進化論の話をするのに引き合いに出されるのは ガラパゴスのマネシツグミ類とかリクガメ類とかイグアナ類とかオオシモフリエダシャクか、と思っていたが、こんなにもカタツムリが立役者だったとは知らなかった。
千葉聡『歌うカタツムリ―進化とらせんの物語』 ←アマゾンへリンク
この本によると、ダーウィンはガラパゴス諸島の3つの島でガラパゴス固有のトウガタマイマイの仲間を15種採集したらしい。そして、彼の著作『ビーグル号航海記』にインスパイアされたギュリックが ハワイ諸島固有のカタツムリの研究をまとめてダーウィンに会いに行く、というところから話が始まる。
進化の原動力は 自然選択 なのか、それとも 遺伝的浮動 なのか? と記すのはあまりにも単純化しすぎだ。
多くの研究者がそれぞれの論を闘わせてゆく流れを読ませてくれる本である。古い論の上に立脚する論や 一見ひっくり返すように見える論を驚きをもって読ませるだけでなく、それぞれの研究者の立場や系譜も述べられていて、そのバランスのよさが並みではない。
本に新たな研究者や論が出てくる中で、中立説の雄 木村資生 があらわれたのには、待ってました!と膝を叩いた。
木村資生『生物進化を考える』 ←アマゾンへリンク。1988年出版の本だが、出た当時に読んだショックは忘れられない。
時代は下る。著者が研究を始めるきっかけに至る。そして後進を育ててゆく記述もある。
細将貴『右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化』 ←アマゾンへリンク。先だって読んだこの本に繋がるとは! あ、カタツムリか。
そういえば、『歌うカタツムリ―進化とらせんの物語』にはカタツムリの恋矢についても少し記述があったな。以前 読んだ メノ・スヒルトハウゼン『ダーウィンの覗き穴』、日高トモキチ『マンガ版 ダーウィンの覗き穴』にカタツムリの恋矢の話があったので、ははあアレか、と楽しめたよ。
『歌うカタツムリ―進化とらせんの物語』は、文章がとてもよい。この本なら生物学や進化に食いつくタイプでなくとも面白く読めると思う。第71回毎日出版文化賞を受賞したのも納得できる。この本を読んで受けた衝撃は、第29回サントリー学芸賞受賞の 福岡伸一『生物と無生物のあいだ』を読んだときのものを上回る。
『歌うカタツムリ―進化とらせんの物語』、オススメです
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