丹沢:塔ノ岳(大倉尾根)
尊仏山荘談義:
メタボリックキャットのミー君と落雷
(単独山行)
2007年4月12日(木) 曇
■天気に恵まれない
この所,関東地方の天気はどうもスッキリしない。天気予報によると,たまたま今日,4月12日は,朝の内,多少,雨が残るものの次第に晴れてくるようである。今日を逃すと,また4~5日はぐずついたハッキリしない天気が続くという。
実は,一昨日,静岡県と山梨県の県境にある「高ドッキョウ山」と「平治の段」を縦走してきたばかりである。昨日1日,ユックリと休んだので,特段に疲労が残っているわけではないが,わずか1日,間を空けただけで,また今日,塔ノ岳に登るのは,少々やりすぎではないかと自戒するが,どうしてもジッとしていられない。
■大倉尾根を登り始める
早朝,4時30分に起床する。身体の彼方此方を動かしてみるが,特に痛いところも,だるいところもない。それならば,迷わずに塔ノ岳に出掛けようと決める。登山用品を,何時も放り込みっぱなしになっているリュックを担いで,5時10分に家を出る。例によって,小田原を経由して,小田急線の渋沢へ出る。そこからバスに乗って,7時28分頃,大倉に到着する。今日は平日には違いないが,それにしても,バスに乗り合わせた登山客は4人と極端に少ない。この4人の中のお一人は顔なじみのご常連さんである。
7時35分に大倉を歩き出す。今朝まで降っていた雨で路面が濡れている。登山口から登山道に入ると,路面に敷き詰められている石が濡れていてとても滑りやすい。さらに,至る所に泥濘があって,とても歩きにくい。湿度も高く,少し歩いただけで,瞬く間に汗だらけになる。
私は,自分の年を,心の中の自分に言い聞かせながら,オーバーペースにならないように注意しながら登り続ける。それでも一人旅の気楽さから,結構良い調子で登り続けて,8時08分に見晴茶屋を通過する。この辺りからが本格的な登り坂になる。高度を上げるにつれて,天気予報とは裏腹に,霧がだんだんと深くなる。長い坂道を登っていると,市価の親子に出会う。母鹿が私の方をジッと見詰めている。傍らで子鹿が無心に草を食べている。
<霧の中の稜線>
■下りの登山客とすれ違う
8時52分に堀山の家を通過する。晴れていれば,ここから富士山が良く見える筈だが,今日は手前の箱根の山々も全く見えない。私は何時もと変わらない速度で登り続ける。途中で4人の登山客を追い抜く。花立山荘の手前で,上から降りてきた夫婦とすれ違う。
「今日は風もなくて暖かで良かったですね・・・もう少しで花立山荘ですよ,頑張ってください」
と私を励ます。花立山荘前のベンチには誰も居ない。そのまま通過する。金冷し付近で,ご常連の方とすれ違う。私が塔ノ岳に登ると,2回に1回程度の頻度ですれ違う方である。
「やあ,こんにちは,・・今日は晴と聞いて登ってきましたが,ダメでしたね」
と私に話しかける。
「実は私もですよ・・・この頃,どうもついていませんね・・」
と答える。
「また,お会いしましょう・・・」
と挨拶を交わして,すれ違う。
■塔ノ岳山頂
9時55分に塔ノ岳山頂に到着する。このとき,ほんの暫くの間,少し霧が薄らいで,近場の蛭ヶ岳周辺の山稜が見えるようになる。早速,景色を写真に納めるが,富士山は相変わらず雲の中である。山頂は珍しく無風である。しかし,山頂には登山客の姿はない。山頂の気温は+5.5℃。まあまあ暖かい。
霧が晴れないかと願いながら,しばらくの間,山頂から辺りを見回していたが,霧はますます濃くなるばかりである。
<塔ノ岳からの眺望>
■メタボリックキャットのミー君と雷
霧が晴れるのを諦めて,尊仏山荘に入る。先客が4人居る。何れの方もご常連ではなさそうである。太りすぎたメタボリックキャットのミー君が,小屋番と一緒に,番台に座っている。その姿がとても堂に入っている。やっぱり可愛いネコである。早速写真を撮る。
<メタボリックキャットのミー君>
