夏祭りの夜、調子に乗って飲み過ぎたハチ公は酔いを醒まそうと、一人、会場近くの小高い丘にある公園に歩いて行った。ほんの10分ほどの距離なのだが、さっきまでの祭りの喧騒は嘘のように消えた。公園の後ろ側には神社があり、そのせいか緑に溢れた、ちょっとした森の様な世界は快適である。誰もいないのが不思議なほどだ。
公園の芝生に腰を下ろし祭り会場を見れば、電飾の灯りが遥か遠くの別世界のようにきらめく。あ~あ、と声をあげながら寝そべれば空には満天の星。ギャラクシィ?天の川?あの一際輝く星はなんていう星かな?と思っていたら、酔いのせいか眠りに落ちた。
目が覚めればすでに夜明け。あらら、やっちまったな~と反省しつつ帰宅。その後普段と変らぬ生活を続けていたのだが、季節が秋に移ろうと言う頃、異変が起こり始める。得体のしれない漠然とした不安感に駆られたハチ公は、信頼する総合病院のドクター比嘉に助けを求める。
「比嘉先生、最近どうも変なんです、こう、体調が悪いわけではないんですけど、恥ずかしい話ですがインポ気味になってしまって・・・」
「わかりました。出来るだけ細かい検査と後、心理的な部分のチェックもやりましょうね。ハチ公さんが納得するまで責任もって対応します」
結果、体には異常なし。メンタルチェックの5分間のスライドヌードを見て、イイねボタンを押し続ける作業で278回押しまくると言う好成績を残した。何の問題も無いはずだがハチ公の言うとおり、陰茎は硬く勃起するものの水平以下の、まるで重しを下げているかのような状態。ここでドクター比嘉が提案する。
「退行睡眠で少し前の自分を確認してみますか?」「お願いします」
心理学者でもあるドクター比嘉の導きであっと言う間に深いが半覚醒状態になったハチ公は・・・
「あ~綺麗な星空ね、あの一番明るい星は・・・あれ?動いている、どんどん近づいてくる、まさか~~?銀色から真っ黒に色が変わった、ブ――――――――――――――――ーンと低いハミング音が聞こえてきた、あ、なんだこの生き物は?人間の形をしているが目がデカくて身長は1メートルで銀色、コラ、何するか、下半身がこそばゆい、アガー痛てて、くすぐったい、こら止めんか~うひひ~気持ち好か~」ぴくぴく。
こうして真相が明らかになった。宇宙人によるインプラントが陰茎勃起角度の低下の原因であったのだ。さらにドクター比嘉の検査で(1)バイオ素材にコーティングされ(レントゲンにも映らない)(2)長さ5センチ直径0,5ミリ(3)本体は地球上に無い超重量のある弾力性をもった未知の金属であることが解明された。この様な小さな機器が重さ500g(小さなペットボトルに相当)もあるので、いくら勃起させても鎌首持ち上がるのは重すぎて無理である。(嘘だと思ったらやってみろ)
「先生、何のためにこんなことを?」「私が思うには人間の女性器の調査の為、挿入する陰茎にインプラントしたのであろう」
「スケベな宇宙人ですね」「そりゃあ、作者がスケベだからそうなるさ」「けけ」
「でも、奴らの計算違いはインプラントが重すぎて役立たずになってしまった事だ・・・」
二人同時に「これぞ、まさしく、筋金入りのインポ~わははははははははははは」
半ば発狂中のふたりの笑い声は止まる事が無かった。 おしまい。
※このオチ「筋金入りのインポ」はモリオバンマスの名言から拝借しました。モリオさんありがとうございます。
よんでくれてありがとうございます。
仕事の無い水曜日の午後に・・・真面目にSFを書いた、小川洋一氏をリスペクトしつつ書きましたが人格の違いが出ました。泣く。