<花立山荘からの富士山>
朝日に背中を押されて登る丹沢:塔ノ岳(今年4回目)
(単独山行)
2011年1月19日(水)
■家から出掛けるのに勇気が要る
1月中旬.今からが一年中で一番寒い時期である.
折角,早朝眼が覚めても,寒さが激しいと,ついつい出掛けるのが億劫になる.私が住んでいる湘南地方の気候は,比較的温暖だと言われているが,それでも早朝の寒さは身震いするほどである.でも,塔ノ岳へ登りたいので,エイヤッと起きて,山支度をする・・・が,
「やっぱり,寒いから止めておこう・・」
と,折角,身につけた登山用の衣類を脱ぎかける.
部屋の暖房をオンにして,時計を見る.まだ,5時少し前.
「今からなら,まだ1番バスに間に合うな・・」
また,出掛けるか出掛けないか,焦るような気分で迷う.
・・・で,結局,意を決して,5時10分に家の外へ出る.まだ辺りは真っ暗で寒い.西の空にまん丸な月が地平線に沈みかけている.
大船から小田原経由で小田急線渋沢駅へ.そして,大倉行1番バスに乗る頃,ようやく辺りが明るくなる.1番バスはこの時期の平日にしては,結構沢山の登山客が乗車している.全部で16~17名は居るだろうか.その中に韋駄天のTさん,努力家のO川さん,それに女性のM田さんなどのご常連の顔が見えている.
バスが大倉に到着すると,ご常連の皆さんは,塔ノ岳を目指して,ソソクサと歩き出す.私は腹の具合が今ひとつなので,トイレに立ち寄るなどしているうちに,ご常連さんより10分ほど遅れて,7時10分に大倉から歩き出す.
■長い影法師
この所,乾燥の晴天が続いているので,登山道はカラカラに乾いている.ずいぶんと歩きやすい.今日の自分の体調が良いのか悪いのか,少し歩かないとハッキリとは分からないが,とにかく慎重に歩こうと自分自身に言い聞かせる.
歩き出すと,たった今,水平線から昇ったばかりの太陽が私の背中に当たる.て路面には,とても長い私の影法師が一緒に歩いている.これが実に面白い.
影法師を眺めながら,
「今日も良い天気だな~ぁ・・」
と心が弾んでくる.
冷たいけれども,透明な朝の空気が私の気分をますます高揚させる.この文だと,どうやら体調もそう悪くはなさそうである.そこで,私はごく普通の定速で歩き続ける.それでも,途中で同じバスに乗っていた登山客を何人かを追い越させていただく.
ご常連の韋駄天組は,もうずっと先を歩いている.今日は駆けっこの若者も居ないので,私を追い越していく連中も居ない.暫くすると私の前後にはほとんど人影がなくなる.私は真横から射し込んでくる朝日を浴びながら,のびのびした気分で登り続ける.
■堀山の家を通過
8時15分,駒止茶屋に到着する.辺りはひっそりと静まり返っている.大倉を歩き出してから1時間05分経過している.
「(1時間を)5分オーバーか・・まだまだだな」
私は自分の体力を自己評価しながら通過する.でも,まあ,こんなものかなと半分納得する.
駒止茶屋の気温は4℃.でも,泥を被ったまま凍結した霜柱が続くようになる.
堀山の尾根に出る.今日も富士山が良く見えている.ここで,富士山の写真を数枚撮るという儀式を済ませる.
下り坂を通過してから少し登り返して,8時32分,堀山の家を通過する.辺りには人影が全くない.小草平から,あいかわらず富士山が良く見えている.
■萱場平
堀山の家から始まる急坂に差し掛かる.これまでペースを落として歩いてきたたためか,今のところ,全く疲労感がない.結構,楽に登り続けることができる.
「ははあ・・今日の体調は,まあ,まあ,・・・かな?」
私は少し安心した気分になる.
露岩帯から長い階段が始まる.見晴山荘からの急坂で遙か上を歩いていた初老の紳士に追いつく.
「スミマセン・・とりあえず先に行かせて下さい.」
と挨拶して,階段で並ぶ.男性が私に,ハアハアする息の合間に,
「・・何時も,(塔ノ岳へ)登っておられるんですか?・・お強いですね」
と話しかける.
これを切っ掛けにして,ほんの1分ほど雑談をする.たまにしか登山しない方に強いですねといわれても.ちっとも嬉しくない.
8時50分,萱場平に到着する.広場には残雪がほんの少し見えている.
■花立山荘から花立山へ
後7分坂を6分で登って,9時09分に花立山荘を通過する.2人の先客がベンチで休憩を取っている.相変わらず,ここからも富士山がスッキリと見えている.
体調が良いので,そのまま速度を落とさずに花立山まで登る.山頂からの眺望が一段と開け,晴れ渡った青空のもとに富士山と南アルプスが一段と綺麗に見えている.
