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移転価格税制ではなく、消費税、という意外さ。税関での消費税の「清算」を中心に、アップル社のケースを解説。

2022-12-27 10:38:11 | 法学


百億円超える税務事件は大抵、

国境の越えた取引の価格設定で以て、
利益を税率低い国に移す、
という移転価格税制絡みのパターン。

ところが、
税法界隈の脇役、消費税法で、
という点に驚き。

消費税は国内の消費に掛けられるため、外国人観光客らが土産物として海外に持ち出す場合は免税対象となるが、転売目的であれば課税される。

この記述には、補足が必要。

国税庁タックスアンサー
販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。
 
消費地課税主義。付加価値税(消費税を含む)の根幹。

一方、転売目的、
というか、J国で仕入れて、A国で売却する場合、
J国の税関で、
消費税(付加価値税)還付手続きを経ることになります。
この還付によって、輸出国での消費課税を清算。
輸入国では、輸入段階で、つまり、税関でその国の消費課税に基づく付加価値税(消費税)を納付
(税関は関税だけでなく、消費課税の要でもあります)。

つまり、
J国の販売者が
「販売に対応する消費税額を受け取らない」
(≒受取消費税額の減少によって、支払消費税との差額、つまり税務署に納付する消費税額が小さくなる)
ではなく、

仕入れた者が税関で消費税の還付を受ける。

なので、今回の追徴課税は、
「仕入れ者が受けるべき消費税還付」
と同等の経済的利益を、
アップルコンピュータ社日本法人が受けたから、
起きた事態。

なお、輸出の際に発行される

輸出証明書等

が、消費税還付の要となります。
国税庁 の
に詳しい。

(海外旅行者が出国に際して携帯する物品の輸出免税)
7-2-20 出入国管理及び難民認定法第25条《出国の手続》又は同法第60条《日本人の出国》の規定により海外旅行等のため出国する者(非居住者を除く。)が渡航先において贈答用に供するものとして出国に際して携帯する物品(その物品の1個当たりの対価の額が1万円を超えるものに限る。)で、帰国若しくは再入国に際して携帯しないことの明らかなもの又は渡航先において使用若しくは消費をするものについては、当該物品を当該出国する者に譲渡した事業者(法第8条第6項《輸出物品販売場の定義》の規定による輸出物品販売場の許可を受けている者に限る。)が輸出するものとして法第7条第1項《輸出免税等》の規定を適用する。ただし、当該海外旅行等のため出国する者が、渡航先において贈答用に供し帰国若しくは再入国に際して携帯しないものであること、又は渡航先において2年以上使用し、若しくは消費するものであることを誓約した書類を当該事業者に提出した場合及び当該出国する者が出国時に税関長(沖縄地区税関長を含む。以下同じ。)に申請して輸出証明書の交付を受け、これを事業者が保存する場合に限り適用するものとする。
(注) 消費税が免除された物品を携帯して出国した者が、当該免除された物品を携帯して帰国又は再入国した場合(当該物品を携帯して出国した時から2年を経過したものであるときを除く。)には、当該物品について、他の法律により特に消費税を免除することとされているときを除き、消費税が課税される。

ちなみに、
不自然な取引をしていた外国人客らは国内で比較的安く購入したアイフォーンを転売業者を通じて海外などでより高く売却し、差益を得ていた可能性がある。


 
この差額は、
仕入地ではなく、
販売地での販売によってrealizeされる所得。
なので、販売地の税務当局が、課税主体。
日本の出番ではない。
つまり、
日本の所得課税を妨げたケースではない。

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