熊野古道:大雲取越・小雲取越縦走(7)
(湘南カラビナ隊)
2007年3月30日(金)~4月1日(日)
第2日目 3月31日(土) (つづき)
<小口自然の家に到着>
■小学校跡の「小口自然の家」
私達は,15時17分に,今日の宿泊地,小口自然の家に到着した。ここは元小学校を転用した施設である。大きな廊下に教室を転用した客室が並ぶ。体育館と思われるところが食堂になっている。まずは部屋に案内される。部屋割は抽選で決める。客室は,元の教室を2分して作ったらしく,部屋の広さに比較して,とても天井が高く,開放感がある。
予定よりかなり早く到着したので,16時30分からの風呂の時間まで大分余裕がある。私は廊下をブラブラと歩いてみる。
<小口自然の家に到着>
■玉置庸祐氏の鉛筆画
早速眼に付いたのが,廊下に展示されている玉置庸祐という方の10枚ほどの鉛筆画である。鉛筆1本でここまで表現できるのかと大変な衝撃を受ける。
flower-hillも趣味で絵を描く。本来は透明水彩画を好むが,時間がないときはボールペン1本でスケッチを楽しんでいる。だが,ここに展示されている玉置さんの絵を拝見した途端に,一体,今まで,私は何を書いていたのだろうかという自責の念に駆られてしまう。
玉置さんの絵を見た途端,これまで私は,要するに,目に見える表面的なものしか描いていないことを悟らされる。絵を描こうとする対象物の内面,あるいは心象を素直に表現するという視点が私には,全く欠けている。私はまるで写真機になったような状態で,ただ,ただ,外観だけを見えるままに描いていただけで,対象物の本性や情念のようなものを感知することすらしていなかったと思い知らされる。
廊下は寒いので,余り長く立ちつくしていると風を引くかも知れないが,衝撃を受けた私は,飾ってある絵を一枚一枚,食い入るように見て回った。その中から特に印象に残った3枚の絵をここに紹介することにしよう。
まず1枚目である。
この絵を見ながら,私は遠い昔のある日のことを思い出す。村の鎮守から夕焼けに輝く空と,夕日を反射して輝く千曲川の情景である。この絵を見ていると,幼い頃の甘酸っぱいペーソスが込み上げてくる。あの頃,一緒に夕焼けを見ていた友達は,今,どうしているのだろうか。恙なく元気でいるのだろうか・・・この絵を見ながら,私は望郷の念に駆られてしまう。
続いて,2枚目。
晴らしい夜空の絵である。
真っ暗な夜空を見上げる。だんだんと眼が暗闇に馴れてくると,ギラギラと輝く星々が,盛んに私に話しかけてくる。天空からはうなり声にも似た不思議な音楽が聞こえてくる。怪しい雲が滝のように右から左へ音もなく流れていく。私は天空の奏でる荘厳な舞台に魂を吸い取られてしまいそうになる。
3枚目の絵からは,冬のメルヘンを想像する。
冷たい樹氷が,私に暖かく話しかけてくる。後の山が「樹氷の言うとおりだよ・・・ちっとも寒くないよ」と笑っている。何という美しさ,静寂さだろう。私は暫くの間,身じろぎもせずに,この絵に見入っていた。
私も玉置さんのように,目に見える事物の内面にあるものを描いてみたい。こんな焦れったい思いに駆られる。私は「家に帰ったら,すぐにキャンパスを取りだして,熊野の心象を絵にしよう・・・」と心に決める。
■メダカの学校
玉置さんの絵の手前に,水槽がいくつか並んでいる。何が居るのだろうかと気になって,水槽を覗き込む。良く見ると水槽の中で小さなメダカが数匹,スイスイと泳いでいるのが見える。
<メダカの学校>
水槽越には,木立に囲まれた小学校の校庭が見える。小学校があった頃は,この校庭も子供達の声で賑やかだったに違いない。私はそんな思いに駆られて,水槽越しに校庭の写真を撮る。
■皇太子さまのお写真
廊下に皇太子さまのお写真が飾られている。以前,地蔵茶屋付近に行啓されたときのお写真らしい。若々しいお姿である。
<皇太子さまのお写真>
■熱い風呂と夕食
16時20分頃,風呂に入る。風呂のお湯が熱いので,少々当惑するが,歩き込んだ後の風呂は何といっても気分がよい。
17時30分頃から夕食。刺身,煮物,天ぷらなど,とても豪華である。
<小口自然の家の夕食>
早めに就寝する。
こうして,第2日目の無事に終わった。
[第2日目のラップタイム]
7:49 美滝山荘歩き出し(250m)
↓
8:48 那智高原休憩所(485m)
↓
9:23 登立茶屋跡(600m)
↓
10:00 舟見茶屋跡(800m)
↓
10:29 舟見峠(883m)
↓
11:48 地蔵茶屋跡(725m)
↓
13:02 越前峠(870m)
↓
13:32 胴切坂(655m)
↓
14:04 楠ノ久保旅籠跡(345m)
↓
14:44 円座石(275m)
↓
15:17 小口自然の家(55m)
■歩行距離 約14.5km
■登攀高度 約1,000m
■下降高度 約1,250m
■所要時間(休憩時間込み) 7時間25分
※標準所要時間は7時間
(つづく)
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