今日はシャンソンのレッスン日。午前中は我が家で、午後は近くにあるライブハウスで行っています。
この午後のレッスンを受けている25歳のアスペルガー症候群の青年がいます。
彼は、東京の有名私立大学の1年の時引きこもりになりました。熊本の自宅に引き取られて以来、数年の引きこもりが続きました。
その間、家族と一言も会話を交わさないし、親が呼びかけても返事もしない。一歩も家から出ない。つまり、まったく歩かないのです。テレビも見ないし、携帯もさわらない。
昨年その話を聞いて、私の余計なお世話の虫が動き出しました。
ラブレターと称して、ご両親の了解を得て彼に手紙を書き、シャンソンの楽譜、訳詞、私の声で吹き込んだものを送り続けました。
その手紙の内容に沿って、外を歩くようになり、パソコンで私の手紙に返事をくれるようになったのです。
そして驚くことに、今年の2月から私のレッスンを受けています。
最初のレッスンの日の本人の告知は、「僕は昔から声が出ないんです」というものでした。「声はね、出しているうちに誰だって出るようになるのよ」と私。
彼の話声は、私の耳を彼の口元に持っていかなければ聞き取れないし、マイクを通した歌の声もはっきり判別できない有様でした。
こうして彼のレッスンは続き、もう8か月になりました。
地震による被害で紆余曲折を経て、多分来春には今までのライブハウスより広いライブハウス(同じ敷地内)で、オープニングライブができると思いますが、そこで彼は 、「ふるさとの山」と「愛の日々」を歌います。生まれて初めてシャンソンとカンツオーネを人の前で歌います。
音楽の素晴らしさを感じ、人間の素晴らしさを感じながら、ますます人間の絆の強さを今後の人生の糧にしたいと決心した私でした。
ねっ、素敵でしょう!