「お前がね」と私が夫に言いました。
「俺はお前じゃないっ!」と認知症の夫は怒って言いました。
「あら、私はあなたから結婚以来ずっと言われ続けてきたのよ。私があなたに言ったのは最近じゃないの。その言葉、気持ちよくないのよね」
もう4~5回言ってみてるのです。
それ以来彼は私に、「春子さーん!」と呼びます。
よっぽど気持ちがいいらしく、私を呼ぶ回数が増えたようです。何かにつけ呼ばれて困ってもいますが・・・。
私たちは高校の同級生です。彼がいつの間に「お前」と呼ぶようになったのかは覚えていませんが、昭和一桁の何とも言えない時代背景の所為なのかも知れません。
私みたいに類型が嫌いで、はっきりと意思を持って生きてきたと思っている者でも、古い時代を引きずって過ごして来たのですね。
人生の最終章かもしれない時期になって、大改革が起こったのです。悪い気はしませんねぇ。