うさぎ歯科 blog NEXT

内外行動日記です。blog復帰しました^ ^

放射線の被曝と防護の原則について

2011-03-17 05:50:19 | 学問
原発事故により、被曝の心配をされている人は少なくないと思います。街中ではマスクを着用する人が増えたイメージもあります。こういう時に必要なことは、
「正しい知識を持つこと」だと思います。
放射線を取り扱う医療従事者の立場から、私なりにまとめてみましたので参考にしていただけたらと思います。

まず、放射線防護には3原則と呼ばれているくらい明確な原則があります。
これだけで良いので押さえていただけたらと思います。
それは、「距離」「時間」「遮蔽(しゃへい)」です。「きょりじかんしゃへい」と呪文のように唱えて暗記した記憶があります。
1、距離:線量は線源までの距離の2乗に反比例するため、線源より遠いほど安全です。避難勧告が出ているのはそのためです。
2、時間:線量は放射線場にいた時間に比例して増加するため、時間が短いほど安全です。
3、遮蔽:線源と被写体の間に「物」があるほうが良い。効果的なのは、閉め切った建物の中です。屋内待機がその例です。




放射線はα線やβ線で知られる粒子放射線とエックス線やγ線の電磁放射線に分類できますが、
粒子放射線は電離作用が強いため、放射線荷重係数は高いですが、透過性がそれほど高くないのが多く(中性子線は除く)、我々に影響が出ることほとんどありません。
α線は紙1枚で、β線はアクリル樹脂板で遮蔽できるくらい透過性が低いものです。

それに対し、電磁放射線であるガンマ線、エックス線そして電磁放射線の中でも中性子線は透過力が高いため、ここを警戒をする必要があります。
鉛や金といった密度の高い物質で効果的に遮蔽することができます。
コバルト60のγ線の場合、コンクリートならば厚さ30cmごとに、鉛板ならば厚さ5cmごとに線量を10分の1にまで減らします。
だから、我々のレントゲン室の壁や扉には鉛が入っているのです。

放射能の強さを表す単位には

Bq(ベクレル) :1秒間に1個の原子核が崩壊する単位
Gy(グレイ)  :物質に対する吸収線量の単位
Sv(シーベルト):人体に対する線量等量の単位

があります。ここで放射線と放射能についてはっきりしておこうと思いますが、

放射線とは : 全ての電磁波および粒子線のこと。
       →物質を通過する時に原子や分子をイオン化させる能力がある「電離放射線」を「放射線」と呼んでいる。

放射能とは : 不安定な原子核が崩壊して放射線を出す能力のこと



そもそも被曝(ひばく)とは、人体が放射線にさらされることですが、
被曝したときの放射線の量の単位はシーベルト(Sv)と標記し、
1 Sv = 1000mSv (ミリシーベルト) = 1,000,000 μSv (マイクロシーベルト)
以下の計算式で成り立ちます。

 Sv(シーベルト)=WR(放射線荷重係数)×Gy(グレイ)

グレイ(gray、記号:Gy)
→放射線によって1kgの物質に1ジュールの放射エネルギーが吸収されたときの吸収線量を1グレイと定義します。

放射線荷重係数(WR)
→放射線種によって値が異なり、
エックス線・ガンマ線・ベータ線ではWR=1、
            陽子線ではWR=5、
          アルファ線ではWR=20、
   中性子線ではエネルギーによりWR=5~20の値をとります。
放射線はガンマ線を基準にしますので、係数(WR)は1で計算するため1Sv(シーベルト)=1Gy(グレイ)で見ます。
厳密には、ここに距離、時間、遮蔽の三原則と方向も加わるので、Gyが高いからといってSvも高いわけではありません。
だから、現時点では安心してよいと私は思っています。

ヒトは一年間に2.4mSv = 2,400μSvもの線量を自然に被曝しているといわれています。
日常の被曝の基準値を以下に述べると
 0.05mSv = 50μSv   → 胸のエックス線集団検診(1回)
 0.2 mSv = 200μSv  → 東京―ニューヨーク間の宇宙線の増加
 0.6 mSv = 600μSv  → 胃のエックス線集団検診(1回)
 1.0 mSv =1000μSv  → 一般公衆の線量限度(年間)(放射線業務従事者は除く)
 2.4 mSv =2400μSv  → 1人あたりの自然放射線の世界平均(年間)
(宇宙から0.39/大地から0.48/食物から0.29/空気中のラドンから1.26  → 合算して2.4)
 6.9 mSv =6900μSv  → CTスキャン(1回)
10.0 mSv =10000μSv → ブラジルのガラパリ地方の自然放射線(年間)


放射線業務従事者が被曝して良い基準値は以下の通りです。
  5mSv = 5000μSv  → 3か月間に被曝してよい放射線の限度
 50mSv = 50000μSv → 1年間に被曝してよい放射線の限度
100mSv = 100000μSv → 5年間に被曝してよい放射線の限度、1回の緊急作業で被曝してよい放射線の限度
但し、妊娠している女性はこれにあてはまりません。
これは、以下に述べる全身被曝の影響で、100mSv以下では臨床症状が認められていないこと。と更に安全マージンをとってあることから決められた基準といえます。

全身被曝によって現れる症状は以下のように記載されています。
 100mSv = 100000μSv これ以下は臨床症状が認められていない。
 250mSv = 250000μSv で白血球の減少
 500mSv = 500000μSv でリンパ球の減少が、
1000mSv = 1000000μSvで急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁が
2000mSv = 2500000μSvで出血、脱毛など。5%の人が死亡
これ以上の全身被曝は致死率が上がり、7000~10000を超えると100%に及ぶといわれています。

このへんの基準値をふまえてニュースや新聞に目を通すとわかりやすいと思います。
この辺を基準に、放射線量をどのくらい被曝しているか計算してみるといいでしょう。
各都道府県別の放射線量は文部科学省のホームページに記載されています。
ここがアクセス集中で混んでいる場合はhttp://eq.で調べれば他のサイトでも閲覧可能です。

被曝量/年間 = 時間ごとの平均線量×24時間×365日

でおおまかですが、計算可能です。
自分の住んでいる県が、世界平均の基準値2.4mSvと比べてどのくらいの計算になるか??
また、ブラジルのガラパリ地方の10mSvと比べてどうか??
この辺を計算すれば安心できるはずです。
ぜひお試しください。ヒトは地球にいる限り、豊富な鉱物から放射線を浴び続けています。

そして、mSvとμSvで混同しやすいこと、さらに年間なのか??1回なのか??
この単位まで良く目を通すべきでしょう。

後日、放射線の感受性、確率的影響、確定的影響、遺伝的影響について詳しく述べたいと思います。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする