金曜ロードジョーで冒頭15分を見て、お、何だ何だ? 面白そうだな!と思った人が多いのではないだろうか?
新海誠の新作長編映画
「すずめの戸締まり」を観てきました。
我が街は全国ニュースになるくらいコロナ蔓延して病院がほぼ全て新患受付拒否という、末期的な状況なので、正直迷いましたが、イオンシネマの換気システムと従業員の徹底した除菌、そして映画を愛する皆んなの慎みを信じて黙って静かに観てきました。勿論、マスクして。
前半(ネタバレ無し)

「戸締まり」というくらいですから、扉が一つのキーワードです。
扉って、開けて出て行く。
新しい世界に行く。
旅に出る。
というメタファーとして使われますね、
確かに「ロードムービー」ではあります。
でも、「自分探しの旅」とは、ちょっと違う感じです。
違う目的があるのです。
さて、「君の名は」「天気の子」そして「すずめの戸締まり」という新海誠長編三作品に共通するテーマがあります。
「自然信仰」
いやいや、天災だろう!と思うかもしれません。勿論そうです。
が、自然信仰とは「自然の祟り」を「納める」為に神にお願いする。ことでしょう。
天災は世界中どこにでもあるのです。
でも、これを「唯一神」に頼むのではなく、それぞれの「神となるもの」で納めるのが日本古来の考え方です。
これは世界でも珍しいことです。
だから「日本人には理解しやすい」テーマですし、逆に「世界では理解しずらい「日本」を理解しやすくする」テーマな訳です。

今回の女子ウケキャラクターである猫に、自然と名前がつきます。(すずめがつけたわけではない)
「ダイジン」とカタカナで表記されています。(劇中のSNSで)

そして後ろの黒猫が
「サダイジン」(劇中である老人がそう呼びます)
なんと、「お久しぶりです」と声をかけるのです。
確かに天災は共通してますが、例えば巫女が作る組紐や口噛み酒、雨の中光が差してる小さな祠、が、今回は「ダイジン」と「サダイジン」な訳です。
ちゃんとわかる人もいるかとは思いますが、随神ですね。社殿を守る神様。
「矢大神」と「左大神」
廃村などの人がいない寂れたところにある「扉」から「ミミズ」と呼ばれる厄災が飛び出す。大きなミミズが天高く昇り地上に落下すると「地震」が起きる。
そのミミズが起こす天災を納めるために「戸締り」をする男、、、
なんか、ワクワクしませんか?
後半(ネタバレあり)
さて、ここからはネタバレありなので、映画を見た人だけ読んでください。
「すずめの戸締り」=「しずめの戸締り」
扉はミミズが出てくる場所ですが、1番最初、扉の中に入ることができない違う世界が見える。というものでした。
草太はすずめが見た世界を「常世」と呼びます。生きてる人は行けないと。
その扉の前の、小さな「何か」に躓き、その何かを引き抜いてしまいます。
それは束石だったわけです。
束石を抜いてしまったせいで、ミミズが現れた。
彼女が束石を抜いた直後、「何か」が「白いフサフサした生き物のようなもの」に変化して逃げ出します。
最初の扉を閉めた2人は、怪我の手当ての為にすずめの部屋に行くのですが、そこに痩せ細った猫が現れます。
すすめはご飯をあげ「うちの子になる」と優しくします。
束石になって扉を守っていたもの。
そうです。社殿を守る「大神」だったわけです。
彼女に抜かれて自由になった大神。
彼女に優しくされ「うちの子になる?」と言われた大神。
彼女が好きになって、うちの子になる為には束石には戻れない。
で、戻そうとする草太を祟って椅子に封じてしまう。
自分が守っていた扉は閉じられてしまった。しかしもう一つ、左大神を抜けば開く扉がある。
その扉を開けて大災害が起これば、それを封じる為の束石が必要になる。
そう、人柱。
草太が封じ込められたすずめが大事に持っていた椅子。
猫が人を祟って災害を防ぐ為に人柱を要求する、、、
怖!w
でも、左大神はおそらく、関東大震災を止める為に束石になった先先代の「戸締師」(だから先代が「お久しぶりです」と声をかけたし、自分はもう動けないから束石になって戸締りできない。孫?の草太がその役割を担ったのなら、その意志を尊重しろと怒った訳です。
この辺は、天災を納める為に人柱になる必要なんかない!という天気の子とは違いますね。
草太を身代わりに自由になった大神。
しかし、すすめに「好きじゃない」言われて力を失います。
旅の途中、おばさんと口論になり何故かダイジンか激しく唸ります。
すると、後ろから現れたのはサダイジン。
サダイジンはダイジンと喧嘩になります。
そして、彼女が扉を求めて現れたのは東北。震災跡。
10年前、1人になった場所。
看護婦だったお母さんがいなくなった場所。
お母さんは、震災で亡くなっていたのです。
彼女の記憶がないのはそのときのことを思い出したくないと言う葛藤から来ていたのです。
小さい時に一度だけきた常世。
死んだ母を探して(死にかけた」記憶。
そして、母だと思っていた人影は未来の自分だった。
現在のすずめは、過去の小さい自分に逢って、「未来の自分を信じて」と手をとって立ち上がらせます。
一緒に暮らして来たおばさん、旅先で出会った同じ年の少女、車に乗せてくれた親子、みんなに助けられてここまで来たすずめだからこそ「やまない雨はない」と小さい自分に言える。扉の先に光はあると。
助けてくれる人たちは沢山いる。と、自分を助けられる。
天気の子は「嫌な大人(ほぼ男)ばっかりでこんな世界の為に犠牲になることはないという少年」の叫びだったけど、今回は「沢山の優しい大人(女性)に助けられて成長した少女」旅。
そう、すずめの戸締りは女性ばっかり!
しかも優しい女性。
例外として2人の大学生がいるんだけど、これがどうにも男臭くない。
いや、むしろ女であってもおかしくない。
これ、本当は女しか出ない映画だったのを無理やりちょっと男に変えたのでは?
と勘繰りたくなる。
まとめ。
私は天気の子の方が好きですが、万人に(特に多くの女性に)好まれるのはこちらではないでしょうか?
勿論、男は「すずめ」が可愛らしいから全てゆるす。そして全編通してのハラハラ感、ドキドキ感、文句なしのエンターテイメント!
そしてリトルカブ好きには今回もたまらない。


前回はピンクの限定が出た気がする、、。
まあ黄色は元々あるからな。
でも、またリトルカブ、売れちゃうな。(もう中古しかないけど)
最後に
私達は毎日のように「行ってきます」と「おかえり」を繰り返す。
その何気ない言葉の実はとてつもなく大事だということを噛み締め、
逆にしっかりと鍵をかけて「いってきます」と未来へ向かっていく被災者の光の向かうに幸あれと、そう思う。