というわけで、しばらくチャーリーの回想にお付き合い願いたい。
昔はよかったな～。ダンスクラブがごろごろあった。松下、シャン、ラテンクオーター、花馬車、豊見城や糸満など田舎の各地すら、鈴なり。毎夜毎夜、ダンスと歌（カラオケは無く生バンドで伴奏）で華やかしたもんじゃ。チャーリとバンマス昌樹の２人組、ＪＡＺＺ勉強と称して遊び呆けておったわい。ある晩、元、同じホールのハコバン（専属バンド）仲間、たっちゅーの勤務するＶＦ（牧港）にＪＡＺＺ勉強に行った時の出来事。
受付で入場料金を払おうとしていると、背後に人の気配とくぐった声で「ぐふ、ぐふ わだし１人で入るのハズかし ぐふ。いずっしょにいい？」振り返るワシの視界にはオオサンショウウオが三つ編みをしてフレアスカートはいて、顔面をピカソ風メイクのどこぞの施設から脱走？みたいな化け物。ワシは死んだふりしておったが、バンマス昌樹、こやつ普段から何も考えず、ノリだけで生きておる怖いもの知らず「い～い～よ～」の一声。「ぐふ ぐれし～」とヤツ。
入場後、ワシらの後にぴったり張り付く姿は周りの視線を１人占め。入ってしまえばお前さんとはここでお別れあばよ～と思っていると、シートまで来るは、そばに座るは、「ビールみっちゅ～」など大声でボーイを呼びつけ、精一杯の笑顔で「わだしマチコよるじく、あんたの名は？」とヌカしおったので、とっさに「たっちゅ」と元同僚（今演奏中）の名をかたってもうた。
同名のマチコさんが読んどったらゴメンナサイね。偶然です。
「たっちゅさんどこの人、踊るね～ぐふ。はいびーる」マチコの尻が、わしの細身の全身を牛～牛と浴びせ倒しの地獄のハロウィン状態。「何処かつれていって～ぐふ」お付き合いしたいず～」マチコのテンションは上がりぱなし、薄れ行く意識しむかもしれん。苦し紛れに見る向こう正面バンマス昌樹はへらへら笑うのみ。苦しみの記憶と蘇る記憶。そうじゃ！！、わしも細かった、今でこそ牛じゃが、スリムでロン毛でもてたな～。ジュンちちゃあん。みどり～。マキ。その他、ああ、皆いい子じゃったわい。・・・・・・・・・・・・ ぐふ ぐふ ぐぶ いかん、遺憾、いかん、わしがマチコになってもうた。
苦し紛れに「僕らバンドなんです。次のステージからお仕事ですよ～遊べんわい」と言い放ち、脱出を図る。演奏が終わりインターバルに本物のたっちゅがわしら３人組を見てのぞける。
「チャリー何だこの化け物どひふ」あわててたっちゅの口をふさぎいきさつを説明し、「これここにお困りの知人がおって、やはりここは武士の情けひとつ貴殿に骨を折っていただいてお助け召されよたっちゅ殿、そこもととは同じ釜の飯を食んだ仲ではないか」と説得でＯＫ
演奏が始まるとバンマス昌樹はギター。チャリーはテンパレスでマンボＮｏ５など何食わぬ顔でプレイ。内心は大脱走、作戦決行近し。でマチコは奥のシートで１人（誰も誘わない）大人しく着席。演奏が終わったら一緒に遊ぼうねと言い聞かせなのでとりあえずセーフ。
決行の時は来た。５曲目チークタイムで一斉に照明が落とされ、暗く妖しい世界にチェンジ。今だ！！ 素早くステージ脇からバックステージをスルーして、出口方面に引田天功うふ。
マチコが異変に気づいたのは照明が変わり、華やかなラテンナンバーが始まった時だ。バンマス昌樹と愛する（多分）チャーリの姿が忽然と消えているのだ。マチコその巨体に似合わずモウ（牛）スピードでステージに突進しバンドマン全員睨みつけたり、キョロキョロあたりを見回したり、イナイぐふ、たっちゅさんぐふ、気が付けば三つ編みは落ち武者の如くザンギリ状態。ステージ上のバンドに相対して仁王立ち。バンマス昌樹とチャーリ逃げるのを忘れ（でも見つかったら死刑）柱の陰で、その化け物を怖いもの見たさの高みの見物。
しばしの間をおいてホールに響くマチコの絶叫「たっちゅ～」マチコの目の前の本物たっちゅは意味が解らん、自分はたっちゅうこの化け物が絶叫するたっちゅう～はどのたっちゅう？
無責任バンマス昌樹はぐふふふふぎや～と大笑い。つられたチゃーリもだだだだははははは。笑いすぎて腰砕け、今、見つかったら逃げれんと思うと恐怖が増して、２人そろつてぎやはははははは～マチコは「だっちゅ～」わしらは、ぎやはははマチコは「ぐえ～ぐえ～」ぎやははぐえ～で大合唱へろへろになりながら、無事生還。
後日たっちゅう大先輩に怒られました。その後えらい騒ぎでマチコを退場させるため、ひと悶着あったらしい。わしは知らんけど。
登場人物は全て仮名です。心当たりのある人物が登場しているとお考えのあなた、気のせいですよ。
長々とお付き合いくださいましてありがとうごぜいます。
ＢＹ チャーリＨＡＣＨＩ
