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ユニクロ輸入停止は日本への警告か2021.5.25細川 昌彦

2022-03-01 17:31:26 | 連絡
細川 昌彦
ほそかわ・まさひこ
明星大学経営学部教授(元経済産業省中部経済産業局長)
1955年1月生まれ。67歳。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長、2002年貿易管理部長など通商交渉を最前線で担当した。
 2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。2020年9月から明星大学経営学部教授。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社)、『暴走トランプと独裁の習近平にどう立ち向かうか』(光文社新書)
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米国の税関当局がファーストリテイリングが運営する「ユニクロ」のシャツ輸入を差し止めた。
中国・新疆ウイグル自治区の団体「新疆生産建設兵団(XPCC)」が関わった衣料品などの輸入を禁止する米国の措置に違反する疑いがあるとされている。




 前稿「G7外相会合で露呈した『人権問題』という日本のアキレス腱」で、「企業は米欧と中国の板挟み」と指摘したが、まさにそれが現実のものとなった。
 中国の新疆ウイグルの人権問題を巡る米欧と中国の対立が通商にも波及し、日本企業も深刻なリスクに直面している。
〇公表した米国の政治的意図は?
米通商代表部(USTR)は3月1日、バイデン政権の通商政策に関する報告書を議会に提出した。その中で中国の人権侵害問題に「最優先で対処する」とした。
 「米国人や世界の消費者は、強制労働で作られた製品を求めていない」──。報告書では強制労働による製品の貿易を規制する考えを示している。議会との関係でUSTRのタイ代表はこの強制労働問題で成果を出すことが最重要課題になっている。
 タイ代表は就任直後の3月、主要各国のカウンターパートと電話会談をしている。日本は茂木外務大臣と梶山経済産業大臣だ。USTRのホームページを見ると、日本では報道されない実態が浮かび上がってくる。
欧州各国のカウンターパートと次々と行った電話会談では、その主要テーマには全て「強制労働」が挙げられている。ところがどういうわけか日本との電話会談についてはこの言葉の記述がない。米国側関係者への取材によると、茂木大臣との電話会談で取り上げられていたようだが、外務省による発表では一切触れられていない。よほど触れてほしくないのだろう。
日本側の“大本営発表”しか取材しない日本のメディアではそうした実態が浮かび上がってこないのだ。 
今週、5月27・28日には主要7カ国(G7)貿易大臣会合が予定されている。議長国の英国の関係者によると、トラス国際貿易大臣も新疆ウイグルの強制労働問題をG7で扱う意向だという。タイ米国通商代表とともにこの強制労働問題で共振し合い、日本は孤立する状況も予想される。「日本は人権問題になると及び腰で、共同歩調の課題」というのが欧米の政策当局者の間の共通認識だ。 
そうした会議を控えた5月10日にユニクロの輸入差し止めが米国当局から公表された。1月にロサンゼルス港の税関で輸入が差し止められ、3月にユニクロが差し止めの解除を求め、4月に米国の当局がこれを拒否したのが本件の経緯だ。この時点で公表したことには何らかの政治的意図を感じざるを得ない。
前稿で指摘したように、日本の外務省は中国の人権問題に焦点があたらないようにと躍起になっている。しかし6月のG7首脳会議に向けて、この大きな流れは変えられないだろう。 
〇日本企業をどう守るのか
 そうであるならば、日本政府は腰が引けているだけではいけない。
加藤官房長官は記者会見でユニクロの件に関する質問に対して、こうコメントしている。
 「正当な経済活動を確保するよう適切に対応していく」──。それは当然だが、問題は具体的にどのようにしてそれを行うかだ。
 「人権」という“錦の御旗”の下に、自由な企業活動を規制することが正当化される。厄介なのはこうした“錦の御旗”のモノサシがあいまいで、恣意的に運用されかねないことだ。
 日本は過去、「安全保障」というもう一つの“錦の御旗”で苦い経験をしている。1987年の東芝機械ココム違反事件だ。日本から共産圏に輸出された工作機械がソ連の潜水艦のスクリュー音を低減することに使われて、米海軍がソ連の潜水艦を追尾するのを困難にしたとの疑いでの外為法違反事件だ。日米間の深刻な外交問題にまで発展した 。
この事件を契機に日本の輸出管理も抜本的に強化された。
そもそも輸出されたものが最終的に軍事用途に使われるかどうかをチェックするのは難しい。
インテリジェンス機能がないに等しい日本にとって、米国からソ連の潜水艦技術に使われたと言われても、「言いがかりだ」との反論もできない。
 そうした国にとっては、自国企業を他国の恣意的運用から身を守る術が必要なのだ。その一つが、「軍事用途に使わない」との誓約書を輸入者からもらっておくことだ。もちろんそんな誓約書は気休めにすぎない。悪意のある相手には何の効き目もないだろう。しかし最低限、企業としてやるべきことを国際合意して実施し、万が一問題が起こっても一応の申し開きができるようにしておくことは、日本のような政治的に弱い国にとって不可欠だ。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00061/?P=2


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