂 発 9:49
大倉 着 12:50
(下降所要時間) 2時間10分(2.17h)
下降速度 1201m/2.17h=553.5m/h
(おわり)
[加除修正]
2009/5/14 写真追加,文章訂正.
2009/5/18 文章訂正
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/945a2a89d6671bdaac5fa5395293e053
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/aa762a70165137370ac3eac996e98f93
燃えるような新緑の丹沢:塔ノ岳(今年25回目)
(単独山行)
2009年5月12日(火)
■爽やかな歩き出し
5月に入ってから,日毎に新緑が鮮やかである.5時10分に家から出発する.辺り一面にむせるような青葉の香りが漂っている.この所,日に日に夜明けが早くなり,まだ,5時を少し過ぎたばかりなのに,辺りは,もう,すっかり明るくなっている.
何時ものように,東海道本線で小田原に出る.電車が少々遅れ気味だったため,たった3分しかない乗換時間が,さらに少なくなる.私はもの凄い勢いでホームの階段を駆け上がり,さらに小田急電鉄のホームを駆け下りる.私が電車に飛び乗ると同時に,電車は発車する.急に激しい運動をしたので,息が切れる.塔ノ岳登頂以上に草臥れたような気がする.
渋沢発大倉行1番バスには10数名の客が乗車する.ご常連の韋駄天グループTさんや,もうすぐ登頂2000回のMさんも乗車している.
バスが大倉に到着すると,韋駄天グループのお二人は,直ぐに歩き出す.それから,少し間をおいて,Mさんも出発する.私は,どうしても応分のストレッチをしないと気分が収まらない.そこで,ストレッチを終えて,ご常連が出発してから数分後の7時03分に歩き出す.
■ご常連Mさんの歩き方を盗もう
今日は朝から気温が高い.歩き出すと直ぐに汗ばんでくる.ただ,上空には低い雲が立ち込めていて,陽ざしを遮っている.何時もならば,周囲に見えている丹沢の山々も白い霧の中である.登山口付近の路面は,ほんの少しだが濡れている.前方には,同じバスの乗り合わせた登山客が何人も見えている.
7時22分,観音茶屋を通過する.私は何時もの速度で登り続ける.雑事場ノ平手前のトラバース道で,先に歩き始めたMさんに追いつきそうになる.Mさんは登り坂に滅法強い方である.私はMさんの歩き方を盗もうと思い立つ.そこで,Mさんを追い抜かずに,Mさんから10メートルほど離れて,後を付けていくことにする.
見晴茶屋までの平坦な道に入る.何時もの私ならば,歩行速度を最大限まで上げて,ドンドンと進む所だが,今日はMさんの後を付けて,ユックリと歩く.
やがて,見晴茶屋を過ぎて,一本松までの急坂に差し掛かる.Mさんは平坦な道と同じペースで登っていく.随分と速い.この辺りにMさんの歩き方の秘密があるようだ.
一本松を過ぎて平坦な尾根道に入る.私はついつい歩行速度を上げたくなる.そこを我慢して,Mさんの後に続く.やがて,駒止茶屋手前の急な上り階段になる.Mさんは定速で登っていく.後を付けている私は息が上がりそうになる.
8時04分,駒止茶屋を通過する.歩き出してから1時間01分.平地を低速で歩いたにしては,そう悪くないラップタイムである.
■新緑の萱場平
堀山の尾根に到着する.周囲は深い霧に覆われている.わずか数日前に比較しても,登山道周辺の新緑がますます深くなっている.富士山は霧に隠れてしまい全く見えないが,尾根道には爽やかな風が吹き抜けている.とても心地よい.ついついルンルン気分で,前を定速で行くMさんとの距離が縮まりそうになるが,我慢をして,ユックリと歩き続ける.
8時20分に堀山ノ家に到着する.ここでMさんは小休止するようである.私は,Mさんに,
「・・・先にユックリ歩いています・・・」
とお断りして,堀山ノ家を通過する.