「バスに何人ぐらい乗っていましたか・・・」
と小屋番が私に聞く。
「たった4人でしたよ・・・予報では天気が良いと言っていたので出てきましたが,何も見えませんね」
と私が答える。すると,隣に座っていた中年男性の二人連れが,
「天気予報が当たらないことがあるんですね・・・」
「つい2週間ほど前に,予報が晴だったので,登ってきましたら,堀山の家辺りから上は雪でしたよ」
と私が答える。すると,小屋番が,
「天気予報は平地の予報だから,山とは大分違いますよ・・・」
と雑談に加わる。
「実は,この間の月曜日(4月9日),山荘にいきなり雷が落ちたんですよ・・!」
「・・・じゃ~ぁ・・ピカリごゴロゴロが一緒だったんですね・・・」
「いえ・・ピカリもゴロゴロもなく,いきなり,この建物の避雷針にもの凄い火花が飛び散りましたよ・・・幸い火事にはならなかったけど・・・・20年以上も小屋をやっていて,こんなことは初めてでしたよ・・」
「・・で,何時頃だったんですか?」
「丁度,午後1時でした。雷が落ちたときには,雹が降っていましたよ・・・」
「何の前触れもなく落ちるんですか・・?」
「いきなりですよ! 全く何の前触れもなかったです」
■濃い霧の中を下山開始
10時18分に尊仏山荘を出発して下山を開始する。気温が少し下がっている。辺りには,先ほどより濃い霧が立ち込めていて,視界は20メートルほどしかない。濡れた木道や,泥道を滑らないように注意しながら下り続ける。
10時38分に花立山荘を通過する。雲の下に出たのか,急に視界が開けて,麓の集落や駿河湾が良く見えるようになる。ただ,振り返って見ると,塔ノ岳山頂は雲の中に隠れている。相変わらず,足下に注意しながら,10時56分に戸沢分岐を通過する。下から50歳代中頃と思われる男性が,汗ビッショリになりながら喘ぐように登ってくる。私は,階段の片隅に身を寄せて,彼が通り過ぎるのを待つ。彼は汗で真っ赤になった顔を拭きながら,私に話しかける。
「早いですね。もう下山ですか・・・どこかに泊まられたんですか」
「いえ・・今朝,大倉から登って,今,戻りです」
「え~ぇ~・・一体,何時間で登ったんですか・・?」
「今日は大倉から山頂まで,2時間18分でした」
と正直に答える。
「凄いですね・・・まるで仙人のようですね」
「いえ,いえ,飛んでもない・・・ご常連の方々の中には2時間を大幅に切る方が沢山居られますよ・・どうぞ気を付けて・・・」
実際の所,私は何も早く登ることを目指しているのではない。自分の体力の範囲で,どのような登り方をすれば,どの程度の時間で登れるかを実験しているだけである。この辺りのことが,仲間内でも,どうも誤解されがちで,とても残念である。
■丹沢山祭り開き
大倉からのバスの時間を念頭に置きながら,適当な速度で下り続ける。見晴茶屋に至る尾根道を下るのがとても楽しい。今の時期は,両側の「もみじ」の新緑がとても美しい。
<もみじの新緑が美しい大倉尾根>
バカ尾根は単調だと敬遠する人が多いが,何回もこの尾根を往復している内に,バカ尾根に,だんだんと愛着が湧いてくるから不思議である。
大倉バス停近くに,大きな横断幕が掛かっている。この幕には「4月第3日曜日・歓迎・丹沢祭り山開き」と書いてある。
<丹沢祭りの横断幕>
12時14分に,大倉バス停に到着する。12時22分発渋沢行のバスに乗車する。乗車した登山客は,私と朝のバスで一緒だったお馴染みの方の2人だけである。
[ラップタイム]
7:35 大倉バス停歩き出し
↓
7:54 観音茶屋
↓
8:08 見晴茶屋
↓
8:36 駒止茶屋
↓
8:52 堀山の家
↓
9:27 花立山荘
↓
9:55 塔ノ岳山頂着
10:18 〃 発
↓
12:14 大倉バス停着
■登攀所要時間 2時間18分(2.30h)
登攀速度 1201m/2.30h=522.2m/h
■下降所要時間 1時間56分(1.93h)
下降速度 1201m/1/93h=622.3m/h
