姫と太郎の賑やかなお家

姫14歳、太郎9歳。高機能広汎性発達障碍の子供たちとの賑やかな暮らしぶりを綴っていこうと思います。

太郎の変化

2009-10-31 21:44:15 | 太郎のこと
太郎は年長さんになって
「学校には行かんから」と言っていました。

太郎の就学については私も不安や心配がいっぱいです。

主治医のM先生と相談して「特別支援クラス」を希望しました。
「今の太郎くんには学校でのストレスを出来る限り少なくすることが第一。
学習面は太郎くんの知能なら後からでも取り戻せます」

その就学相談も病気で延期になってしまったし、
高機能の太郎は支援クラスに入れる可能性は低いと言う方もいます。

この数日、気持ちばかり焦って落ち着きませんでした。

昨日、久しぶりに太郎と外へ出ました
ポカポカと暖かな日でした。
「アイスクリーム買いに行く」と太郎が言い出しました

今まで太郎はお店に行くのを嫌がっていました。
それがたとえ自分のおやつの為であっても行きません。

「帰り道だし、ちょっとだけ寄って帰ろうよ
タロも自分で選べばいいやん」
「行かない。タロはいつものアイスでいいの!
早く帰ってよ!帰ってからお母さんが大急ぎで買ってきて!」
そんな太郎がお店に行く?

機嫌良く出かけた太郎の前に偶然カマキリが
しばらく親子でしゃがみこんでカマキリ観察


その後行ったお店でレジのお姉さんたちに
「タロくん、髪切ったの?かっこいいね~」
と言われて嬉しそうに笑っていました

そして今日はなんと 「もう一個のお店に行ってみる」
ホントに~?
手をつないで10分弱歩きました

「せっかく来たからお母さんもお買い物していい?」
「いいよ」
ホントに~?
大急ぎでカゴに商品を入れて、タロのいるお菓子コーナーへ

姫と違ってタロはあれこれ選ぶのが苦手です。
「○を買う」という明確なものがないまま売り場に行ってもウロウロするだけです。
今日も私が行ってみるとお菓子の棚をぼんやり見ていました。
「決まった?欲しいのあった?」
「あ、忘れてた!」
忘れてたって・・・

やっと決まってお会計を済ませ、袋に入れている間
太郎は少し緊張している様子で立ち尽くして周りを眺めています

帰り道で太郎が言いました
「お母さん、タロ、学校行けるよ」
「え?タロ、学校行けるの?」
「うん、行ける
だってな、スーパーに行けたから。
しんどい~ってならんかったから、学校も行ける」

私は子供たちに寄り添うことは出来ても100%理解することも
子供たちの考え方や気持ちを想像することも出来ない。

だから、太郎がどんな風に感じて、考えて
スーパーや学校に「行かない」って言っていたのか
今でもはっきり言って解らないです。

でも、昨日と今日で太郎の何かが変わった気がする。

「自分で折り合いをつけることを学習していくでしょう」
M先生の言葉を思い出した。

昨日は近くのお店、今日はもう少し遠くのお店。
苦手だった買い物にも自分から挑戦してみた。
そして、出来た。しんどくなかった。
だから、次は学校に行ってみよう。行けるはず。

太郎はこんな風に自分の世界を、可能性を広げていくのかなぁって思いました

頑張ったね、姫

2009-10-31 11:57:42 | 姫のこと
さて「一人でバスに乗る」を無事にクリアした姫ですが・・・
家に帰ると思ったようです。
「姫は何をしたらいいんだろう?」って

