≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

ミシェル・ブヴァール オルガンリサイタル に行った。

2022-11-22 19:01:40 | 音楽


5月末に松本市音楽文化ホールで催された 桒形亜樹子チェンバロリサイタル を観たときにステージ奥のパイプオルガンを見て、ぜひ聴きたいと思っていたのだ。

ブヴァール氏が何者かも知らずに聴いたのだが、素晴らしかった。
ブヴァール氏はベルサイユ宮殿王室礼拝堂専属オルガニストのうちのひとりだ。  ←Les organistes de la Chapelle Royale de Versailles / The organists of the Royal Chapel 動画
高名な方だった!


第1部と第2部ではずいぶん趣が違った。

1曲目、華々しくも壮麗な L. マルシャン:オルガン曲集第3巻より「グラン・ディアローグ」だ。
ルイ14世の入場曲だ、というようなことをブヴァール氏は言っていた(アシスタント翻訳)。
ベルサイユ宮殿とはこういうところなのか、と思いをはせる。

次はマルシャンの好敵手、F.クープランだ。
F. クープラン:クラヴサン曲集第3巻 第15オルドルより「ショワジのミュゼット~タヴェルニのミュゼット」【3手連弾】。
明るくて気品があるけれどフォークっぽい味わいもある。
低めのAがずっと鳴っているのが印象的で、それがバクパイプの通奏低音ぽくてフォークっぽいのかな。
2台のクラヴサン(チェンバロ)用に書かれた曲。4手用だが、オルガンにはペダルがあるから3手でいいんだな。3本目の手は奥様の宇山=ブヴァール康子氏だ。

このリサイタルでは康子氏がアシスタントをしていた。
曲によっては譜めくりだけでなくキーを押していたりした。どうも パイプオルガンのアシスタントは仕事が多い ようだ。

そしてバッハの曲だがオルガン用に書かれたものではないものから ブヴァール氏の師A.イゾワール氏の編曲したもの3曲。
管弦楽組曲第3番二短調BWV 1068 よりアリア。いわゆる「G線上のアリア」です。高雅なテーマだね。  ←後述アルバムより

4台のチェンバロのための協奏曲イ短調 BWV 1065 (A.ビバルディ:4つのヴァイオリンのための協奏曲ロ短調 Op3-10 の編曲)をさらにイゾワール氏が編曲。ヴィヴァルディらしいテーマ。  Allegro  Largo  Allegro ←後述アルバムより

そのあとはバッハのシュープラー・コラール集から 有名な「目覚めよと呼ぶ声あり」BWV 645 をイゾワール氏の編曲によりまろやかな旋律を加えたもの。  ←後述アルバムより
これらバッハをアレンジした3曲は、2016年に出たアルバム Michel Bouvard Bach-Isoir: Transcriptions におさめられている。

第1部の最後はモーツァルトのディヴェルティメント第9番変ロ長調をブヴァール氏自身の編曲で4手連弾。

有名で耳馴染みのよい曲を ひと味違う素敵なアレンジであっと驚かしてくれた。
オルガンってこんなに華やかなんだ!というのが新たな発見だ。


有名な曲だからこそブヴァール氏の演奏が卓越していることがよく伝わった。
フレーズのうたい方が違う、というのはすぐに分かった。でも具体的にどう違うのか言語化できない。出来ないから真似できないのが悔しい。
別にテンポが遅いわけではないのだが、とてもゆったり聞こえるのだ。やたらとルバートをかけたりとかテンポが揺れまくることは全くない。安心して身を委ねられる。
とても自然に聞こえる演奏なのだ。聴く者を構えさせることなくどんどん染み込む感じ。ふわっと広がるイメージ。ブヴァール氏すごい!
人懐こそうな笑顔が演奏にマッチしたブヴァール氏は あっという間に聴衆をもっていった。



第2部は 19世紀と20世紀のフランスの作曲家によるオルガン曲だ。
今年はセザール・フランクの生誕200年で、それを記念してフランクのオルガン作品全曲を録音したアルバムをブヴァール氏は出したそうだ。 タワレコ「フランス・オルガン界の重鎮、ミシェル・ブヴァールの新録音!フランク:オルガン作品集(2枚組)」

