<塔ノ岳山頂の樹氷>
厳冬の丹沢:塔ノ岳
再び長靴で登頂(第6回)
(山旅スクールのゲートさんに同行)
2008年1月31日(木)
■出掛けるぞ
早朝4時に起床する。天気予報では,今日は寒くなると言っていたが,案外暖かく感じる。それに天気予報によれば,今日一日,ピカピカの上天気になるようである。
「・・・ならば,塔ノ岳に登ろう・・!」
私は,常備してあるリュックを背負って,そそくさと家を出る・・・と,いうのも,早い機会に,もう一度,長靴を履いて,塔ノ岳を往復してみたかったからである。それも,今度はノーアイゼン。つまり長靴だけのグリップ力を,是非,確認したい。勿論,万一のことを考えて,リュックにはアイゼンを入れたままにしてあるが・・・
今回の塔ノ岳登頂は,1月になってから,6回目である。
■山旅スクールの方と偶然出会う
例により,何も余計なことは考えずに,何時ものように,大船6時04分発静岡行の前から2両目に乗車する。小田原に到着したら,また,何時ものように階段を登って,小田急に乗り換える。いちいち座る場所を探すのも面倒なので,ホームへの階段を降りたすぐ側にある乗降口から電車に乗る。そして,そのまま惰性で乗った場所近くの席に座る。
すると,これまた不思議なことに,先日も偶然にお会いした山旅スクール8期のゲートさんが隣の隣に座っている。
まあ,こんな経緯から,今日はゲートさんと一緒に塔ノ岳を往復することになった。 渋沢から大倉へ向かうバスに乗車した登山客は,10人足らずである。どうやらご常連の顔は見当たらないようである。
■いよいよ長靴で登山開始
簡単なストレッチをした後,7時39分に大倉バス停を出発する。前回(1月28日)に単独で塔ノ岳に登ったときも,7時39分に歩き出している。今回の山行のラップタイムが,前回のラップタイムと,どのように変わるかにいささかの興味がある。そのために,比較がし易いように,あえて同じ時間に出発することにした。
ゲートさんが,私に「何時もの私の歩行速度で歩け」という。私の後をゲートさんが付いてくるとのことである。とはいえ,ゲートさんより,私の方が,遙かに老いぼれている。ゲートさんの方が,若いだけあって,私より早く歩くのではないかと思うのだが,まあ仰せの通りに,暫くの間は,私が先頭を歩くことにする。
たまたま,今日の気温はそれ程寒くもなく,また,大倉周辺で見た限りでは,路面の状態も良さそうである。私は,内心では,今日は上手に歩けば,山頂まで2時間15分台でおけるかなと思っている。そこで,まずはゲートさんに遠慮せずに,2時間15分を目指して歩き出す。
もうひとつ試したいことがある。今日は,長靴を履いているので,歩行速度を少し上げたら,どんな感じになるだろうか。これも大変興味深い。そこで,多少早めのピッチで歩き出す。早いピッチで歩いて見ると,長靴がふくらはぎ辺りで,ゴモゴモとまとわりつく感じがする。この点,長靴は軽登山靴に比較して,かなり歩きにくいことを実感する。
「やっぱり,長靴はジックリと登るのに適した履き物だな」
と実感する。ただ,丹沢ベース付近の石を敷き詰めたところでは,長靴の裏がピッタリと石にまとわりつく感じがして,軽登山靴よりは,ずっと歩きやすいようである。
7時59分に観音茶屋を通過する。後を振り返るとゲートさんが大汗をかいている。真っ赤に火照った顔から,汗が滴り落ちている。これでは,下山に必要な体力が残らなくなるのではないかと,他人事ながら気になり始める。また,私自身も,長靴を履いて,今のピッチを続ける自信がないので,歩行速度を少し落とす。内心,残念ながら,2時間20分を切るのは無理だなと確信する。
■アイスバーンが連続する登山道
見晴茶屋を過ぎてからの急な登り階段に差し掛かる。昨日の気温が高かったためか,この辺りの根雪はほとんど消えている。ただ,路面は沢山の足跡が凍結したまま,溶けずに凍り付いている。凸凹した足跡が残る急坂を比較的ユックリとしたペースで登り続ける。そして,8時26分に一本松を通過する。私は汗ビッショリのゲートさんが心配になり,
