あともう少しだけ

日々の出来事綴ります。やらずに後悔よりやって後悔。

対話 「隠れない」

2016-12-25 23:34:06 | コラム

「先日ビールをいただきました」

「さいですか。けどあなたビール飲まないでしょ?」

「そうなんです。家族にも飲む人いないから、処理に困るのが正直なところ。けどせっかくのご厚意だしね。開けてみた」

「どうでした?」

「一口飲んでみたけど、ホップが利きすぎて正直ないな、と」

「ほうほう」

「無理に飲むのも嫌だし、捨てるのも忍びない。そこで思い出したんだけど、ビールって料理の隠し味に使うじゃん」

「ええ、焼き物の仕上げにさっとかけたりしますが」

「でさ、何かでビールをあっためて飲む、みたいなことが書いてあったから、ちょっとそれやってみようと思って」

「ビールを温める、ですか、そうですか」

「麦スープ的なね?ちょっとうまそうじゃない?鍋にビール入れて、火にかけてみたんだ」

「嬉々として喋ってますがおいしそうな絵が浮かんでませんよ私」

「ビールってあれだね。沸騰すると泡立つんだね。考えてみれば当たり前だ。そんで、あったまったはいいけど、問題がひとつ」

「前提が問題だらけなんですけど」

「ビールって黄金色でしょ?で。あったかい。そして、泡立っている」

「・・・」

「俺たちは、これに似た液体をよく知っている!」

「その先言わないでもらえます?」

「もう食欲その時点で大分削られたさ、そりゃ。これいかんかもと。」

「普通に気持ち悪いんですが」

「ただね、これで引いたらビールがもったいないってことで、もう少し頑張ってみた訳よ。水を足して。スープっていうからには具も必要ってことで、ウインナーを入れてみました。ドイツスタイル」

「ビールとウインナーでね。安直」

「栄養バランスを考えてほうれん草も投入」

「バランスとかの問題だろうか」

「コショウとコンソメスープ入れて味を調えてみた」

「味の想像つかないです」

「あ、この段階で味見したら美味しくなかったよ」

「それはわかります」

「どうにも軌道修正できないと思いまして。奥の手を出しました。カレー粉」

「ああ、カレー粉。何をどう失敗しようが、最終的には無難な味に仕上がる抑えのエース」

「カレー粉を混ぜて、出来た料理がこれだ」

「うわ、持ってきてた」

「うわとか言うな実験台」

「さらっと実験台と言うかこの人」

「いっしょに食べてみよう。大丈夫だって。カレー粉入れればよっぽどの失敗でない限りリカバリーできるから」

「まあ見た目はおいしそうですけど」

「いただきます」

「いただきます」

「・・・」

「・・・」

「・・・マズ」

「・・・苦い」

「ビールの苦味が超利いてる」

「カレー粉でごまかせてないですよ・・・」

「他は普通のカレーなのに、ただただ、苦い」

「カレーを失敗するってどういうこと?」

「考えてみれば熱でアルコールは飛んでも苦味は消えないよね。あとカレー粉で苦味は消えない、と。うん勉強になった」

「予想できそうなもんでしょう」

「じゃあ、残さず食べようか」

「・・・」

「何?」

「・・・貴方結構馬鹿ですよね」

「何をいまさら。あ、そうだ」

「何です?」

「メリークリスマス!」

「男に言われても何にもうれしくありません!」

「プレゼントはこのカレーだよ!」

「『まずい』って自分で言ったでしょ!何が悲しくてせっかくの聖夜に野郎2人で残飯処理しなきゃいかんのですか!」

「カレーは失敗だったなぁ。よし、大晦日にリベンジだ。南蛮そばで年を越すぞ」

「せめて隠し味は日本酒にしてください」

 


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