野口はエクアドルから帰国後、まもなくメキシコ政府から黄熱病の調査の依頼を受取った。メキシコのユカタン半島で黄熱病の流行が発生していたのである。
野口の部下であるクリグラー博士が一足早くメキシコへ向かっていた。野口は一週間ほど遅れてメキシコのメリダに着くと、すぐに上司のFlexner博士に手紙を書いた。
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メリダ 1919年1月2日
Flexner博士殿
我々二人より非常に良いニュースをお知らせ致します。黄熱病院へ送られた後に12月16日に死亡した黄熱病患者の血液と肝臓と腎臓の乳剤を接種されたモルモットのいくつかを観察してきました。クリグラー博士のメリダ到着後すぐでした。彼は培養と接種をすることができました。その患者(死後4時間)の肝臓と腎臓の懸濁液を接種されたモルモットの一匹が数日後典型的な体温曲線を示しました。他の症状が十分に進むのを待たずに彼は私の到着の数日前ににいくつかの新しいモルモットに継代しました。私が12月24日(到着の翌朝)に研究所へ行ったとき、我々はこれらのモルモットを詳細に検査しました。
それらのいくつかは典型的な体温の上昇が始まっていました。12月26日にそのモルモットの一匹の血液と臓器の乳剤を新しいモルモットに転移しました。この朝、体温は105°に上がり、見込みがあるように見えました。午後、体温はまだ高かったので、我々はその動物を検査と継代のため殺すことにしました。
この動物は肺にいくつかの出血斑が見られました。肝臓は少し黄色味がかり、肝臓は膨張していました。そして腸は粘膜上にいくつかの出血斑がありました。組織は少し黄疸を示していました。尿は粒状の円柱と胆汁を不運でいました。その感染の本質として疑いないと考えます。
我々は培養、動物接種及び顕微鏡検査をしました。急いだ実験ではレプトスピラは見つかりませんでした。仕事のこの部分は明朝の時間のあるときにじっくりと行います。
同時に私の前の手紙に書きました患者(No2)の血液と培養液を接種した動物が高熱とアルブミン尿を示しました。しかし明確な黄疸又は出血はありませんでした。しかし一般的な特徴点は明確な感染陽性を示していました。それらは一週間ほどではっきりするでしょう。
培養の実験はカビと雑菌が入りコンタミネーションを起こしていました。しかしいくつかの試験管には動かない(明らかに死んでいる)レプトスピラを我々二人で見つけました。我々の意見ではこれらの微生物(非常に僅か)は暫く増殖し、そしてカビ又は細菌に殺されたと考えます。(略)
我々はまもなくメリダでその微生物を得ることを確信してます。 野口英世 (以上)
野口はメキシコにおいても、黄熱病の病原体はレプトスピラだと考えて突き進んでいる。当然、部下のクリグラーも同様である。
良いニュースをとの書き出しではあるが、内容はそれほど良いニュースではないように思える。先ず、病原体とするレプトスピラが見つからないことと、培養では雑菌が混入するなど決して良いニュースではない。翌日の検査でもレプトスピラは見つからなかった。その他についても明確でない部分は自分に都合の良い解釈をしているように見える。
雑菌が混入した培養液から死んだレプトスピラを見つけたとの記載があるが、これも俄かに信じがたい。暫く増殖してから雑菌に殺されたとあるが、これは殆ど有り得ないことだからである。一般的に雑菌は翌日には増殖している。一方レプトスピラの増殖は遅く数日しないと増殖しない。雑菌の増殖前にレプトスピラが増殖することは普通有り得ないのである。研究者の陥りやすいのは、こうあって欲しいとの潜在的欲望を持って観察すると自分の都合の良いように見えたりすることである。
野口の部下であるクリグラー博士が一足早くメキシコへ向かっていた。野口は一週間ほど遅れてメキシコのメリダに着くと、すぐに上司のFlexner博士に手紙を書いた。
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メリダ 1919年1月2日
Flexner博士殿
我々二人より非常に良いニュースをお知らせ致します。黄熱病院へ送られた後に12月16日に死亡した黄熱病患者の血液と肝臓と腎臓の乳剤を接種されたモルモットのいくつかを観察してきました。クリグラー博士のメリダ到着後すぐでした。彼は培養と接種をすることができました。その患者(死後4時間)の肝臓と腎臓の懸濁液を接種されたモルモットの一匹が数日後典型的な体温曲線を示しました。他の症状が十分に進むのを待たずに彼は私の到着の数日前ににいくつかの新しいモルモットに継代しました。私が12月24日(到着の翌朝)に研究所へ行ったとき、我々はこれらのモルモットを詳細に検査しました。
それらのいくつかは典型的な体温の上昇が始まっていました。12月26日にそのモルモットの一匹の血液と臓器の乳剤を新しいモルモットに転移しました。この朝、体温は105°に上がり、見込みがあるように見えました。午後、体温はまだ高かったので、我々はその動物を検査と継代のため殺すことにしました。
この動物は肺にいくつかの出血斑が見られました。肝臓は少し黄色味がかり、肝臓は膨張していました。そして腸は粘膜上にいくつかの出血斑がありました。組織は少し黄疸を示していました。尿は粒状の円柱と胆汁を不運でいました。その感染の本質として疑いないと考えます。
我々は培養、動物接種及び顕微鏡検査をしました。急いだ実験ではレプトスピラは見つかりませんでした。仕事のこの部分は明朝の時間のあるときにじっくりと行います。
同時に私の前の手紙に書きました患者(No2)の血液と培養液を接種した動物が高熱とアルブミン尿を示しました。しかし明確な黄疸又は出血はありませんでした。しかし一般的な特徴点は明確な感染陽性を示していました。それらは一週間ほどではっきりするでしょう。
培養の実験はカビと雑菌が入りコンタミネーションを起こしていました。しかしいくつかの試験管には動かない(明らかに死んでいる)レプトスピラを我々二人で見つけました。我々の意見ではこれらの微生物(非常に僅か)は暫く増殖し、そしてカビ又は細菌に殺されたと考えます。(略)
我々はまもなくメリダでその微生物を得ることを確信してます。 野口英世 (以上)
野口はメキシコにおいても、黄熱病の病原体はレプトスピラだと考えて突き進んでいる。当然、部下のクリグラーも同様である。
良いニュースをとの書き出しではあるが、内容はそれほど良いニュースではないように思える。先ず、病原体とするレプトスピラが見つからないことと、培養では雑菌が混入するなど決して良いニュースではない。翌日の検査でもレプトスピラは見つからなかった。その他についても明確でない部分は自分に都合の良い解釈をしているように見える。
雑菌が混入した培養液から死んだレプトスピラを見つけたとの記載があるが、これも俄かに信じがたい。暫く増殖してから雑菌に殺されたとあるが、これは殆ど有り得ないことだからである。一般的に雑菌は翌日には増殖している。一方レプトスピラの増殖は遅く数日しないと増殖しない。雑菌の増殖前にレプトスピラが増殖することは普通有り得ないのである。研究者の陥りやすいのは、こうあって欲しいとの潜在的欲望を持って観察すると自分の都合の良いように見えたりすることである。