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きたむら・しげる 昭和31年、東京都生まれ。68歳。
55年警察庁入庁。
外事課長などを経て、安倍晋三政権下で首相秘書官や内閣情報官、国家安全保障局長などを歴任した。
令和2年12月に米国政府から国防総省特別功労章を受章。
3年7月に国家安保局長を退任した。
5年12月に台湾総統府から大綬景星勲章。
現在は北村エコノミックセキュリティ代表を務める。
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安倍晋三政権で国家安全保障局長や内閣情報官を務めた北村滋氏が新著「外事警察秘録」(文芸春秋)を出版した。
北村氏は警察官僚としてキャリアをスタートし、北朝鮮による日本人拉致問題、オウム真理教事件、中露によるスパイの暗躍などに長年対峙してきたことから「インテリジェンスマスター」と呼ばれる。
新著は当事者の視点から「平成の裏面史」を振り返った渾身の作品で、北村氏に執筆にあたっての思いを聞いた。
--「外事警察秘録」を出版した狙いは
「昭和55年に警察庁に入庁し、令和3年に国家安保局長を最後に公務員人生にピリオドを打つまで、キャリアの大半をインテリジェンスに携わってきた。外事警察から見た平成史というものを書きたかったというのが動機だ」
--外事警察は外国スパイの取り締まりなどにあたるが、実態はあまり国民に知られていない
「私は外事警察は国家主権と不即不離のものだと考えている。
外事警察は明治27年に治外法権を認めた幕末の不平等条約の改正に伴って発足した。
敗戦後の連合国軍総司令部(GHQ)による占領期に活動を停止し、昭和27年のサンフランシスコ講和条約とともに復活している。
こうした外事警察の歴史をインサイダーの立場で振り返ることは重要だと考えた」
--著書で取り上げた在京中国大使館の一等書記官だった李春光(リ・シュンコウ)
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中国一等書記官スパイ疑惑は事後処理が一大事
本物に失礼すぎないか~中国株式会社の研究(165)
2012.6.1(金)宮家 邦彦
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李春光は1967年生まれ、57歳、89年に河南大学(人民解放軍外国語学院説もある)日本語学科を卒業。
89年洛陽市政府国際文化交流センター、93年に福島県須賀川市国際交流員、97年福島大学、99年松下政経塾、2003年東大東洋文化研究所などに在籍したという。
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によるスパイ事件では、日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加入を妨げ、当時はTPPに積極的だった米国との間にくさびを打つため、中国人スパイが暗躍した実態が語られた。
「スパイは李だけではない。旧ソ連の国家保安委員会(KGB)のレフチェンコもそうだ。
レフチェンコ
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レフチェンコの活動[ソースを編集]
「ヒューミント」、「獲得工作」、「偏向報道」、「心理戦」、「間接侵略」、および「シャープパワー」も参照
レフチェンコが在日中に担当したのは積極工作部門。
政界や財界、マスコミ関係者と接触し、北方領土問題を抱え米国と同盟関係にある日本の世論や政策が親ソ的なものとなるように仕向け[3][4][5][6][7]、最終的には日米関係を損なわせること(離間工作)などを目的に、懐柔した日本人協力者を利用して様々な謀略活動を行っていた[1]。
また、中ソ国境紛争を含む中ソ対立の最中に日中国交正常化されており、反ソ的な過激派の京浜安保共闘やML派などと思想的に近かった中国と距離を置くよう中立化させることも目的とされた。
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は、いかにわが国世論をソ連寄りにするかということで活動し、李と同様に日米離間を図っていた。
たった今のこの瞬間でも外事警察は、こうしたスパイを抑止するための仕事をしているだろう」
--実際にインテリジェンスの現場を踏んできた経験は後に官邸での仕事にも役に立ったか
「国家安全保障局長時代に手がけた経済安全保障などは、外事警察としての自分の体験が政策に生かせたものだったと思う」
--国家安保局長時代には各国の首脳や要人と会談した。
著書でも令和2年のロシアのプーチン大統領との会談が取り上げた。
KGB出身のプーチン氏が去り際、北村氏に「同じ業種の仲間だよな、君は」と声をかける場面は印象に残る
「あの会談は、当時の日露平和条約交渉の中で行われた。
プーチン氏
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の人心収攬(しゅうらん)術かどうかは分からないが、非常に人のことを調べている人物だとは思った」
--著書は北村氏が長年仕えた安倍晋三元首相が4年の銃撃事件で死去したことを追想する章で締めくくった
「(安倍氏は)的確な羅針盤のような方だったし、国の行く方向を示しながら国家運営にあたられた。
その羅針盤を失ってわが国はどうしていくのか。
それは代わりになる羅針盤を見つけるしかないし、岸田文雄首相がその役割を果たしていると思う。
①反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や
➁9年度に防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針、
➂経済安全保障推進法の成立などを導いてきたことは大きいと思う」
--拉致問題に長年関わってきた。今月、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長
が談話で岸田首相の訪朝の可能性に言及したが、どう分析するか
「北朝鮮は今、米国との関係で打つ手がない。
9月の露朝首脳会談でロシアにはかなり接近したかもしれないが、やはり西側にも窓口がほしい。
その窓口になり得るのはわが国だと狙いを定めているのだと思う」
「ただ、与正氏の談話の中では日本人拉致問題
に関し、『解決済み』との北朝鮮の立場を受け入れ、『障害物』にしなければ、両国が『近づけない理由はない』との見解を示している。
わが国を瀬踏みしているのだと思うが、正恩氏との会談を餌に飛びついてくるかどうかを見ているとすれば、これは乗れる話ではないだろう」
(聞き手 永原慎吾)