直ぐに露岩帯の急坂になる.私は登りながら,今日は全く疲労を感じていないことに気が付く.何時もより登攀速度を少し上げてみるが,汗も出ないし,足に疲労感も出てこない.
「・・先ほど平らな所をゆっくり歩いたからかな・・・Mさん効果かな・・」
と考えながら,登り続ける.
8時35分,戸沢分岐を通過する.そして,萱場平で,定点観測用の写真を撮る.萱場平を囲む林の新緑が一段と濃くなったようである.
<新緑の萱場平>
■花立山荘
何処からともなく,ツツドリの啼き声が木霊しながら聞こえてくる.ウグイスも盛んに啼いている.萱場平に続く急坂も,実に楽に登り続ける.何時もならば,登り切るのに7分ほど掛かる花立山荘手前の急な上り階段も6分で楽に登る.
今日の堀山ノ家から花立山荘までの所要時間は36分.前回,5月9日は38分,前々回は41分掛かっている.それに比較すれば今日は上出来のようである.
ここからの富士山の眺望は素晴らしいはずだが,今日は一面の雲で,富士山は全く見えない.
花立山荘を通り過ぎる.登山道の脇の小高い所で,白人の男女がテントをたたんでいる.こんな所でテントを張っている人など,始めて見るので,私はビックリする.すると,その様子を見ていたお二人が,笑顔で私に頭を下げる.
“Good mourinng, How are you today?”
と出任せの英語で返事をする.すると,
「お早うございます」
と日本語で返事が返ってくる.何だ,日本語ができるのかと思って,
「これから登るんですか?」
と聞くと,今度は日本語が通じない.「何?」と英語で私に聞き返す.私はちぐはぐな感じで,
“Going up, or going down?”
と英語で聞き返す.ほんの1分ほど,英語で雑談をする.どうやら彼らは丹沢山稜を越えて,ここで野宿をしたらしい.今度は,彼らが私に,きょう何処に泊まるのかと聞く.私は午前中に塔ノ岳を往復する予定と答える.
<妙な所にテントする白人二人連れ>
■素晴らしい雲間の富士山
ツツドリの啼き声を聞きながら,9時04分に花立場を通過する.花立山荘からここまでの所要時間は8分.ここも疲れているときは10分掛かる所である.
晴れていれば,この辺りから富士山や南アルプスが,とても良く見えるところだが,今日は一面の雲.しかし,目を凝らしてみると,眼下の谷間は白い雲で一杯なのに,花立場から上の方はこの雲の上にでている.ただ,上空の高い所には一面の雲が掛かっていて太陽を遮っている.その高い雲をバックにして,雪を抱いた真っ白の富士山が浮かび上がるように見えている.
「何という美しさだろう・・・」
私は真っ白な雲を背景に優雅に浮かび上がる神々しい富士山に,半ば畏怖の念を抱きながら,暫くの間見とれている.こうなると,もうラップタイムはどうでも良くなる.私は,暫くの間,立ち止まって,花立場で富士山を堪能する.
<茫洋の富士山>
■新緑が美しい鍋割山稜
9時09分,金冷シを通過する.直ぐに最初の長い登り坂になる.ここでも,全く疲労感がない.私は,随分と早足で坂道を登り続ける.1番目の坂道を終え,木道を下る.そして,塔ノ岳山頂直下の急な上り階段に差し掛かる.ここで,韋駄天組のTさん達とすれ違う.同じバスで来たのに,これだけ時間差ができてしまうのだから脅威である.
<新緑が美しい鍋割山稜>
■爽やかな塔ノ岳山頂
9時21分,塔ノ岳山頂に到着する.山頂には誰も居ない.そよ風が吹いている.今日の大倉から山頂までの所要時間は2時間18分.大倉から駒止茶屋までの所要時間に比較すると,案外の好タイムである.
「Mさんの歩き方を,もう少し研究する必要があるな・・・」
と私は自分に言い聞かせる.
相変わらず素晴らしい富士山が見えている.