去年の検査の時には
「敢えて言うなら注意欠陥かなぁ。診断つけるほどでもないけど」
と言われていたんです。

言われていたけど、姫の日頃の様子を見るにつけ
「診断つかなくたって、これじゃ、あかんやろう」
とモヤモヤしていました。

そしてTEACCHが姫にも有効かもしれないと思い始めた時
二度目の検査で「高機能広汎性発達障碍」と診断されました。

太郎には太郎の、姫には姫のTEACCHが必要とあって
試行錯誤していた矢先の太郎の入院

姫は何の準備もないまま、学校もクラブの練習もある平日に
「お母さんがいない」という予想外の現実に放り出されてしまいました

一番の不安は、姫は「お父さんが苦手」

さすがに主人も今日ばかりは姫を叱ったりはしないだろうと思うんだけど
姫の方が

ばぁばに付き添いを代わってもらって姫に電話したのが19:30
「姫、大丈夫?」

「お母さん、姫、頑張ったよ
いつもお母さんが言ってたこと思いだして頑張ったよ。
水筒と給食袋出したよ」

「そっか、よく頑張ったね」

「姫、エライ?」

「うん、エライよ。よく頑張った」
「やった~」

とりあえず凹んでないことに一安心

20:30 姫からメール
「明日も朝練あるから何時に眠ればいい?」

「早ければ早いほどいいんじゃない」
  自分で決めて欲しくて敢えてこんな言い方をしました

「わかんない

「9時ならハナマル、10時で○かな。起きれる?」

「わからないムリっぽいね
お父さんに起してとも言えない

「じゃあ、携帯を枕もとに置いて寝なさい。モーニングコールしてあげる
だから、安心して、おやすみ

「ありがとう思わずわらった

朝6時、姫にモーニングコール
「おはよう。起きた?」

「おはよう。うん、大丈夫」

「じゃあ、頑張って行ってらっしゃい」
「は~い」
7:00 「いってきま~す」元気なメールが届きました
前日のバスの件は夕方に私と相談して「一人で行く!」と姫が決めてから
一晩かけて姫は自分の中でシュミレーションしています
ちゃんと下準備が出来ていました。

この日も朝になったらどうするか
きっと、姫はメールのやり取りの後、一人でシュミレーションしたんでしょう

家に帰った私に姫が得意気に話してくれました
「姫、ちゃんと考えたよ」

「昨日はモ○バーガーでね、姫は大きい方のポテトが食べたかったけど、
お父さんが”あんまりお金無いからな”って言ってたから
小さい方のポテトにしたよ。
そしたら、お父さんが大きい方と替えっこしてくれた
姫、ちゃんと考えたでしょ?」

お父さんの「お金無い」は「姫の大好きなステーキ屋さんには行けないよ」って
意味だと思うのですが

姫なりにお父さんに気を使ったのでしょう

そして、私と太郎が帰った翌朝はまたいつも通りの朝
「ひ~め~!いい加減に起きなさいっ!遅刻するよ!」
姫を起こすだけで30分はかかります
毎日、毎日、こんな風に賑やかな1日が始まります
「何でかなぁ?昨日はちゃんと起きれたのに~
お母さん、何でだと思う?
昨日はホントにちゃんと起きたんだよ」

「姫はお母さんがいない方がしっかりするかもね」
「いやだ~
そこに起きてきた太郎が「姫、うるさいっ!!学校行かんのか?!」

朝からこんなに賑やかな我が家だけど
この日の朝は「幸せかも・・・」ってチラッと思いました

ちなみに主人はこんな騒ぎの中でも爆睡してます
私がいない日は「起きたらもう姫はおらんかったわ」
期待はしてなかったけど
とりあえず、会社に行けて良かったね!ということにしておきましょう 

姫、初めて一人でバスに乗る

2009-10-30 14:42:27 | 姫のこと
太郎が入院した日は姫のプレイセラピーの日でした。

隔週で教育センターに通っています。
担当のS先生は姫のお気に入り
とってもかわいい方です

前日から高熱と嘔吐を繰り返す太郎。
私は姫を教育センターに送っていけないし(車がありません)
どうしたものかと、姫に相談しました。

「明日の教育センター、どうしようか?
タロがお熱だし、お母さんは一緒に行けないんだけど」

「姫、一人で行ってみる」

「暗くなるから、自転車は危ないよ
バスで行ける?」

「JR行きのバスで、教育センター前で降りるんでしょ?
行ける!」

「JR行きは二つあるんだよ。何番のバス?」

「えっ!?二つ…あるの?」

「そう、違う方に乗っちゃうと教育センター前には停まらないよ」

「・・・わかった!ちゃんと乗るから教えて!
間違えないように乗るから大丈夫!」

いい機会だし、何事も経験。
携帯もあるし、何とかなるよね
なにより、姫が自分から言い出したことだから・・・

こうして、姫は産まれて初めて一人でバスに乗ることになりました。

ところが、太郎の急変に私は姫の下校を待たずに家を出ることに

バスの回数券、小銭をテーブルに置き
病院へ向かうタクシーから姫の携帯にメールを送信

タロを病院へ連れて行きます
バスは○番
16時4分と47分です
気をつけてね

16:20 姫から電話
「お母さん、どこ?」

「まだ病院」

「バスのカードと一緒にあったお金は何?」

「もし、カードを失くしたり、落としてしまった時困るでしょ?
念のために持って行ってね」

「わかった!ありがとう!行ってくるね」
  後ろで「下へ参ります」ってエレベーターの声が!

