目の前に1組の若い男女がいる。その二人は仲が良さそうに微笑みかけながら遠くに行く。
???:待って!私がここにいるんだから行かないで!その娘なんかより私の方が!
お願い!待ってよ。私に気付かないの?
追いかけて叫び続けてもその二人は振り返る事もしない。
それどころかその二人は遠くなっていった。
???:どうして行っちゃうの!ずっと私と一緒にいたじゃない!じゃない…じゃな…
声は空しく響いていった。
??:ハッ!?今のは…夢?何だったんだろう。
覚えてないのに凄く嫌な夢を見た気がする…涙?
目の辺りを擦ってみると涙の跡があった。
体を起こしてみるとやけにだるさを感じた。
ここは本の神の神殿で休憩室となっていて仮眠が取れるようにとベッドもある。
部屋の外に出て洗面所に行く。
洗面所と言っても神の神殿という事もあって小さな噴水が枯れる事のない清らかな水が流れている。
顔を洗って口も漱ぐ。鏡で自分の顔を見るとやつれていると思える。
??:少しスッキリしたけれど…酷い顔…
ほっぺやおでこの筋肉を揉んで軽くマッサージ。
少しはマシにはなったが、それでもいつもの顔には程遠い。
??:一応、本の神様に挨拶に行かなくちゃ…
本の神の部屋に入る。
??:失礼します。
本の神:おお。起きたか。気分はどうだ?
??:動くことはできます。気分はそれほど良くはありません。
彼女は少し前に稀に妖精がかかる病気にかかって寝込んでいて薬により治療したのだ。
本の神:気分が悪いか…吐き気か?頭痛か?
??:いえ…体に関してはだるいだけで特に症状はありません。
ただ、見た夢が悪い気持ちを引き起こしているような…
本の神:悪い夢?どんなものだ?
??:それが良く思い出せないんですよ。
私が叫んでいるんです。1組のカップルに対して…
でも、何故叫んでいるのか、その2人が誰なのかはとても曖昧で…ううッ…
本の神:そうか…無理はせんでいい。何せ病み上がりだからな。ここで何かやってさらに体を壊しては元も子もない。
??:それで本の神様…何と言うか…その…(モジモジ…)
本の神:どうした?他に体に異常もであるのか?
??:いえ…体はだるさがあるんですけどちょっと変っていうか…そのぉ…お腹が…(モジモジ…)
本の神:腹でも痛いのか?
??:いえ、だるさがあるのに…お腹だけは空いてしまいましてぇ…
グゥ…
本の神:ああ。病気で食事もロクに取っていなかったからな。すぐに用意させよう。
それから再び休め。
??:ありがとうございます。
出された食事を取ると睡魔に襲われたので眠った。その時はもう夢は見なかった。
再び起きて、手早く支度をして本の神と会う。
??:おはようございます。本の神様。
本の神:おお。随分と血色がよくなったな。
??:本の神様のおかげです。もう今まで通り元気そのものです!
空を素早く飛び急旋回してみる。
本の神:ほう…病気前に戻ったといった所か。
??:はい!今まで通りお仕事も出来ます!
本の神:察しが良いな。早速仕事をしてもらうぞ。
??:休んでいた分を取り戻しますよ!
本の神:病気の後の仕事としてはかなりハードだぞ。
??:どんなものなんですか?
本の神:今までは私のそばでの仕事などの事務が多かったが今回はデカイ山でな。
本の世界の指輪が5つ盗まれてしまってな。それを取り戻してほしいのだ。
出来れば他の妖精にでも頼みたい所なのだがな。いま動けるので優秀なのはお前しかいない。
??:大事件じゃないですか!それでは本の世界の危機にもつながるんじゃないですか?
本の神:そうなのだ…どうも普通の妖精というのは口が軽いのが多くて困る。
これが明るみに出ては他の世界の神などに私の管理責任について激しく追及されるだろう…
だから、真面目で優秀なお前を選んだという訳だ。
??:口が堅いという意味ででもですか?
本の神:その通りだ。
??:それで、私がその指輪の捜索をすれば宜しいのですか?出来ますかねぇ?
本の神:指輪1つ1つの位置は力が強いので感知する事は可能だ。
問題なのはそれを取り戻せるかどうかだ。
??:というと?
