「さてさようなら20代」
「こんにちは30代」
「ま、特に何か変わる訳ではないけどね。気分的な問題だ」
「いや、世間的な扱いは変わるんじゃないですか?20代は若造ですみますけど、30代はどうしてもおじさん呼ばわりされますよ?」
「そうは言ってもさ、仕事柄60代70代の方々を相手にしていてだよ?下手すりゃ20代より元気に活動している姿を見る訳だ。そういうの見てると高々30歳で『おっさん』とか『年取った』とか言ってらんないなって思うんだよね」
「ま、単なる通過点には違いないですね。そこを間違えるとおかしなことになります」
「そもそも生まれ年で考えれば去年の時点でとっくに30歳になってるし。今更って感じだし」
「そう斜に構えないで。みんな通る道です」
「それはそれとして、せっかくだ。これで祝っとこう」
「おお、ワインですか。普段お酒を飲まない貴方にしては珍しいですね」
「こういう時ぐらい、たまにはね。体の酸化を抑える為の赤ワインですよ」
「健康志向、まことに結構です」
「コップはひとつでいいよね?」
「ナチュラルにハブるの止めましょう?」
「しゃあないな。で、コルク抜きはどこだ?」
「・・・知りませんがな」
「台所かどこかにあったはず。ちょっと見てきて」
「一緒に行きましょうよ」
探索中
探索中
探索中
「ない」
「無いですね」
「この1本に為に新しくコルク抜き買うとか嫌なんですけど」
「コルク付いてないの買えばよかったじゃないですか。今更ですけど」
「いや、こういうのは雰囲気が大事なんだよ。コルクでないワインは邪道なり。この記念すべき日に買うワインにふさわしくない」
「1600円のワインで何をぬかしてるんですか」
「仕方ない。箸で開ける」
「雰囲気どこいった」
「箸をコルクに刺して、テコの原理でどうだ。おりゃ」
パキッ
「はい」
「折れるよねそりゃ」
「先っぽがコルクに埋め込みましたが」
「じゃあフォークだ」
「無理しないでコルク抜き買ってきましょう?」
「いやいけるいける」
グッ
「あ、いけてる」
「ほらほら、ちょっとずつコルクが上がってる」
「みょーんって擬音がぴったり」
「おし開いた!」
「フォークが変形してエヴァのロンギヌスの槍みたいになりましたね」
「尊い犠牲だね、やむなしやむなし。それよりほれコップ」
「あ、ありがとうございます。てコップですか。ワイングラス無いんですか?」
「湯飲み茶わんよりましでしょ」
トクトク
「全く。雰囲気も何もないですね。とりあえず貴方も一杯」
トクトク
「さんくす。ではでは」
「はいはい」
「30代もがんばるぞ俺ー」
「はっぴーばーすでー」
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