残月録

残月がやがて消えていく間にも、私の日常生活の中に何か一瞬の輝きを求めて写真を撮っています.

落葉松

2021-03-12 13:15:47 | 日記


からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。

からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて。
また細く道はつづけり。

からまつの林の奥も、
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。

からまつの林の道は、
われのみか、ひともかよいぬ。
細々と通ふ道なり。
さびさびといそぐみちなり。

からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり。
からまつとささやきにけり。

からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのそのまたうへに。

からまつの林の雨は、
さびしけどいよいよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。

世の中よ、あはれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がはの音。
からまつにからまつのかぜ。

昨日北原白秋
のブログ書いていたらこの詩がでてきて
暗い高校時代(当時本人は決して暗いとは
思っていなかった)を思い出して、
懐かしく感じた。
数学以外の高校の教師の授業はつまらなくって、
落第しない程度にさぼってばかりいた。
旺文社の蛍雪時代とラジオ講座が唯一の
友達であった。そんな時代に出会ったのがこの詩
です。心に沁みた。例えば高村光太郎
の「道程」なんか教師は良い詩というけれど、
どこがや、と思っていた。とまぁ
青臭い若造の時代を一時なつかしんでいました。