「ちょっと、姫!今から行くつもり?」

「うん」

「待って、待って!お母さんのメール見たよね?
次のバスは48分。今は何分?早すぎるよね?」

家からバス停まで子供の足でも5,6分です

「・・・何分に出たらいい?」

「35分に出れば十分じゃないかな」

「わかった~じゃあね~」

姫~ホントに大丈夫?

10分後、今度はメールです。

「お菓子買ってもいい?」

「そんな時間ある?」

「今、お店の前」
  バス停の10m手前に小さなお店があります

「いいけど、時間に気をつけてね」

「わかった 姫のお金で買う?」

「お母さんが置いていったのを使っていいよ
 100円までね」

「ありがとう

 
16:45 「時間は大丈夫?」

「うん、もうバス停にいるよ~」

16:50 「バスに乗れたよ~」
姫からのメールに一安心。

溜息をついて顔をあげるとM先生と目があった

「姫ちゃん、大丈夫なんですか?」

M先生はとても優しいです。
姫の淋しがりなところも、怖がりなところもご存知です。
だからこその心配。

主人からは「チャレンジャーやな」と言われ
ばぁばからは「ホントに大丈夫なん?何かあったらどうすんのよ~」と
不吉なことを言われました。

でも、姫は頑張りました。

主人が言うには
「よっぽど嬉しかったんやろうな
 えらい元気に帰ってきたで」

姫のヤル気に水を差してはいけないので
太郎の入院は姫が家に帰るまで知らせないことにしました

主人から入院のことを聞いて早速メールが

「タロはいつまで入院」 

「2,3日だって」

「お母さんはいつ帰ってくる?」
う~んなんとも姫らしい・・・

5歳の子が入院したら付き添いのお母さんは帰れない。
姫はこういうことを察することが苦手です



今回のこと、姫も大人たちもいい経験でした。
バスに乗るだけでこの騒ぎ
姫の幼さ故の心配です
今回のことで姫は少し自信が持てたのではないかと思います。
この達成感が次のステップへ繋がると信じています。
これが太郎だったら・・・
来年ぐらいには一人でバスにも乗れるかもって思ってます



無事、退院

2009-10-30 11:26:15 | 太郎のこと
点滴のために入院した太郎は別人のようでした

駆け付けたばぁばが
「タロくん、どう?しんどいの?」と声をかけても
うっすらと目を開けて、閉じて・・・

「ちょっと!先生は何て?
タロがこんなに元気がないなんて!
大丈夫なの?」
ばぁば、かなり取り乱してました
それくらい太郎の様子はおかしかったんです。

2本目の点滴が始まるころ、やっと太郎がしゃべりました。

「ごはん。お腹すいた」

「またゲボするといけないから、ご飯は明日ね」

「明日?今、夜?起きたらご飯?」

「明日の朝になったらね」

「イヤや~ 遅い~ 明日、遅いよ~」

「ごはん~ 食べたいよ~」

この時点で、私も朝から何も食べていません。
おかげで空腹を思い出してしまいました

母が「タロは看てるから、あんたはご飯食べておいで」と言ってくれました。
でも、お腹を空かせて泣いている太郎に申し訳なくて・・・

「外で食べたらいいやん?」と母は言うけど
太郎の嗅覚は敏感です。
絶対に気づくでしょう
とりあえず、ミルクティーを自販機で買って
「タロ、お母さん、これだけ飲ませてね
ご飯はタロと一緒に我慢するから
明日の朝まで一緒に頑張ろうね」