第2部1曲目はフランク初期の作品:前奏曲、フーガと変奏曲 ロ短調 Op. 18。
有名な曲で、わたしはほかの人の演奏も聴いたことがある。  ←ブヴァール氏の新作アルバムより
テーマが沁みる。この曲は自分で弾いてみたい。

2曲目もC. フランクだが晩年の作品 :コラール第3番 イ短調。大作だ。幽玄で 時間も空間も大きく広がった感じがした。赦しを与えてくれるような。  ←ブヴァール氏の新作アルバムより
パイプオルガンのポテンシャルを引き出したフランクの作曲とそれを具現化できるブヴァール氏に圧倒された。

3曲目はフランスの20世紀の作曲家、M. デュリュフレ:前奏曲 変ホ短調 Op. 5 より。これも大作。ラヴェルを思い出させるような部分もあった。そこが20世紀っぽくて、ずいぶん時代がくだったと感慨をおぼえる。

2曲目と3曲目の演奏はすぐには始めず、かなり集中していたように見えた。

そのあとはブヴァール氏の祖父でオルガニスト、作曲家のジャン・ブヴァールの作品を2つ。
J. ブヴァール:ヴォージュ地方のノエル。クリスマスを心待ちにする気分の可愛らしい曲だ。しんしんと雪が降るようだ。
J. ブヴァール:バスク地方のノエルによる変奏曲。こちらはすこし物悲しい感じ。バリエーションを重ねていって最後は華々しい。  ←ブヴァール氏の演奏

聴衆を飽きさせない構成だった。

アンコールは2曲あった。
康子氏と連弾でビバルディ『四季』より「冬」2楽章のテーマ。ゆったり気品のある有名なテーマだ。
最後の曲名はちゃんと聞き取れなかったんだよなあ。 J. ブヴァールのノエルだったような気がするんだけど。 J.ブヴァール『Noels Traditionnels』 という譜面が出版されているから、そこからかなあ。

素晴らしいコンサートだった。ほう、とため息をつきつつも興奮がなかなか冷めなかった。このコンサートに行けて本当によかった。


パイプオルガン というとわたしはついバッハを思い浮かべてしまうけれど、もっと広がりがあるんだなあ、と思った。それはチェンバロについてもいえることで、ついついバッハばかり弾いてしまうけれど、フランスに沢山あるんだよ、というのを知ったのはそんなにまえじゃないし。
バッハとフランスとではずいぶん雰囲気が違っていて、フランスの音楽も魅力的だなあ。ピアノだったらフォーレとかドビュッシーとかサティとかラヴェルとか思い浮かぶんだけど、オルガンにもそういう匂いはある。

ヤマハのサイトに2011年のブヴァール氏のよいインタヴューがあった。 「ミシェル・ブヴァール来日公演記念スペシャルインタビュー
  >日本では、「オルガン イコール バッハ」のようなイメージを持たれがちで、フランスのオルガン音楽の魅力は必ずしも広く多くの方に知られていませんが、
  >一般的に言えば、ドイツのオルガン音楽の真髄はポリフォニー(多声音楽)の要素が強いのに対して、フランスのオルガン音楽の真髄は、何よりも「きらめく音が調和する色彩」を求めるものです。ガブリエル・フォーレやドビュッシー、ラヴェルの作品を思い起こしてみてください! 
納得!

フランクのアルバムを出してのこのツアーで、松本市音楽文化ホール以外にもブヴァール氏は何ヶ所もコンサートを開いたようだが、水戸芸術館のサイトにコンサートの雰囲気の分かる写真がいくつもアップされていた。 「「ミシェル・ブヴァール オルガン・リサイタル」お客様からのご感想


松本市音楽文化ホールのパイプオルガンはとてもよかった。オルガンに合ったホールなんだな。
またここで素敵な音楽を体験したい。


コンサートのチラシはもらいそびれた。
↓コンサートのパンフレット、松本市音楽文化ホールの広報誌に載っていたブヴァール氏の箇所、そしてオルガン講座受講生募集の紙。
じつは来年のチェンバロ講習を狙っているんだけれど、オルガンもいいなあ! 山道を走るから冬季はやめるけどね



 

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