◎ギリシャ神話 29 オリュンポス12神 16 ディオニュソス 3
◎ミダス王の物語
○ミダスはプリュギアの王ゴルディアスとテルメッソスの女予言者(またはキュベレ女神)との子で、プリュギアの王位を父から継いだ
○シレノスは素晴らしい智慧の持ち主で、ディオニュソスの幼い頃の師でもあり養父でもあった
★ミダス王(おもに「変身物語(上) 岩波文庫」より)
ディオニュソス(バッコス)には、いつもの獣神(サテュロス)の群と信女たちがつき従っていたが、あるときシレノスがいなくなっていることに気がついた
年のせいと、酒の酔いとでふらついているところを、プリュギアの百姓たちにつかまったのだ
百姓たちは、シレノスを花環で縛りつけて、ミダス王の前へ連れ出した
ミダス王はバッコスの秘儀を授けられていたが、シレノスを見て、この秘儀には欠かせない仲間であることを見てとると、この老人を十日十夜のあいだにぎやかな宴会を催してもてなした
そして11日目に、シレノスをディオニュソスのもとに返した
ディオニュソスは喜んで、ミダス王に、何なりと望みのものを与えようと約束した
「わたしのからだが触れるすべてのものを、きらめく黄金に変えてくださいますように」
ディオニュソスは、内心では、王がもっとましなことを願わなかったことを悲しんでいたが、この願いをききとげてやった
ミダス王は、いそいそと帰っていった
ひとつひとつの物にさわってみることで、授かった力を試してみる
柊(ひいらぎ)の小枝をもぎとると、それは黄金に変わった
地面から石を拾いあげると、鈍い金色に輝く
木からりんごをもぎとると、ヘスペリデスの園の黄金の林檎ともおもわれるのだ
澄んだ水に手を浸してみたら、手のひらから落ちる水は、ダナエを襲った黄金の雨かともおもわれる
喜んでいる王の前に、召使が食事をととのえる
ご馳走が山もりになっていて、パンも添えられている
手でパンに触れると、固くなっている
料理を噛みくだこうとすると、歯の当たった食べ物を、まばゆい金箔がおおう
葡萄酒を飲もうとすると、溶けた黄金が口へ流れこんでいる
災厄にびっくりするばかりだが、金持ちであるということが惨めでもある
先ほどまでの願いを憎悪する
ありあまる食べ物も、飢えを鎮めはしない。はげしい渇きが喉を焼く
金ぴかの両腕を天に差しあげて、
「父なるディオニュソスよ、お許しください!
わたしが間違っていたのです。どうか、ご慈悲を!
この光り輝く災いからお救いくださいますように」
ディオニュソスは慈悲深い神でしたから、自分が間違っていたことを自認したミダスを、元どおりにもどすと、約束による恩恵を取り消した
「黄金を求めるなど、つまらぬことをしたものだ
その垢を払い落とすためには、サルデスの都に近いパクトロス河を訪ね、流れをさかのぼって、河の源に行き着くのだ。泉がこんこんと噴き出ているあたりに、頭とからだをひたし、罪を洗い流すのだ」
王は、命じられたとおりにして、その水にひたると、すべてのものを黄金に変える魔力は、河の水にしみこみ、ミダスのからだから、流れる水へと移った
今もなお、この河の流れで濡れた土は、鈍い金色を放っているのだ
このことがあってから、ミダス王は富を憎み、田舎に住むようになり、山の洞穴に住みついている牧神パンを崇めるようになった
○パン(pan)は真昼時に眠るが、これを邪魔すると怒り、恐慌(panic パニック)を送る
パニックとは「パンの」もたらす恐怖のことをいい、パンが人間の群集に引き起こすものとされる
◎ミダス王の物語
○ミダスはプリュギアの王ゴルディアスとテルメッソスの女予言者(またはキュベレ女神)との子で、プリュギアの王位を父から継いだ
○シレノスは素晴らしい智慧の持ち主で、ディオニュソスの幼い頃の師でもあり養父でもあった
★ミダス王(おもに「変身物語(上) 岩波文庫」より)
ディオニュソス(バッコス)には、いつもの獣神(サテュロス)の群と信女たちがつき従っていたが、あるときシレノスがいなくなっていることに気がついた
年のせいと、酒の酔いとでふらついているところを、プリュギアの百姓たちにつかまったのだ
百姓たちは、シレノスを花環で縛りつけて、ミダス王の前へ連れ出した
ミダス王はバッコスの秘儀を授けられていたが、シレノスを見て、この秘儀には欠かせない仲間であることを見てとると、この老人を十日十夜のあいだにぎやかな宴会を催してもてなした
そして11日目に、シレノスをディオニュソスのもとに返した
ディオニュソスは喜んで、ミダス王に、何なりと望みのものを与えようと約束した
「わたしのからだが触れるすべてのものを、きらめく黄金に変えてくださいますように」
ディオニュソスは、内心では、王がもっとましなことを願わなかったことを悲しんでいたが、この願いをききとげてやった
ミダス王は、いそいそと帰っていった
ひとつひとつの物にさわってみることで、授かった力を試してみる
柊(ひいらぎ)の小枝をもぎとると、それは黄金に変わった
地面から石を拾いあげると、鈍い金色に輝く
木からりんごをもぎとると、ヘスペリデスの園の黄金の林檎ともおもわれるのだ
澄んだ水に手を浸してみたら、手のひらから落ちる水は、ダナエを襲った黄金の雨かともおもわれる
喜んでいる王の前に、召使が食事をととのえる
ご馳走が山もりになっていて、パンも添えられている
手でパンに触れると、固くなっている
料理を噛みくだこうとすると、歯の当たった食べ物を、まばゆい金箔がおおう
葡萄酒を飲もうとすると、溶けた黄金が口へ流れこんでいる
災厄にびっくりするばかりだが、金持ちであるということが惨めでもある
先ほどまでの願いを憎悪する
ありあまる食べ物も、飢えを鎮めはしない。はげしい渇きが喉を焼く
金ぴかの両腕を天に差しあげて、
「父なるディオニュソスよ、お許しください!
わたしが間違っていたのです。どうか、ご慈悲を!
この光り輝く災いからお救いくださいますように」
ディオニュソスは慈悲深い神でしたから、自分が間違っていたことを自認したミダスを、元どおりにもどすと、約束による恩恵を取り消した
「黄金を求めるなど、つまらぬことをしたものだ
その垢を払い落とすためには、サルデスの都に近いパクトロス河を訪ね、流れをさかのぼって、河の源に行き着くのだ。泉がこんこんと噴き出ているあたりに、頭とからだをひたし、罪を洗い流すのだ」
王は、命じられたとおりにして、その水にひたると、すべてのものを黄金に変える魔力は、河の水にしみこみ、ミダスのからだから、流れる水へと移った
今もなお、この河の流れで濡れた土は、鈍い金色を放っているのだ
このことがあってから、ミダス王は富を憎み、田舎に住むようになり、山の洞穴に住みついている牧神パンを崇めるようになった
○パン(pan)は真昼時に眠るが、これを邪魔すると怒り、恐慌(panic パニック)を送る
パニックとは「パンの」もたらす恐怖のことをいい、パンが人間の群集に引き起こすものとされる