■塔ノ岳山頂
花立山を通過すると,金冷シまでの間に,短い下り坂が2カ所ある.例年,ここは残雪が凍結して滑りやすくなり,結構,危険なところである.今日も,ここには凍結した残雪がベッタリと残っている.滑りやすいので,慎重に進む.
山頂近くで,下山してくる韋駄天のTさんとすれ違う.
もうすぐ山頂という所で,若いカップルに追いつく.もう山頂間近で追い抜くこともないので,二人の後に付いて登り続ける.すると,二人は,
「どうぞ,お先に・・」
とハアハア息で私に道を譲る.
「もうすぐ山頂ですから,どうぞそのままお先にどうぞ・・」
と遠慮する.それでも先に行ってくれという.
9時37分,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間27分.金冷シ付近の凍結した道を慎重に歩いたことを考慮すれば,私にはマアマアの時間だろう.山頂の気温はマイナス3.0℃.
山頂からの眺望は,今日を素晴らしい.青空の下で,真っ白な富士山と南アルプスの山々が手に取るように見えている.素晴らしい開放感.やっぱり登ってきて良かったなと思う.
■尊仏山荘
山頂からのパノラマ写真を撮ってから,尊仏山荘へ向かう.
すると,どこからともなくミー君が私の足許に寄ってくる.そして,入口で私を見上げる.
「・・早く入口の扉を開けてくれ・・・」
と仕草で私を督促する.
少々意地悪だが,ミー君の写真を数枚撮るまで,扉を開けるのはお預け.ジッと扉が開くのを待っているミー君の写真を数枚撮ってから,やっと扉を開けてやる.
山荘に入る.先客は誰も居ない.
声を掛けると,後ろの部屋からオーナーのHさんが,ヌッと現れる.
「・・ラっしゃい・・」
と髭の奥から私に挨拶する.
何時ものように,300円也のお茶を所望する.
お茶を飲みながら雑談をしていると,ご常連らしい男女二人組が山荘に入ってくる.男性が,
「(小屋番の)Oさんは,まだ復帰していないんですか?」
とHさんに質問する.それが切っ掛けになり,Oさんのことや,ミー君がOさんを覚えていたかなど雑談が続く.
そうこうしている内に,大倉を私より10分ほど早く出たMさんが到着する.
「あれ・・どこで追い抜いたんでしょうか?」
私は怪訝な顔をする.
その内に,Oさんの怪我の話から,Hさんの奥さんが自宅で骨折したことに話題が移る.
怪我は往々にして何でもないところでするようである.かく言う私も,山の危険箇所や難所で怪我をしたことはないが.鎌倉の源氏山公園で,ひどい捻挫をした経験がある.一見安全そうな所が,実は一番危険だという教訓である.
■ユックリ下山
大倉発12時22分のバスに乗りたい.十分に時間を取って,10時03分に尊仏山荘を出発する.Mさんが,
「FHさんなら,今からでも11時52分に間に合あうでしょう・・」
という.
確かに,急げば1時間45分程度で下山したことがあるが,危険を避けるために2時間10分程度掛けることにしている.
金冷シ手前の長い坂を下っていると,堀山の家付近の露岩帯で追い越させて戴いた男性とすれ違う.
「おや,もう,下山ですか・・・さすがに速いですね」
とビックリしている.
実はビックリするのは私の方である.同じ1番バスの乗っていた韋駄天のTさんは,もうそろそろ大倉へ下山している頃である.それに較べて,私はまだ山頂付近でウロウロしている.
私も常連の一角にありながら,彼らに比較すれば,何時も1時間程度遅れてしまう.これはやむを得ないことなのだが,何時も情けなく思っていることでもある.
堀山の家付近まで下山すると,気温がぐっと温かくなる.柔らかい冬の日射しを浴びながら,堀山の尾根道をユックリと歩く.実に心地よい.何とも言えない幸福感に満たされる.これだから,山登りが止められない.
予定通り12時13分にバス停大倉に到着する.12時22分発のバスに乗車.小田急線と東海道本線を乗り継いで,14時少し過ぎに無事帰宅.
やっぱり,塔ノ岳に出掛けて良かったなと思いながら入浴する.
<ラップタイム>
7:10 大倉 発
7:27 観音茶屋
7:46 見晴茶屋
8:15 駒止茶屋
8:32 堀山の家
9:09 花立山荘(+4℃)
9:24 金冷シ
9:37 塔ノ岳山頂 着(-3.0℃)
===================================
10:03 塔ノ岳山頂 発
10:16 金冷シ
10:29 花立山荘
11:05 堀山の家
11:20 駒止茶屋
11:44 見晴茶屋
11:56 観音茶屋
12:13 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:10
塔ノ岳 着 9:37
(所要時間) 2時間27分(2.45h)
登攀速度 1269m/2.45h=518.0m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:03
大倉 着 12:22
(所要時間) 2時間19分(2.32h)
下降速度 1269m/2.32h=547.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/378d1bc82ef4eb9920a10a2810356963
「塔ノ岳」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/cac907395e2b793689ca000fb2917268
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f6ba4af9b8bbb1fcc09fe1f88c612fe2
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