「ここからちょっと登ったところにベンチがありますので,そこで給水しましょう」
と誘う。
ベンチ付近は日陰になっているために,辺りには,まだ,かなりの残雪がある。立ち止まった途端に,大分寒いなと感じる。
給水が終わるとすぐに歩き出す。ベンチから先は,暫くの間,平らな尾根道になる。登山道は,随所にアイスバーンがある。氷の上に枯れ葉や泥が踏みつけられたような状態になっているが,結構,滑りやすい。転倒したら百年目。記録どこではなくなる。注意をしながら先へ進む。
<雲間の富士:透明な空気に怪しい雲が棚引いている>
■透明な空気
根雪で滑りやすい登り階段を過ぎて,8時41分に駒止茶屋に到着する。前回の単独山行のときと,ほぼ同じ時間である。ということは,今日のラップタイムは,2時間25分程度と予想される。
駒止茶屋を過ぎると,ほどなくほぼ水平な尾根道になる。何時もならば,ここは,かなり速い速度で飛ばすが,今日は自重して,ユックリと通過する。途中,私が何時も富士山を眺めるチェックポイントがある。今日も,このチェックポイントで富士山の写真を撮る。
今日は,昨日の雨のためか,上空の空気が透明で綺麗である。そのために,白い富士山が,何時もよりクッキリと見えている。ただ,富士山の上空には,何となくあやしい色をした雲が,モクモクと沸き出ている。
8時50分に堀山を通過する。登山道が雪で覆われていた前回(1/28)と,ほぼ同じラップタイムである。どうやら,今回は,勾配が緩い場所での歩行速度が,何時もよりも幾分遅いために,私が苦手な急勾配の登り坂で,ラップタイムを引っ張っているようである。
<今日(2月1日)の萱場平:残雪は少なくなっている>
■花立山荘手前で失速
8時58分に堀山の家を通過する。ここでもまた,前回と全く同じ時間である。いよいよ登りの核心部に入る。相変わらず,長靴はまあまあ快調である。道路の状態は,1月28日より大分良いが,今日の私は,何となく歩行リズムが掴めないまま,失速状態で登り続ける。それにもかかわらず,何時もより大分疲労感がある。どうも本調子でないので,後から付いてくるゲートさんに先頭を譲る。私はゲートさんに,
「どうぞご自分に最適な速度で,ドンドン登ってください・・」
とお願いする。幸いなことに,ゲートさんも,後の私のことを心配してか,ユックリとしたペースで登ってくれるので,後の私も大助かりである。
9時14分に戸沢分岐を通過する。その上の萱場平には,1月28日よりも更に少い残雪である。萱場平を過ぎると,花立山荘までの急な階段道になる。この辺りは日光が良く当たる斜面なので,残雪は殆どない。とはいえ,泥の下で根雪がアイスバーン状になったところが沢山ある。
花立山荘が近付くと,急に見晴らしが良くなる。私はときどき後を振り返って,キラキラと光り輝く海の写真を撮る。そんなことをしている内に,前を行くゲートさんとの間が,ついつい広がってしまう。私は,ゲートさんとの間を詰めようとして歩行速度を上げが,なかなか思うように間が縮まらない。
<富士山と南アルプス:花立山荘と金冷しの間の稜線から望む>
■塔ノ岳山頂に到着
9時37分に花立山荘を通過する。1月28日の山行に比較して,2分ほど遅い。もはや2時間25分は絶望的である。やがて露岩帯を通過して尾根道になる。
上空には雲が多いものの,今日は空気が透明で,新雪の丘の向こうに,富士山や南アルプスの山々が,クッキリと見えている。丘の上の木道で立ち止まって,美しい風景をカメラに収める。
新雪で真っ白な道を辿って,9時52分に金冷しを通過する。今日は雪が少なくて,歩きやすいために,ラップタイムは,すこし挽回して,前回より1分遅れで通過する。ところが,金冷しから先の登り階段で再び失速。歩行速度が極端に遅くなってしまう。そして,10時07分,塔ノ岳山頂に到着する。所要時間2時間28分。かろうじて2時間30分を切ることができた。今の私の実力では,まあこんな所なのだろう。