(おわり)
尊仏山荘談義:
メタボリックキャットのミー君と落雷
(単独山行)
2007年4月12日(木) 曇
■天気に恵まれない
この所,関東地方の天気はどうもスッキリしない。天気予報によると,たまたま今日,4月12日は,朝の内,多少,雨が残るものの次第に晴れてくるようである。今日を逃すと,また4~5日はぐずついたハッキリしない天気が続くという。
実は,一昨日,静岡県と山梨県の県境にある「高ドッキョウ山」と「平治の段」を縦走してきたばかりである。昨日1日,ユックリと休んだので,特段に疲労が残っているわけではないが,わずか1日,間を空けただけで,また今日,塔ノ岳に登るのは,少々やりすぎではないかと自戒するが,どうしてもジッとしていられない。
■大倉尾根を登り始める
早朝,4時30分に起床する。身体の彼方此方を動かしてみるが,特に痛いところも,だるいところもない。それならば,迷わずに塔ノ岳に出掛けようと決める。登山用品を,何時も放り込みっぱなしになっているリュックを担いで,5時10分に家を出る。例によって,小田原を経由して,小田急線の渋沢へ出る。そこからバスに乗って,7時28分頃,大倉に到着する。今日は平日には違いないが,それにしても,バスに乗り合わせた登山客は4人と極端に少ない。この4人の中のお一人は顔なじみのご常連さんである。
7時35分に大倉を歩き出す。今朝まで降っていた雨で路面が濡れている。登山口から登山道に入ると,路面に敷き詰められている石が濡れていてとても滑りやすい。さらに,至る所に泥濘があって,とても歩きにくい。湿度も高く,少し歩いただけで,瞬く間に汗だらけになる。
私は,自分の年を,心の中の自分に言い聞かせながら,オーバーペースにならないように注意しながら登り続ける。それでも一人旅の気楽さから,結構良い調子で登り続けて,8時08分に見晴茶屋を通過する。この辺りからが本格的な登り坂になる。高度を上げるにつれて,天気予報とは裏腹に,霧がだんだんと深くなる。長い坂道を登っていると,市価の親子に出会う。母鹿が私の方をジッと見詰めている。傍らで子鹿が無心に草を食べている。
<霧の中の稜線>
■下りの登山客とすれ違う
8時52分に堀山の家を通過する。晴れていれば,ここから富士山が良く見える筈だが,今日は手前の箱根の山々も全く見えない。私は何時もと変わらない速度で登り続ける。途中で4人の登山客を追い抜く。花立山荘の手前で,上から降りてきた夫婦とすれ違う。
「今日は風もなくて暖かで良かったですね・・・もう少しで花立山荘ですよ,頑張ってください」
と私を励ます。花立山荘前のベンチには誰も居ない。そのまま通過する。金冷し付近で,ご常連の方とすれ違う。私が塔ノ岳に登ると,2回に1回程度の頻度ですれ違う方である。
「やあ,こんにちは,・・今日は晴と聞いて登ってきましたが,ダメでしたね」
と私に話しかける。
「実は私もですよ・・・この頃,どうもついていませんね・・」
と答える。
「また,お会いしましょう・・・」
と挨拶を交わして,すれ違う。
■塔ノ岳山頂
9時55分に塔ノ岳山頂に到着する。このとき,ほんの暫くの間,少し霧が薄らいで,近場の蛭ヶ岳周辺の山稜が見えるようになる。早速,景色を写真に納めるが,富士山は相変わらず雲の中である。山頂は珍しく無風である。しかし,山頂には登山客の姿はない。山頂の気温は+5.5℃。まあまあ暖かい。
霧が晴れないかと願いながら,しばらくの間,山頂から辺りを見回していたが,霧はますます濃くなるばかりである。
<塔ノ岳からの眺望>
■メタボリックキャットのミー君と雷
霧が晴れるのを諦めて,尊仏山荘に入る。先客が4人居る。何れの方もご常連ではなさそうである。太りすぎたメタボリックキャットのミー君が,小屋番と一緒に,番台に座っている。その姿がとても堂に入っている。やっぱり可愛いネコである。早速写真を撮る。
<メタボリックキャットのミー君>
「バスに何人ぐらい乗っていましたか・・・」