「お母さんも食べんの?」

「うん、食べんよ。
タロも頑張ってるから、お母さんも頑張るわ」

「うん、朝になったらご飯」

「そう、朝になったらご飯です」

夜中に何度も目を覚ました太郎は
「まだ夜?」と目覚めるたびに聞いたけど、
窓の外が暗いのを見ると

「朝になったらご飯」

と、おまじないのように繰り返し、目を閉じました。

待ちに待った朝
「太郎くん、おはよう。お熱測ってください」
検温に来た看護師さんに
「朝?ご飯?」とすかさず聞いた太郎

「ごめんね~ お熱聞きにきただけなの」

「朝なのに・・・ご飯が・・・」
枕に顔を埋めて泣きながら、もうひと眠り

回診に来てくださったM先生
「寝ちゃったの?ご飯を食べても吐かなければ早めに帰りましょうか?
姫ちゃんが心配でしょう?
口から水分補給が出来ればお家でケア出来ますよね?
吐き気止めと解熱剤。両方の座薬をお渡しします」

M先生、ありがとうございます!

夜、姫からたくさんメールが来ました。
怖がりで不器用な姫が頑張ってると思うと気が気じゃなかった

朝、昼共に半分ほど食べても吐かなかったので

「タロくん、帰っていいよ」とM先生。

「よっしゃ~」とベッドの上でガッツポーズの太郎。

「すっかりいつものタロくんですね」
笑ってるM先生の隣で、担当の男性看護師さんは

「ホント、昨日とは別人ですね
タロくん、そりゃ、みんな心配するわ」
と変に納得してました。

太郎の入院中、一番の功労者は姫かもしれません。
そんな姫の様子は改めて記事にしたいと思います


ともあれ太郎は1泊だけで無事退院。
やれやれ…


太郎の入院

2009-10-29 23:15:36 | 太郎のこと
前回の続きです。

寝不足で迎えた朝。
氷枕でスヤスヤ眠る太郎の熱は36.6度
ホッとしました。

でも!あの太郎がウトウト、ごろごろしたまま
ありえない

昼ごろやっと「お茶ください」とリビングへやってきた。
でも、お茶を飲むと再び寝室へ・・・
しばらくして寝室から太郎が吐いている気配が!

慌てて部屋を覗くと、ゴミ箱を抱えている太郎の姿。

痛々しくて泣けてきました。

まだ5歳なのに…

苦しい時にも、昨日の母の言葉を覚えていました。
「ゴミ箱にゲボしたよ」
「うん、ちゃんと覚えててエラかったね」
「タロ、エラい?」
「うん、エラいよ」
安心したように、そのまま、また眠ってしまった太郎。

30分程して「お茶ください」ともう一度起きてきて
お茶を飲んだ途端、今度は大量に吐きました

今度はゴミ箱も間に合わなくて
「ゴミ箱が・・・ごめんなさい。ごめんなさい」
自分も濡れてしまって気持ち悪いだろうに

「タロ、もう一回病院に行くよ。点滴、頑張れるね?」
「はい」

病院へ向かうタクシーでも何度か吐き
病院の入り口の前でも吐き、太郎の体力は限界だったと思います。

診察してくださったのは太郎の発達外来のM先生。

「タロくん、かなりしんどそうですね。
もう一度採血でインフルエンザの検査をさせてもらっていいですか?」

もう、採血でも何でもとにかく太郎を元気にしてください

M先生をみてホッとしたのか
太郎は救急外来のストレッチャーの上でぐったりしていました。

M先生も普段と違う太郎の様子を窺うように声をかけます。

「タロくん、先生、今からもしもしするよ
いいですか?お腹出して」

いつもの太郎なら得意気にシャツを捲り上げます。
でも、この日の太郎はぼんやりと先生を見上げただけ…

先生はずっと太郎に声をかけ続けてくれます。

「タロくん、お腹触るよ。いい?」
「タロくん、今から針チクンするよ。ごめんね」

どの言葉にも処置にも太郎は反応しませんでした。

検査の結果はやはりインフルエンザではありませんでした。
脱水症状と血糖値の低下。

「点滴しか方法がないので今日はこのまま入院してください。
 お母さん、泊まれますか?
 姫ちゃんは大丈夫ですか?」

「はい。姫には電話します」

先生は主治医ではないけれど姫を知っています。
年齢より幼い姫を心配してくれています。

昨日、焦らずにM先生を待てば良かった。
A先生を待てば良かった。

そんな後悔をしながら太郎と病室へ向かいました。