しゅくし・しくし【淑姿】
萩原義雄識
源順編『倭名類聚抄』の序に、
竊以延長第四公主柔德早樹。淑姿如花。呑湖陽於蜩陂。籠山陰於氣岸。
【訓み下し】
窃(ひそ)かに以(もち)ひみるに、延長(エンチヤウ)の第四(ダイシ)公主(コウシユ)は、柔徳(ジウトク)早(つと)に樹(た)ち、淑姿(シクシ)花(はな)の如(ごと)く、湖陽(コヤウ)を胸陂(キヨウヒ)に呑(の)み、山陰(サンイン)やまかげを気岸(キガン)に籠(こ)む。
標記語「淑姿」については、『日国』第二版の当該語見出し語には、初出語例として中世の『三国伝記』〔一四〇七(応永一四)年~四六年頃か〕巻第二・二一と巻第七・四から引用し、
「宮中玲瓏として淑姿の像明かに」
「窈窕(えうてう)淑姿(シクシ)の玉皃を瑩(みが)けり」
としていて、この二例を所載し、それ以前に充る『和名抄』は未載にしている。であるのあれば、巻第二・二一の語例でなく、此の『和名抄』序の語文を用例に据えた方が良いものとみる。同じく『和名抄』序から引用語例とした語に「きようひ【胸陂】」「セツケイ【折桂】」などが見えているので、尚更此の語例についても同様な形式で採録を期待するところとなっている。
《補助資料》
小学館『日本国語大辞典』第二版
しゅくーし【淑姿】〔名〕(「しくし」とも)しとやかな姿。りっぱで美しい姿。*三国伝記〔一四〇七(応永一四)~四六頃か〕二・二一「宮中玲瓏として淑姿の像明かに」*三国伝記〔一四〇七(応永一四)~四六頃か〕七・四「窈窕(えうてう)淑姿(シクシ)の玉皃を瑩(みが)けり」*江戸繁昌記〔一八三二(天保三)~三六〕三・祇園会「垂髪高冠淑姿を誇る」
しくーし【淑姿】〔名〕⇨しゅくし(淑姿)
東京国立博物館本『倭名類聚抄』十卷(昌平本)
大東急記念文庫蔵『倭名類聚抄』二十卷本(天正三年菅為名書写)
東京都立中央図書館河田文庫蔵『倭名類聚抄』(山田本)