と小屋番が私に聞く。
「たった4人でしたよ・・・予報では天気が良いと言っていたので出てきましたが,何も見えませんね」
と私が答える。すると,隣に座っていた中年男性の二人連れが,
「天気予報が当たらないことがあるんですね・・・」
「つい2週間ほど前に,予報が晴だったので,登ってきましたら,堀山の家辺りから上は雪でしたよ」
と私が答える。すると,小屋番が,
「天気予報は平地の予報だから,山とは大分違いますよ・・・」
と雑談に加わる。
「実は,この間の月曜日(4月9日),山荘にいきなり雷が落ちたんですよ・・!」
「・・・じゃ~ぁ・・ピカリごゴロゴロが一緒だったんですね・・・」
「いえ・・ピカリもゴロゴロもなく,いきなり,この建物の避雷針にもの凄い火花が飛び散りましたよ・・・幸い火事にはならなかったけど・・・・20年以上も小屋をやっていて,こんなことは初めてでしたよ・・」
「・・で,何時頃だったんですか?」
「丁度,午後1時でした。雷が落ちたときには,雹が降っていましたよ・・・」
「何の前触れもなく落ちるんですか・・?」
「いきなりですよ! 全く何の前触れもなかったです」
■濃い霧の中を下山開始
10時18分に尊仏山荘を出発して下山を開始する。気温が少し下がっている。辺りには,先ほどより濃い霧が立ち込めていて,視界は20メートルほどしかない。濡れた木道や,泥道を滑らないように注意しながら下り続ける。
10時38分に花立山荘を通過する。雲の下に出たのか,急に視界が開けて,麓の集落や駿河湾が良く見えるようになる。ただ,振り返って見ると,塔ノ岳山頂は雲の中に隠れている。相変わらず,足下に注意しながら,10時56分に戸沢分岐を通過する。下から50歳代中頃と思われる男性が,汗ビッショリになりながら喘ぐように登ってくる。私は,階段の片隅に身を寄せて,彼が通り過ぎるのを待つ。彼は汗で真っ赤になった顔を拭きながら,私に話しかける。
「早いですね。もう下山ですか・・・どこかに泊まられたんですか」
「いえ・・今朝,大倉から登って,今,戻りです」
「え~ぇ~・・一体,何時間で登ったんですか・・?」
「今日は大倉から山頂まで,2時間18分でした」
と正直に答える。
「凄いですね・・・まるで仙人のようですね」
「いえ,いえ,飛んでもない・・・ご常連の方々の中には2時間を大幅に切る方が沢山居られますよ・・どうぞ気を付けて・・・」
実際の所,私は何も早く登ることを目指しているのではない。自分の体力の範囲で,どのような登り方をすれば,どの程度の時間で登れるかを実験しているだけである。この辺りのことが,仲間内でも,どうも誤解されがちで,とても残念である。
■丹沢山祭り開き
大倉からのバスの時間を念頭に置きながら,適当な速度で下り続ける。見晴茶屋に至る尾根道を下るのがとても楽しい。今の時期は,両側の「もみじ」の新緑がとても美しい。
<もみじの新緑が美しい大倉尾根>
バカ尾根は単調だと敬遠する人が多いが,何回もこの尾根を往復している内に,バカ尾根に,だんだんと愛着が湧いてくるから不思議である。
大倉バス停近くに,大きな横断幕が掛かっている。この幕には「4月第3日曜日・歓迎・丹沢祭り山開き」と書いてある。
<丹沢祭りの横断幕>
12時14分に,大倉バス停に到着する。12時22分発渋沢行のバスに乗車する。乗車した登山客は,私と朝のバスで一緒だったお馴染みの方の2人だけである。
[ラップタイム]
7:35 大倉バス停歩き出し
↓
7:54 観音茶屋
↓
8:08 見晴茶屋
↓
8:36 駒止茶屋
↓
8:52 堀山の家
↓
9:27 花立山荘
↓
9:55 塔ノ岳山頂着
10:18 〃 発
↓
12:14 大倉バス停着
■登攀所要時間 2時間18分(2.30h)
登攀速度 1201m/2.30h=522.2m/h
■下降所要時間 1時間56分(1.93h)
下降速度 1201m/1/93h=622.3m/h
(おわり)