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内外行動日記です。blog復帰しました^ ^

親知らずが痛い時

2009-11-21 16:32:21 | 歯科臨床
『親知らず』
という用語を誰もが聞いたことがあると思います。
別名は『智歯』前から数えて8番めの歯になります。

この手前の7番目の歯(第二大臼歯)は12歳を目安に生えてくるのに対し、
8番目の親知らずは、20歳前後を目安に生えてきます。
つまり、20歳代の数多くの方がこの『親知らず』との戦いが起こっているのです。

写真を見ると歯が横を向いているのが見えますが、これは、親知らずが生えきれずに生えてくる前に手前の7番にぶつかって止まってしまったためです。
なぜこのような現象が起きてしまうのでしょうか。

人類の発生から進化を考えてみると、アウストラロピテクス、北京原人、と呼ばれる原始の人々の顎は大きく、発達していました。
一方で比べて現代人の顎が小さいのは周知の事実かと思います。
しかし、現代人のほうが食生活は豊かで歯も大きい傾向があるようです。

つまり、昔の人は顎が大きく歯が小さい。
    現代人は顎が小さく歯が大きい。
特に女性のほうが男性に比べ、この傾向は大きいかと思われます。

顎が小さく歯が大きいのですから、当然歯の生えるスペースは狭くなります。
成長も20歳前後で止まるため、歯が生えきれずに横を向いて止まってしまうのです。

これによって痛み、腫れ、顎関節への影響、下歯槽管への影響、等
いわゆる親知らず(智歯)が原因で様々な影響が出るようになってきました。

その一つが写真の○で囲った部分の炎症『智歯周囲炎』です。
私は24歳の時にこの症状が起こり、智歯を4本、母校の大学の恩師の教授に抜歯してもらいました。

上顎は直ぐに治癒しましたが、下顎は治癒に時間がかかりました。
下顎のほうが骨が堅く治癒には時間がかかるため、腫れも起こりますし、痛みも出やすいのです。

この親知らずですが、痛み、腫れが出ない場合も多く、その場合は無理に抜く必要は無いと考えています。
触らぬ神に・・・・といった考えで(^^;

抜く時は条件があります。
・痛み、腫れが出た時
・口が開かなくなった時
・手前の歯『7番』に悪影響が出る時
・周囲の顎骨に悪影響が出る時
・親知らず自体が虫歯になってしまった時
・etc
です。
要するに、親知らずが他の組織に悪影響が出す時は抜歯するわけです。

しかし、抜歯には危険が伴います。
その中で最も恐れているのが、上顎では鼻腔、下顎では下歯槽管への影響です。
これは、インプラントも同じことが言えます。

特に下顎で、下歯槽管を損傷すると、そこには動脈、静脈、神経が3セット入っていますので、大量出血、神経麻痺等のトラブルの危険性があるわけです。

ですので、私は智歯抜歯を行う際には必ずレベル分けを5段階で行いレベル4までは抜歯し、レベル5については大学病院に紹介するようにしています。
・レベル1:単純抜歯(残根含む)
・レベル2:横を向いているが、切開、剥離を行わず、歯の分割だけで可能なもの
・レベル3:粘膜の切開、剥離が必要でさらに骨削合、歯の分割が必要なもの
・レベル4:上記に加え、さらに歯根の分割、または完全水平埋伏歯
・レベル5:歯が下を向いていたり、下歯槽管に影響が出そうなもの。アンキローシス

これらはあくまで、患者さんとラポールがとれており、かつ、全身疾患の問題がクリアできている20~30歳代の場合に限ります。

というのも年齢が40歳代を越えると骨質も堅く『しなり』が無くなり、通常の抜歯も困難になるケースが増えるからです。

抜歯は慣れると誰でも出来ますが、落とし穴のある手術なのです。

よくインターネットで親知らずを放置すると大変なことになります。
と脅かすような記載を見ますが、最も大切なことは、
・手前の歯へ影響が出るか?
・歯の周囲に影響が出るか?
なのです。

無理に抜く必要は決して無いのです。


      


コメント
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