29日のダウ工業株30種平均は大幅反落した。ネット証券のロビンフッド・マーケッツが29日、一部銘柄への取引制限を緩和し、個人投資家の爆買いが復活、ゲーム専門店のゲームストップ株など、対象となった銘柄は暴騰。SNS(交流サイト)で連携した個人が集団で買いを仕掛け、空売り残高を積み上げたヘッジファンドに買い戻しを迫る。実態とかけ離れた水準に株価が上昇し、ファンド勢は相次ぎ損失計上を迫られた。
その流れをいったん止めたのがロビンフッドによる28日の取引制限だ。ゲームストップなど乱高下した銘柄の新規の買いを停止。対象銘柄は急落し「ファンドを守るために我々を犠牲にした」と個人の猛反発を招いた。民主党のオカシオコルテス下院議員も「ファンドが空売りできるのに個人の買いが停止されるのは容認できない」と強く批判した。「ファンドに味方した」と疑われたのには理由がある。同社は顧客の注文をマーケットメーカー(MM)に回して受け取るリベートを主な収入源にしている。週初、個人の投機的売買をきっかけに巨額損失を計上したあるファンドを、米著名ファンドのシタデルが支援すると伝わった。シタデル系列のMMはロビンフッドの有力な取引先だ。シタデルは28日、米メディアに「取引制限とは一切関わりがない」と釈明する羽目になった。
ロビンフッドによると、本当の理由は資金繰りだったようだ。28日付のブログで「証券会社はクリアリングハウスへの預託金など、多くの金融上の要件がある」と説明した。米国では取引が決済されるのは注文の2日後だ。この間、証券会社は確実に決済されるように預託金を清算機関に預ける義務がある。個人の投機的売買が膨らみ、必要な預託金を確保できなかったのが取引を制限した理由だというのだ。28日、欧米金融機関から急きょ5億ドル規模を借り入れ、さらに29日、投資ファンドなどを対象に10億ドル超の緊急増資に踏み切ったと伝わった。だが、1日だけとはいえ取引を止めた事実は重い。SECは29日、「特定銘柄の取引を妨げた決定を詳しく調査する」と発表。業務遂行に必要な資金を確保していなかった点が問題視される。万一、ヘッジファンドを守るためだったと認定されれば大騒動になりかねない。 (*日経 記事より)写真:ロビンフッドは29日に一部銘柄の取引制限を解除した=AP . . . 本文を読む