山頂は新雪で覆われているが,雪の量は,前回よりも,かなり少なくなっている。それに,今日の気温は,1月28日に比較して,随分と暖かく感じる。
山頂からの風景は実に見事である。特に東側の斜面には沢山の樹氷が白く輝いている。余りに見事な風景なので,何枚も,何枚も写真を撮りまくる。
<新雪の登山道:金冷し付近>
<美しい樹氷が満開:塔ノ岳山頂にて>
<樹氷の向こうに遠く相模湾が望める>
■尊仏山荘にて
尊仏山荘に入る。先客は男性1人。今日の小屋番はOさん。
早速,小屋の温度計を見る。10時10分現在の塔ノ岳山頂の外気は,マイナス2℃。この時期にしては,かなり暖かい。
「一昨日,雪が降ったんですか・・」
と私がOさんに伺う。
「このところ,毎日1~2センチ降ってますよ・・」
早速お茶を所望する。冬の間は,冷えた身体に,熱いお茶が何よりのご馳走である。 今日は営業部長のミー君がお店に出勤している。帳場の前の石油ストーブに当たって,気持ちよさそうに香箱を作っている。暫く経つと,身体の向きを変えて,反対側を暖めている。
先客の男性が,Oさんに,
「綺麗な猫ですね・・・ずっと小屋に居るんですか」
と聞く。
「8年前に,客が拾ってきたんです・・・長いお付き合いですよ」
「名前,何て言うんですか・・?」
「うん・・・まぁ,,・・自然にミーヤって呼んでますよ。」
<今日の営業部長は,何を思う。物憂げである>
その内に,男性が私に話しかける。
「何回も塔ノ岳に登って居るんですか・・・」
「えぇ~,まあ,,,,昨年は45回登りました。」
今度は,Oさんが私に質問する。
「今日の2番バスには何人ぐらい乗っていましたか?」
「7~8人だったと思いますよ・・・」
<樹氷の向こうに大山が聳える:塔ノ岳山頂より望む>
■ノーアイゼンの長靴で下山
小屋に入って,30分ほど過ぎたときに,男性客1人が入ってくる。どうやらご常連のようである。馴れた手つきで,ガスボンベを取り出す。
私は,大倉発12時52分のバスに乗りたい。今日の登山道の状態では,安全に下山するには2時間少々掛かると見た方が良い。そうなるとそろそろ下山した方が良いなと思い始める。そこで,10時43分に塔ノ岳山頂から下山を開始する。
下山もノーアイゼンで行こうということになる。何時もよりも,足元に注意しながら下山し続ける。長靴のグリップ力は,軽登山靴と比較して遜色ないようである。1回,金属網を踏んで,少し滑ったが,後は全く滑ることもなく,極めて安全に下山することが出来た。
途中で,山旅スクール8期のKさんとすれ違う。Kさんに,
「あら,flower-hillさんですね・・・」
と挨拶された・・・が,私にはKさんに会った記憶がなく,少々,面食らう。ゲートさんから,8期のKさんだと教えてもらう。
「多分,flower-hillさんと一緒に何処かの山へ行っていますよ・・・それに,彼女,あなたのブログを見ていますよ・・」
下り道では,凍結してスリップし安い所と,溶雪でドロドロになっている所が,入れ替わり立ち替わり現れる。
途中で,夫婦連れの登山者とすれ違う。まさか,時々,ブログにコメントを頂戴する方ではないだろうなと思う。
長靴で,長時間,下り坂を下り続けると,靴の中で足が前にずれてしまい,爪先が靴にぶつかって痛くなる嫌いがある。塔ノ岳程度の下り坂なら問題ないが,余り長時間の下り坂には,長靴は適していないようである。
12時05分に見晴茶屋を通過する。もう,確実に12時52分発のバスに間に合う。そう思った途端に,歩行速度を極端に落とす。そして,12時40分に,無事,大倉バス停に到着する。
トイレの前にある水道で,長靴の泥を洗う。水道の脇に置いてあったチビたタワシは,新品に取り替えられている。長靴は簡単に脱げるし,泥落しも至って簡単である。改めて長靴は良いなと実感する。
<長靴の特徴>
1.石ころ道は長靴の方が歩きやすい。
2.雪道をユックリ歩くなら,長靴の方が楽である。
3.軽アイゼンは,軽登山靴の方が装着しやすいし,歩きやすい。
4.泥道の歩行には,長靴の方が断然適している。
5.長い下り坂には,長靴は不適である。