<塔ノ岳山頂からの富士山>
■尊仏山荘:営業部長がノンビリ
周囲の写真を撮ってから,尊仏山荘に向かう.
入口付近でノンビリとした歩調で,別棟の方へ歩いていく営業部長,ミー君を見付ける.早速,写真に撮る.
「ミー君に会えて良かった!」
山荘に入る.先客は誰も居ない.今日の小屋番はオーナーのHさんとWさんのお二人.
9時30分現在の山頂の気温は+15.5℃.随分と高い.
300円也のお茶を所望する.Wさんと雑談しながら,窓越しの富士山を眺めている.特に面白い話題もない.
<営業部長がノンビリ>
■ローギャー氏,チャンピョンとすれ違う
そろそろ引き揚げようかと思っていると,ご常連の女性が入ってくる.何回も会っているが名前が分からない.続いて,2番バスで来たご常連Moさんが到着する.随分と早い.多分2時間ソコソコで登られたようである.
9時40分,尊仏山荘を出発する.山頂の登山客の人数が幾分増えている.
金冷シ手前で,2番バスのローギャー氏とすれ違う.
「今日は,風が涼しくて,気持ちが良いですね・・」
とローギャー氏が私に話しかける.
10時05分,花立山荘を通過する.急な階段で,大きな荷物を背負ったチャンピョンとすれ違う.
「・・ご苦労様です・・」
と私が挨拶すると,
「貴方も・・・毎日のように,ご苦労さんですね・・」
という返事が返ってくる.
■妙な初心者
岩稜帯を下っていると,両手にスキー用のストックを持って登ってくる60才代の男性が私に話しかける.
「・・・貴方,ストック使わないんですか?」
私がスタスタと下山してきたのを見とがめたらしい.私は,普段,ストックを使っていないことをお話しする.ストックを使うと身体が楽だから使ったらどうかと進言してくれる.
この男性,登山を始めてから,今回は3回目.これまで2回は途中で下山したが,3回目の今日は山頂まで目指すという.
「足元ばかり見ていると分岐を間違えるので,分岐の所にビニール袋に入れた石を置いてきました・・」
と妙なことを言い出す.
私は,急がば回れで,登山学校に通った方が良い.丁度,今日は山旅スクールのガイドが登ってくるから,相談したらどうですかと言ってお別れする.
10時29分,戸沢分岐を通過する.成る程,分岐点に小石を入れた白いビニール袋が置いてある.
<登山道に咲く花:名前は後日ジャイアンさんに伺う>
■山旅スクールの皆さんとすれ違う
10時40分,堀山ノ家を通過する.新緑が滴り落ちるような尾根道を,十分堪能しながら,時々,時計を見る.そして,11時52分のバスに間に合うように歩行速度を調整する.周辺の森では盛んにウグイスが啼いている.
木々の緑がますます深く濃くなってくる.まるで緑のトンネルの中を通っているようである.私はルンルン気分で緑陰の登山道を下る.
やがて,堀山の尾根道を通過して,10時54分に駒止茶屋を通過する.標高が下がるにつれて,木々の緑がますます濃くなってくる.平坦な道が終わって,11時08分,一本松に差し掛かる.10名ほどの集団が,妙な所で休憩を取っている.私は心の中で,
「こんな中途半端なところで休憩とは変なグループだな・・・ほんの少し登れば,ベンチのある平坦なところに出るのに・・」
と思う.リーダーがこの登山道を良く知らないのかな(失礼)と思いながら,通過する積もりだった.通過し終わろうとしたときに,私のリュックについている白いハンカチを見た誰かが,
「フラワーヒルさん・・フラワーヒルさんですか?」
と私に声を掛ける.この集団は山旅スクール11期の皆さんであった.私は新しいガイドの方のお顔を良く知らなかったので,山旅スクールの方々だとは思わなかった.
そうこうしている内に,良く存じ上げているKガイドと,フレンドリースタッフ(というよりは新ガイド)のIさんが別の集団とともに登ってくる.お二人は冬の槍ヶ岳へ行ったとかで,雪焼けして凄い顔になっている.