お前ひとりでは何かと危険が生じる可能性があるからな。
指輪を奪った者が強力な魔物か何かである可能性がある。
なんせ私が気づかぬ間に盗んだ者だ。とても狡猾なヤツなのかもしれん。
力の弱いお前ではやられてしまう恐れもある。
??:そ、そうですよね。
本の神:そこでエスパーの人間を一人探し出し共同で指輪の捜索を行ってもらう。
??:エスパーを見つけるって…どうやって見つけ出すんですか?
本の神:これを使う。
??:しおりのようですが…
本の神:一見するとただのしおりだがこれは
『魔法のしおり』と言って、お前に最適なエスパーを選び出してくれるだろう。
??:でも、そのエスパーは手伝ってくれるますかね?
本の神:勿論、そのエスパーにも危険が及ぶだろうからただでとは言わん。
願い事を1つ叶えるという条件を出そうではないか。
??:それは凄い!
本の神:叶える願いに関してはいくらか条件はあるがな。
個人のものに限るという所か…
指輪を見つけて願いは『本の世界の王になる!』などと言われては困るからな。
??:はい。
本の神:まず、武器として『妖精の弓』と『普通のスーツ』を渡しておく。
??:本の世界の危機を救えというのに特別、強力な武器って訳ではありませんね。
本の神:エスパーに合うのが他にないからだ。仕方あるまい。これ以上のものは現地調達だ。
??:はい…
本の神:では、本の妖精としてこの本の世界を救ってくれ!
妖精:分かりました!行って参ります!!
本の神:ああ…頼む。おっと…ちょっと待て。言い忘れていた。
妖精:何をです?
本の神:妖精であるお前に守ってもらわねばならん事だ。
妖精:そんなに重要な事ですか?どのような?
本の神:エスパーとの恋愛はご法度だ。
妖精:それは引き留めてまで言う事でしょうか?
本の神:決まりは決まりだからな。
妖精:でも、そのしおりで選ばれるエスパーが男性って決まった訳ではないんじゃないですか。
本の神:まぁな。いや、同性でも…あ、それに関してはお前に限ってはないか…
確か、男同士専門だったもんな。
妖精:誤解を招くような言い方をしないでください。
それは私は趣味で好きなだけであって、そう願っている訳じゃありませんから!!
本の神:ああ…余計な事を言ったな。すまなかった。では、私の言いたい事はもうない!
行ってくるのだ!
妖精:分かりました~!!
NEXT>>>>>>> Page 01 「『ベル』と命名、少年エスパー『守』君との出会い」の巻 :とある図書館
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???:待って!私がここにいるんだから行かないで!その娘なんかより私の方が!
お願い!待ってよ。私に気付かないの?
追いかけて叫び続けてもその二人は振り返る事もしない。
それどころかその二人は遠くなっていった。
???:どうして行っちゃうの!ずっと私と一緒にいたじゃない!じゃない…じゃな…
声は空しく響いていった。
??:ハッ!?今のは…夢?何だったんだろう。
覚えてないのに凄く嫌な夢を見た気がする…涙?
目の辺りを擦ってみると涙の跡があった。
体を起こしてみるとやけにだるさを感じた。
ここは本の神の神殿で休憩室となっていて仮眠が取れるようにとベッドもある。
部屋の外に出て洗面所に行く。
洗面所と言っても神の神殿という事もあって小さな噴水が枯れる事のない清らかな水が流れている。
顔を洗って口も漱ぐ。鏡で自分の顔を見るとやつれていると思える。
??:少しスッキリしたけれど…酷い顔…
ほっぺやおでこの筋肉を揉んで軽くマッサージ。
少しはマシにはなったが、それでもいつもの顔には程遠い。
??:一応、本の神様に挨拶に行かなくちゃ…
本の神の部屋に入る。
??:失礼します。
本の神:おお。起きたか。気分はどうだ?
??:動くことはできます。気分はそれほど良くはありません。
彼女は少し前に稀に妖精がかかる病気にかかって寝込んでいて薬により治療したのだ。
本の神:気分が悪いか…吐き気か?頭痛か?
??:いえ…体に関してはだるいだけで特に症状はありません。
ただ、見た夢が悪い気持ちを引き起こしているような…
本の神:悪い夢?どんなものだ?
??:それが良く思い出せないんですよ。
私が叫んでいるんです。1組のカップルに対して…
でも、何故叫んでいるのか、その2人が誰なのかはとても曖昧で…ううッ…
本の神:そうか…無理はせんでいい。何せ病み上がりだからな。ここで何かやってさらに体を壊しては元も子もない。
??:それで本の神様…何と言うか…その…(モジモジ…)
本の神:どうした?他に体に異常もであるのか?
