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補綴前処置(矯正的挺出術)

2009-09-09 17:10:59 | 歯科臨床
抜歯かな?と思いましたが保存ができた例です。

右下の歯の痛みが原因で来院され、エックス線より、インレー直下に大きなカリエスが存在したため、麻酔抜髄法を行いました。
が、インレーを除去した時、歯に亀裂があることに気づき、骨縁下まで達していました。
原則として、骨縁下まで達したむし歯は抜歯の対象となります。
それは、生物学的幅径が破壊されることと、亀裂部より感染が起こるためです。
こういった歯を治療する場合は大きく2つに分かれます。
1、保存不可能と判断し抜歯する。
2、生物学的幅径を回復し、保存する。

1の抜歯することは簡単ですが、その後の治療方針がブリッジ、入れ歯、インプラント、移植といった方針になり、その後の処置がやや大きくなり補綴物も大きいため、当然費用も大きくなります。
今回は2の生物学的幅径を回復させる方法を選択した例です。

2の生物学的幅径の回復方法は、3つあり、
1、そのまま歯の亀裂の下、まで骨を削ること。
2、歯を矯正で挺出させてから骨を整形する方法。
3、再植(一度抜いてから位置を合わせて戻す)方法
です。それぞれに利点、欠点がありますが、
今回は2の矯正で挺出させてから整形する方法を選択しました。

やり方は両方の歯にワイヤーをひっかけ、ゴムで牽引するというシンプルな方法です。これにより、歯が牽引され、亀裂部分が歯ぐきの上に来ます。
歯と一緒に骨も余分に付いてきますので外科的に骨を整形してあげます。

これで補綴前処置は終了、歯にコア(土台)を入れ、かぶせることができるのです。この前処置は期間がかかるのが最大の欠点です。
実際にこの治療には歯を動かすのに4ヶ月弱かかりました。
費用も保険外になります。
しかし、今まで一般的に抜いてきていた歯を救うことができるのです。
たった一本の歯でも、時間をかけて保存することはアンチエイジングに大きな役割を果たすと思っています。
私の最も好きな治療方法の一つです。

歯を一本治療するにもこれだけの選択肢が存在するということを患者さんも、より多く知っておく必要があるのです。



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