11期の方々が,次々に私に質問する.その中で,何時間で山頂まで登ったかという質問が多かった.私は,自分の体調を管理するために,他人と所要時間を比較することはしないようにしているが,ついつい2時間××分で登った・・・というような話になってしまう.話をしながら,こんな筈ではないのにと反省する.
<山旅スクール11期の皆さん:一本松付近にて>
■再びMさんと同じバス
11時13分,山旅スクールの方々とお別れして,再び下山を開始する.5分ほど雑談していたので,予定のバスの時間が厳しくなる.途中から半ば走るようにして下山を続けて,11時50分にバス停大倉に到着する.
早速バスに乗り込む.すると,同じバスにご常連のMさんが乗っている.私の顔を見ると,
「・・・お待ちしていましたよ・・・」
と言いながらニヤリとする.乗り合わせた登山客は私を含めて3人.
渋沢駅で,
「また,2~3日中に,(塔ノ岳に)来ます.宜しく・・」
と挨拶して.お別れする.
私は,明日,明後日は所用がある.従って天気さえ良ければ,金曜日辺りに,もう一度塔ノ岳に登ろうかと思っている.
[ラップタイム]
7:03 大倉歩き出し
7:22 観音茶屋
7:38 見晴茶屋
8:04 駒止茶屋
8:20 堀山ノ家
8:56 花立山荘
9:09 金冷シ
9:21 塔ノ岳山頂着
=====================================
9:49 塔ノ岳山頂発(+15.5℃)
10:05 花立山荘
10:40 堀山ノ家
10:54 駒止茶屋
11:08 一本松(11:13まで山旅スクール生と雑談)
11:25 見晴茶屋
11:35 観音茶屋
11:50 大倉 着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀・下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉 発 7:03
塔ノ岳山頂 着 9:21
(登攀所要時間) 2時間18分(2.30h)
登攀速度 1202m/2.30h=522.2m/h
■下降所要時間(休憩時間込み)
塔ノ岳山頂 発 9:49
大倉 着 12:50
(下降所要時間) 2時間10分(2.17h)
下降速度 1201m/2.17h=553.5m/h
(おわり)
[加除修正]
2009/5/14 写真追加,文章訂正.
2009/5/18 文章訂正
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/945a2a89d6671bdaac5fa5395293e053
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/aa762a70165137370ac3eac996e98f93
コメント有り難うございました.
ご指摘の「駒止茶屋」の部分,早速訂正しました.メモ帳に殴り書きした時間の「10」が汚い字だったため「16」に見えてしまったのが誤記の原因でした.ご指摘有り難うございました.
今は,新緑がとても綺麗な時期です.
後でレポートしますが,5月18日,丹沢山まで足を延ばしました.満開を迎えたシロヤシオが綺麗でした.例年より10日ほど早いようです.
登頂速度は人それぞれ.私より速い人はいくらでも居られるし,遅い人も沢山居られます.他人と比較しても意味のないことだと思っております.
私も「頑張らない登山」に徹していますので,汗が出るほどの速さにならないように,何時も自重しています.
同行者が居るときは,もっとも足の遅い人に会わせて,登山を楽しんでいます.
これからも宜しくお願いします.
相変わらず元気に山登りやハイキングを続けられておられますね! すごいの一言です。
時々拝見するこのホームページもすごいですね。
私はゆっくり歩行派でとてもついていけません。
山登りは自分のペースで登るのが一番いいと思っています。でも時々頑張れば後10年位は山を続けられるのではと、目標にさせて貰っています。
余談ですが駒止茶屋が2回出ておりました。
>10時54分,駒止茶屋を通過する.木々の緑がますます深く濃くなってくる.まるで緑のトンネルの中を通っているようである.私はルンルン気分で緑陰の登山道を下る.
やがて,堀山の尾根道を通過して,16時54分に駒止茶屋を通過する.