??:いえ…体はだるさがあるんですけどちょっと変っていうか…そのぉ…お腹が…(モジモジ…)
本の神:腹でも痛いのか?
??:いえ、だるさがあるのに…お腹だけは空いてしまいましてぇ…
グゥ…
本の神:ああ。病気で食事もロクに取っていなかったからな。すぐに用意させよう。
それから再び休め。
??:ありがとうございます。
出された食事を取ると睡魔に襲われたので眠った。その時はもう夢は見なかった。
再び起きて、手早く支度をして本の神と会う。
??:おはようございます。本の神様。
本の神:おお。随分と血色がよくなったな。
??:本の神様のおかげです。もう今まで通り元気そのものです!
空を素早く飛び急旋回してみる。
本の神:ほう…病気前に戻ったといった所か。
??:はい!今まで通りお仕事も出来ます!
本の神:察しが良いな。早速仕事をしてもらうぞ。
??:休んでいた分を取り戻しますよ!
本の神:病気の後の仕事としてはかなりハードだぞ。
??:どんなものなんですか?
本の神:今までは私のそばでの仕事などの事務が多かったが今回はデカイ山でな。
本の世界の指輪が5つ盗まれてしまってな。それを取り戻してほしいのだ。
出来れば他の妖精にでも頼みたい所なのだがな。いま動けるので優秀なのはお前しかいない。
??:大事件じゃないですか!それでは本の世界の危機にもつながるんじゃないですか?
本の神:そうなのだ…どうも普通の妖精というのは口が軽いのが多くて困る。
これが明るみに出ては他の世界の神などに私の管理責任について激しく追及されるだろう…
だから、真面目で優秀なお前を選んだという訳だ。
??:口が堅いという意味ででもですか?
本の神:その通りだ。
??:それで、私がその指輪の捜索をすれば宜しいのですか?出来ますかねぇ?
本の神:指輪1つ1つの位置は力が強いので感知する事は可能だ。
問題なのはそれを取り戻せるかどうかだ。
??:というと?
お前ひとりでは何かと危険が生じる可能性があるからな。
指輪を奪った者が強力な魔物か何かである可能性がある。
なんせ私が気づかぬ間に盗んだ者だ。とても狡猾なヤツなのかもしれん。
力の弱いお前ではやられてしまう恐れもある。
??:そ、そうですよね。
本の神:そこでエスパーの人間を一人探し出し共同で指輪の捜索を行ってもらう。
??:エスパーを見つけるって…どうやって見つけ出すんですか?
本の神:これを使う。
??:しおりのようですが…
本の神:一見するとただのしおりだがこれは
『魔法のしおり』と言って、お前に最適なエスパーを選び出してくれるだろう。
??:でも、そのエスパーは手伝ってくれるますかね?
本の神:勿論、そのエスパーにも危険が及ぶだろうからただでとは言わん。
願い事を1つ叶えるという条件を出そうではないか。
??:それは凄い!
本の神:叶える願いに関してはいくらか条件はあるがな。
個人のものに限るという所か…
指輪を見つけて願いは『本の世界の王になる!』などと言われては困るからな。
??:はい。
本の神:まず、武器として『妖精の弓』と『普通のスーツ』を渡しておく。
??:本の世界の危機を救えというのに特別、強力な武器って訳ではありませんね。
本の神:エスパーに合うのが他にないからだ。仕方あるまい。これ以上のものは現地調達だ。
??:はい…
本の神:では、本の妖精としてこの本の世界を救ってくれ!
妖精:分かりました!行って参ります!!
本の神:ああ…頼む。おっと…ちょっと待て。言い忘れていた。
妖精:何をです?
本の神:妖精であるお前に守ってもらわねばならん事だ。
妖精:そんなに重要な事ですか?どのような?
本の神:エスパーとの恋愛はご法度だ。
妖精:それは引き留めてまで言う事でしょうか?
本の神:決まりは決まりだからな。
妖精:でも、そのしおりで選ばれるエスパーが男性って決まった訳ではないんじゃないですか。
本の神:まぁな。いや、同性でも…あ、それに関してはお前に限ってはないか…
確か、男同士専門だったもんな。
妖精:誤解を招くような言い方をしないでください。
それは私は趣味で好きなだけであって、そう願っている訳じゃありませんから!!
本の神:ああ…余計な事を言ったな。すまなかった。では、私の言いたい事はもうない!
行ってくるのだ!
妖精:分かりました~!!
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