日本国内でサル痘の報告が急増
同じく増加している梅毒の皮疹とはどう違う?
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/title-1679789269049.jpeg?pri=l&w=800&h=450&order=c2r&cx=0&cy=0&cw=1920&ch=1080&exp=10800)
2023年に入り、日本国内における
サル痘の報告が増加しています。
また日本では梅毒の流行も深刻になっています。
どちらも皮疹が特徴であると言われていますが、
サル痘と梅毒はどう違うのでしょうか。
日本国内でサル痘の報告が増加
![日本におけるサル痘患者の新規感染者数の推移(厚生労働省「サル痘について」より)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/image-1679786256665.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
日本では2023年に入り新たに診断されるサル痘患者が増加しています。
これまでに63例のサル痘の患者が報告されていますが、
その大半が2023年になってから報告されています。
海外では減少しているのとは対照的に、
日本国内では増加が懸念される状況です。
![梅毒の年間報告数の推移(国立感染症研究所のデータより筆者作成)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/image-1679786613389.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
またサル痘と同様に性行為に関連して広がる
梅毒も日本国内で流行しています。
梅毒は2010年頃までは年間数百例の報告数でしたが、
2010年代以降は増加の一途をたどっており、
2022年は12,964例と感染症法の施行以来
初めて年間1万例を超えました。
2021年から比べると約5,000例の増加となっており、
著しく増えていることが分かります。
いずれの疾患も皮疹が特徴と言われていますが、
サル痘と梅毒の症状はどのように違うのでしょうか?
サル痘と梅毒の皮疹はどう違う?
![サル痘の症状(CDC. mpox symptomsより)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/image-1679786856720.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
サル痘は、古典的には発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど
先行する症状が数日持続してから皮疹が出現するとされています。
皮疹は顔面から出現して、全身へと拡大し、
全身の皮疹がある一時点において
すべて同一段階の状態で、赤い発疹から水ぶくれ、
そしてかさぶたになっていくというのが典型的とされます。
しかし、現在のサル痘の流行では、
これまでに知られていた特徴と異なる症状も報告されています。
発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど
先行する症状がない症例も半数ほどあり、
また皮疹の状態もそれぞれの部位で
進み具合が異なる事例が報告されており、
皮疹も特定の部位のみでみられることがあり、
中でも肛門や生殖器の頻度が最も多く、
体幹・四肢、顔、手のひら・足の裏など
でもみられることがあります。
これまでの報告とは異なり、口の中の粘膜や
直腸にも病変がみられることも特徴の一つです。
![サル痘患者でみられる様々な水疱(UK Health Security Agencyより)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/image-1679787098955.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
サル痘の皮疹は水疱という水ぶくれが見られることが特徴です。
通常赤い発疹から水疱になり、さらに水疱から、
中に膿がたまる膿疱になり、それが破れてかさぶたになります。
これまでは水ぶくれの時期、かさぶたになった時期など
様々な時期の皮疹が混在するのが水痘の特徴であり、
サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが
特徴とされていましたが、今回の流行ではサル痘でも
様々な時期の皮疹が混在することがあるようです。
ただし、皮疹の部位が生殖器に多い、というのは
今回の流行におけるサル痘の大きな特徴となります。
![口唇に出現した一期梅毒による潰瘍病変(患者さんの同意を得た上で筆者撮影.、掲載)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/image-1679787735533.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
一方、梅毒は感染からおよそ1ヶ月後に
感染した部位に潰瘍が現れます。
生殖器同士の接触により感染することが多いため、
陰部に潰瘍が出現することが多いですが、
口に現れることもあります。
この時期を一期梅毒と呼びます。
写真は口唇に現れた一期梅毒の潰瘍病変です。
この潰瘍病変に梅毒スピロヘータが存在するため、
生殖器同士の接触だけでなく、オーラルセックス、
キスなどによっても感染することがあります。
![二期梅毒による皮疹(患者さんの同意を得た上で筆者撮影.、掲載)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kutsunasatoshi/00342814/image-1679787415349.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
この一期梅毒の時期を放置しておくと、
感染から1〜3ヶ月後に二期梅毒へと進展します。
二期梅毒は皮疹(皮膚のぶつぶつ)が
手のひらや足の裏を含めて全身に出現したり、
発熱、だるさなどが現れます。
典型的には、梅毒の皮疹は紅斑と呼ばれる赤い発疹です。
しかし、私も経験がありますが稀に梅毒の皮疹として
水疱や膿疱がみられることがあります。
以上のことから、
・サル痘では生殖器に水ぶくれなどの皮疹が出やすい、
梅毒では潰瘍が出ることがある。
・サル痘の皮疹は「赤い発疹→水疱→膿疱→かさぶた」
と変化していく、 梅毒では赤い発疹のままのことが多い
という違いがあります。
また疫学的には、サル痘は現時点ではほとんどが男性患者ですが、
梅毒は男女ともに感染者が報告されています。
また現時点では梅毒の方が感染者数は圧倒的に多い状況です。
どちらの感染症であっても医師の診断が必要ですので、
疑わしい皮疹が出現したら病院を受診するようにしましょう。
また梅毒は無症状のこともありますので、
特に複数のパートナーがいる方は定期的な検査が勧められます。
※サル痘は英語で"Monkeypox"と呼ばれていましたが、
差別や偏見を助長する可能性があることから
2022年11月に"Mpox"という名称に変更されました。
これに合わせて日本国内でも「M痘」と呼ばれることがありますが、
厚生労働省は現在も「サル痘」の名称を用いていることから
本稿もこれに合わせてサル痘と記載しています。