6.長靴は脱いだり履いたりが極めて楽である。
<中間の結論>
塔ノ岳大倉尾根程度の登山道ならば,長靴で十分歩行することができる。
[ラップタイム]
7:39 大倉歩き出し(290m)
7:44 登山口(325m)
7:48 克童窯(350m)
7:52 丹沢ベース(390m)
7:58 観音茶屋(465m)
8:02 高原の家分岐(500m)
8:10 雑事場ノ平(595m)
8:12 見晴茶屋(605m)
8:26 一本松(745m)
8:41 駒止茶屋(855m)
8:50 堀山(910m)
8:58 堀山の家(925m)
9:14 戸沢分岐(1075m)
9:16 萱場平(1090m)
9:37 花立山荘(1260m)
9:52 金冷し(1330m)
10:07 塔ノ岳山頂 着(1465m)
====================================
10:43 塔ノ岳山頂 発(-6.0℃)
10:54 金冷し(1350m)
11:05 花立山荘(1285m)
11:22 萱場平(1115m)
11:24 戸沢分岐(1090m)
11:34 堀山の家(950m)
11:41 堀山(920m)
11:47 駒止茶屋(880m)
11:56 一本松(780m)
12:05 見晴茶屋(625m)
12:07 雑事場ノ平(610m)
12:15 高原の家分岐(535m)
12:19 観音茶屋(500m)
12:25 丹沢ベース(440m)
12:30 克董窯(395m)
12:34 登山口(360m)
12:40 大倉 着(310m)
[山行記録]
■登攀・下降高度
塔ノ岳山頂 1491(m)
大倉 290
(高度差 1201m)
■登攀所要時間
大倉発 7:39
塔ノ岳山頂着 10:07
(所要時間2時間28分(2.47h)
■登攀速度
1201(m)/2.47(h)=486.2(m/h)
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:43
大倉着 12:40
(所要時間 1時間57分(1.95h))
■下降速度
1201(m)/1.95(h)=615.9(m/h)
(おわり)
当ブログにお越し頂き有り難うございます。
私もときどきKiyomaさんのブログを拝見しておりますが,某プロバイダのIDを取得しないとコメントできない仕組みになっているようなので,図らずもリードオンリーで失礼しております。
膝のリハビリ中とのこと。塔ノ岳に登ってもKiyomaさんにお会いできないのが寂しいです。早く快癒されることを願っております。
私のブログで書き忘れましたが,膝までくるような雪では,当然長靴は無理ですよね。私もそこそこの雪山へ行きますが,ラッセルは数メートルしただけで,疲労困憊,足が上がらなくなってしまいます。
雪山の単独山行は,降雪量の少ない丹沢の表尾根だけにしております。
元気になられましたら,また山へご一緒しましょう。
コメント有り難うございました。
何時も随分と速い時間に登られているようですね。まだ薄暗い時間に登山開始ですね。寒いでしょうね。
冬の塔ノ岳は最高です。
美しい樹氷に会うと,毎日でも登りたくなってしまいます。
先日のミー君は,Oさんの側で,とても幸福そうでした。
まだ,是非,当ブログにお越し下さい。
営業部長、昨日は ご出勤だったんですネ♪
私たちは なるべく人の少ない時間帯に歩きたいので、
早いと 朝5時や6時には上り始めて、尊仏山荘に
到着するのが (コースを変えたりしても)だいたい
8時過ぎから9時頃。そうすると、ミー君は たいてい奥で寝てることが多くって。。
小屋当番が 一番懐いてるOさんだと、傍にいたくって
こんな風にストーブ前に いるんでしょうかネ☆
樹氷も、ホントに綺麗!
私も先日、長靴(というか、スニーシューズみたいなものですが。)
を買ってきました。私の場合は背が150cmと小さいので
子供用サイズになってしまいましたが・・(汗)長靴で歩くのが楽しみデス♪